2008.05.04

野口宇宙飛行士の次回フライト

松浦さんのアメリカ版ともいえるCBS放送のスペースジャーナリスト、William Harwoodさん

CBS News Space Place: Astronaut Assignments

という表をまとめているのに気づきました。このページの初出は昨年の11月26日らしい。シャトルやソユーズの今後のフライトでどの宇宙飛行士にどのミッションが割り当てられているかをまとめたもの。

その中で、野口宇宙飛行士の次のフライトが2009年11月打上げの「ISS-20B/TMA-17」として載っていたので驚いた。ええ?! のぐっちゃんの次のミッションってもうアナウンスされてましたっけ??

このページの断り書きには

This list of active-duty astronauts reflects the author's interpretation of who might be available for flight assignment. Readers are cautioned this list is unofficial and subject to change.
とあるので、まだ公式ではない情報も載っているということか。しかしHarwood記者、過去15年間にわたってひたすらシャトルや宇宙飛行士のニュース記事を追いかけ続けているしなぁ。その情報の正確さと迅速さにはあなどりがたいものがある。

ということで「Noguchi TMA-17」で検索してみると、

collectSPACE: Messages - ISS 20: Crew assignments

というページが見つかります。ヒューストンのRobert Pearlmanさんというこのサイトの管理人さんが

A NASA-sourced chart dated December 17, 2007, identifies the following launch schedule:
 * Soyuz TMA-16: Jeff Williams, Mikhail Kornienko, Roman Romankeno
 * Soyuz TMA-17: Maxim Suraev, Soichi Noguchi, TJ Creamer
という情報をポストしてます。「12月17日付けのNASA発の情報」ということらしいので、やっぱりそうなのでしょう。

さらに探すと

"НОВОСТИ КОСМОНАВТИКИ" :: Просмотр темы - Экипажи МКС-19-20

なんていうロシア語の掲示板の12月30日の投稿にTMA-17の情報が。「ロシアだから正確な情報かも?!」と思って、Google翻訳してみると、この投稿の情報のソースは

Planowane loty załogowe

というポーランド語?のページ。なんかちょっと肩すかし。いったいどこが元の情報のソースなんですか???

このサイトでは野口さんのバックアップが「A. Hoshide/S. Furukawa/N. Yamazaki」とされているのだけれど、別のソースから聞いている情報と矛盾するので、このポーランドの情報はちょっと確度が??

その次のソユーズではロシア人1名、ESAから1名、NASAから1名、という割り当てらしい。

Harwood記者のページに戻ると、2010年のシャトル退役までにまだ割り当てられていない宇宙飛行士の枠は最大でもあと41名。いよいよ席とリゲームになってきましたね。スケジュールの中に「Dicovery done」「Endeavour done」という文字を見るのは寂しいです。

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2008.04.09

宇宙飛行士の身長

3月31日にJAXAが宇宙飛行士候補者の募集要領を発表しました。

読んでみてまず感じたことは、「いろいろと細かい説明がずいぶんと増えたなぁ」というもの。若田さんの時、野口さんの時、古川さん星出さん角野(山崎)さんの時、と、時代とともに細かい規定が増えてくる気がする。まぁそれはさておき。

今回、一番驚いたのは、身長の規定がずいぶん厳しくなったこと。

昔、本家サイトのゲストブックに「身長が145しかありません。宇宙飛行士にはなれないでしょうか・・・」という質問が寄せられたので、こんな記事を書いたことがあります。当時は宇宙飛行士訓練についてもまだあまり突き詰めて考えてみたことがなかったので、あれから5年経って振り返れば、我ながらずいぶんと無責任なことを書いたものだと反省。

で、改めて平成10年度の「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士候補者募集要項」を取り出して比較してみました。

平成10年度版では、

**********
4.応募条件
.....
(6) 宇宙飛行士としての訓練活動、長期宇宙滞在等に適応することのできる医学的、心理学的特性を有すること。
 1) 医学的特性
  身長:149cm以上193cm以下
  血圧:最高血圧140mmHg以下かつ最低血圧90mmHg以下
  視力:両眼とも裸眼視力0.1以上かつ矯正視力1.0以上
  色神:正常
  聴力:正常
  その他心身ともに健康であり、宇宙飛行士としての業務に支障のないこと。
 2) 心理学的特性
  協調性、適応性、情緒安定性、意思力等国際的なチームの一員として長期間宇宙飛行士業務に従事できる心理学的特性を有すること。
**********

それが今回の募集ではこうなりました。

**********
4.応募条件
.....
(7) 宇宙飛行士としての訓練活動、長期宇宙滞在等に適応することのできる以下の項目を含む医学的、心理学的特性を有すること。
 1) 医学的特性
  身長:158cm以上190cm以下
  (注:宇宙服を着用して船外活動を行うには、約165cm以上が必要です。)
  体重:50kg~95kg
  血圧:最高血圧140mmHg以下かつ最低血圧90mmHg以下
  視力:両眼とも矯正視力1.0以上
  (注:裸眼視力の条件はありませんが屈折度等の基準があります。屈折度:+5.50~-5.50ジオプトリ以内、乱視度数:3.00ジオプトリまで、左右の屈折度の差:2.50ジオプトリまで。また、平成20年6月20日時点で、PRK手術・LASIK手術の後、1年間以上を経過して恒久的な副作用がない場合には医学基準を満足します。それぞれ医学検査時に評価します。)
  色覚:正常
  聴力:正常
 2) 心理学的特性
  協調性、適応性、情緒安定性、意志力等国際的なチームの一員として長期間の宇宙飛行士業務に従事できる心理学的特性を有すること。
**********

裸眼視力の条件が緩和されたのは多くの人にとって朗報だけれど、やはりPRKやLASIKの視力矯正手術は、去年の6月20日以前に受けた人でないと基準を満足しないというのは、ちょっとだまされたような気分になる人も多いのではないでしょうか。日本には近視の人が多いだけに。

前回は体重の条件がなかったのに、今回から加わっているのは、ソユーズ宇宙船の大気圏再突入の際の安全基準ということらしいです。大気圏再突入の際にカプセルが大気から受ける揚力と重力のバランス、他の宇宙飛行士との体重差による重心の移動、あるいは着地寸前に逆噴射するロケットの推力の調整能力との関係などからなのでしょうか。今回選抜される候補者がスペースシャトルではなく、ソユーズで国際宇宙ステーションに送り込まれる可能性が高くて、そのための訓練をロシアで(も)受ける必要があることを強く示唆していますね。ちなみに、今回の合格者がNASAで一緒に訓練を受けることになる宇宙飛行士候補生(ASCAN)のNASA側の応募要項には、体重の項目はありません。NASAは太っ腹なのか??

一方、身長制限が今回「158cm以上190cm以下」と狭くなったのは、そのNASAのASCAN募集の条件62インチ(157.48cm)〜75インチ(190.5cm)をJAXAがそのまま採用したから、のようです。内部の関係者でも混乱しているようで「ソユーズの基準が適用されるから(変更された)」と考えている人もいるようですが、JAXAの宇宙飛行士募集係に電話でたずねたところ、「NASAのASCAN募集の条件が変わったから」との回答でした。ちなみにソユーズの宇宙飛行士に求められる最低身長は係の人によれば150cm。

最近の日本人の体格は戦前と比べるとかなり良くなっているとはいえ、190cmを超える人はあまりいないと思いますが、下限の158cmというのは、日本人女性の平均身長くらいになります。

ということは、この項目ひとつだけで、女性の半分が不適格、ということになってしまうわけで、「国際宇宙ステーションのパートナーである日本固有の状況をNASAに配慮してもらうように働きかけなかったのですか?」と係の人に聞いてみたところ、「宇宙船を日米で共同開発するなどの話でもなければ難しい。次期有人宇宙船はNASAが開発するものですし」との苦しそうな答え。

もともとアメリカ人は体が大きいので、船外活動用の宇宙服もサイズが大きいものしかなくて、水中での無重力訓練でも、山崎宇宙飛行士が宇宙服を着ている姿を見ると、大変そう。水中訓練は無重力の感覚をとてもよく再現できるらしいのだけれど、体が服に比べて小さいと、いったん体が傾くと、服の中の空気が移動して浮力のバランスが崩れて、体が回転を始めるらしい。「船外活動を行うには、約165cm以上」という条件はここからきているらしいのだけれど、一方で、国際宇宙ステーションの任務は船外活動以外にも貢献できる分野があるということと、今回の土井さんのミッションで、デクスターという特殊ロボットアームも配備されたので、これからは国際宇宙ステーションでの船外活動の必要性はだんだん低下してくるものとも考えることができます。

それにしても、若田さん宅でお会いした向井さんは、山崎さんよりも一回り小さかったと記憶しているのですが、今回の基準についてどのようにお考えなのでしょうか?

Mukaisumino

もちろん、日本が独自の有人宇宙ロケットとか独自の宇宙服を持っていれば、こんな悩みはなくなるわけですが、よくよく考えると、単に宇宙船や宇宙服だけの問題ではないようにも思えてきます。

スペースシャトルの座席のサイズ、シミュレーターの座席のサイズ、ASCANの訓練に用いられるT-38ジェット練習機の座席のサイズ、その他、ありとあらゆるものが、アメリカ人の標準体型(それもどちらかといえば男性の)にあわせて設計されています。

NASAは今回募集する宇宙飛行士を、次世代宇宙船を使って月や火星にも送り込みたいと考えているでしょう。国際宇宙ステーションに搭乗する日本人宇宙飛行士のために、訓練設備のサイズを特別に配慮することは、予算上も厳しくなっていると考えられます。映画「アポロ13」でも有名な宇宙飛行士の訓練用ジェット機T-38も、配備からすでに50年近く経っていて、そろそろ後継機種の選定に入らないといけない時期になっていますが、その後継機種もまた、アメリカ軍パイロットの体格に合わせて設計されている可能性が高いでしょう。

宇宙飛行士の身長というのは、いろいろな要素が複雑に絡み合っていて、単純には論じられない問題ですが、それでもなお、日本は国際宇宙ステーションのパートナーなのです。今回のJAXAの募集が海外パートナーの条件変更のあおりで、日本人にとって極端に敷居が高いものにならないことを切に願います。

[追記]

宇宙服を着たプールでの訓練の内容に詳しい人からこんなご指摘がありました。

水中訓練では、宇宙服の中に空気がたくさんあると、体の姿勢をかえるごとに、浮力のバランスが崩れて体を安定させるのに力を要するのですが、出来るだけ宇宙服の中の空気を減らすように、中につめるパッドがいろいろ種類があり、カスタマイズできます。本番(宇宙)ではそういう問題はないので、訓練時にハンディをおって練習している分、実際に宇宙に行くと小柄の人はより効率よく作業ができる、とNASAの宇宙飛行士が語っていました。

なので、小柄な人もめげずにがんばりましょう!!!

とのことです。

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2008.04.05

PS友の会発見!

このサイトを「宇宙飛行士になりそこなった」という検索ワードで訪れた方がいらっしゃったおかげで、旧NASDAの記念すべき第1回の宇宙飛行士選抜の受験生の会、「PS友の会」のメンバーの方のページを発見!

宇宙飛行士になりそこなった話

いやしかしこりゃ... びみょーなサイトですね。^^;

あの時、最終選抜に残ったメンバーの情報がどこからマスコミに漏れてしまったのか、旧NASDAは犯人探しにやっきになっていたけど、たしか謎のままだったかと。向井さんをモデルにした「女の一代記『向井千秋~夢を宇宙に追いかけた人~』」でも確かマスコミに情報が漏れた場面が再現されていましたね。

1984年から1985年にかけて行われた、日本初の宇宙飛行士選抜は、管理人から見れば伝説の時代だったんですが、いやしかしこりゃ... ご本人がカミングアウトしていらっしゃる... (www

いまから宇宙飛行士選抜に応募しようとしてる皆さん,他の受験生の個人情報や、JAXAの選抜情報を漏らしちゃだめですよ。

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2008.03.31

JAXAが宇宙飛行士募集要項を公開

JAXAが宇宙飛行士募集要項を公開しました。

国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士候補者の募集開始について
http://www.jaxa.jp/press/2008/03/20080331_select2008_j.html

とりあえず速報のみ。後日解説します。

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2008.03.20

宇宙飛行士になるには(7)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

メンタル・トレーニング

NASAの宇宙飛行士だったマイク・ミュレインの著書「ライディング・ロケット(上) ぶっとび宇宙飛行士、スペースシャトルのすべてを語る」の冒頭部分では、NASAの宇宙飛行士選抜のプロセスの中で精神科医の面接を受けて、「この質問にはどのように答えるのが合格への近道となるのか」と、得られるはずのない手がかりを求めて、一瞬の間にそれまでの自分の人生のすべてが走馬灯のように脳裏によみがえる場面が出てきます。私も旧NASDAの選抜で、まさしくこれと同じような体験をしました。

「宇宙飛行士になりたい!」と熱望しながら試験を受ける受験生にとっては、どんなささいな検査でも質問でも、すべてがパーフェクトでなくてはならない、という、一種独特の精神状態になります。その結果、「この検査項目で相手は自分の何を調べようとしているのだろう?」とつい疑心暗鬼になったりすることもあります。

旧NASDAの試験項目の中には、筆記による心理テストや、精神科医や心理学の専門家による面接、検査器具を使っての単純労働を続けた時のパフォーマンスの変化、などなど、様々な手法で受験生の心理適正や精神状態を検査するものがあります。

一次試験の段階では筆記による簡単な心理テストだけなので、普通の精神状態でなるべく正直に回答するように心がければ、まず問題はありません。しかし、もしこの段階で嘘をついて次のレベルに進むことができたとしても、専門家との詳細な面接や、検査器具を使っての作業の様子の精密な観察などが待ち受けています。以前のテスト結果との矛盾点が浮上すれば、容赦なく質問攻めにされます。小手先の技術を磨いただけではとてもこれらの検査を矛盾なく乗り切ることなどできません。では、まったく受験対策がないのかというと、そうでもなくて、一つできることがあります。

それは、自分自身の性格を「誰が見ても恥ずかしくないような宇宙飛行士」に変えてしまうことです。

もっと正確に言えば、「宇宙飛行士にふさわしい人間として自分自身を高めていく」という自己暗示をかけてしまうことです。

自己暗示にはいろいろな方法があると思いますが、私の場合は「自分がもしほんとうに宇宙飛行士に選ばれたとしたら」という目線で様々な映画を見たり本を読んだりすることが役に立ちました。

例えば選抜試験の合間に萩尾望都原作の「11人いる!」という漫画を映画化したものを観た時は、実際の選抜の手法とはまったく違う場面にも関わらず、「なるほど、あの検査ではこういう資質が求められているのか」などと一人で納得したりしました。

「ライトスタッフ」や「アポロ13」なども、選抜試験の合間に観たりすると、それまでとは全く違う視点が得られたりして、新鮮な気分になります。ヒストリーチャンネルやナショナルジオグラフィックチャンネルなどで放映される航空機事故の調査や潜水艦事故の救出などのドキュメンタリー番組を見るのも、英語力のトレーニングの他にも、メンタル面を強くする効果があります。

宇宙飛行士には、誰とでも仲良くなれる協調性が求められますが、もう少し詳しく見ると、「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」あるいはその両方の適度なバランス、が、求められていることがわかります。「リーダーシップ」とは、あるチームをまとめて引っ張っていく役割、「フォロワーシップ」とは、リーダーをもり立てていきながら、チームの最終目標を達成していく役割のことです。冬山登山やバディとの潜水を経験したことのある人であれば、その重要性はおわかりと思います。

旅客機の機長と副操縦士がコックピット内でどのようなチームワークを保てば安全を保つことができるか、という分析も進んでいます。旧NASDAのスタッフの一人に教えてもらった機長のマネジメント—コックピットの安全哲学「クルー・リソース・マネジメント」という本は、チームワークと安全性との関係を冷静に分析していて、とても参考になりました。

宇宙飛行士という職業は、お手本になる人が身近にはいない、とても特殊なものです。さまざまな困難に直面した時に、自分だけで解決策を見つけて困難を乗り越えていかなければならないことがあります。ある意味では、イチローやタイガーウッズ、オリンピックのトップアスリートたちだけが直面するような、「ベストの自分をイメージする」というメンタルトレーニングが必要な世界とも言えます。スポーツとは全く縁のなかった私にとって、「日本人のメンタル・トレーニング」という本は、私のメンタル面に大きな影響を与えてくれました。

つまるところ、私は選抜に落ちてしまったので、これらのメンタル・トレーニングがどこまで有効だったのかはよくわかりません。でも、私のその後の人生にはとても役に立ったと感じます。宇宙飛行士受験がなければ、これらのトレーニングをする機会はなかったでしょう。

(続く)

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2008.03.16

宇宙飛行士になるには(6)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

英語力

JAXAの発表によれば、今回の国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士募集の応募受付期間は2008年4月1日(火)から6月20日(金)までと予定されています。1998年の選抜と同じ形式であれば、この期間中と〆切後1ヶ月程度の間に、全国数ヶ所の会場で英語検定が行われます。

1998年の選抜では札幌、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の会場で2回にわたって英語検定が開催されました。受験生はこのうちのいずれか1回を受験することになっています。内容はTOEICと似たようなものですが、旧NASDA独自の問題です。前半はスピーカーから流れてくる英語の放送や会話を聞き取って5者択一式の設問に答える問題で、後半は記述式の問題です。

宇宙飛行士になると、訓練や本番で英語を正確に聞き取れない場合にはミッションの成否に関わるだけでなく、クルー全員の生命を危険にさらす可能性もあります。このため、受験生の英語の能力はこの検定の後も筆記試験やネイティブとの面接試験、NASAの現役宇宙飛行士によるインタビュー、など、様々な場面で手を替え品を替え、最終選抜まで試されることになります。

前回と同じ条件であれば、現在海外在住の人は、この英語検定のためにわざわざ帰国しなくとも、一次選抜の際に同時に受験できるようにJAXAが配慮してくれるものと思われます。

一次選抜を受験できる受験者数は、医療施設のキャパシティと予算との関係で今回も200人程度と予想されます。ということは、受験者数は、応募書類の経歴や健康診断、受験資格、応募の動機、それと英語検定の成績だけに基づいて、数分の一に絞り込まれてしまいます。海外在住組はさておき、現在日本国内に住んでいる人は、今から英語の勉強、特に、ネイティブが早口で話す言葉を正確に聞き取る訓練をしておくとよいでしょう。

好きこそものの上手なれ。

英語を聞き取る訓練は、日頃自分が興味を持っているテーマに絡んだ素材を繰り返し繰り返し聞いたりすると、あまり苦痛にならずに上達します。私の場合は3回目と4回目の選抜の合間に知人が送ってくれた「Astronauts」という、アメリカの公共放送の科学ドキュメンタリーNOVAのビデオをカセットテープに録音して、通勤の車の中で毎日聞いていました。このビデオは、若田宇宙飛行士が初めて宇宙へ行った時のSTS-72というシャトルミッションのクルーに、打ち上げ前から1年間、番組スタッフが密着取材して、クルーの日常の訓練風景からシャトルの打ち上げ、帰還までを描いた貴重なものです。自分が若田宇宙飛行士になった気分で何度も繰り返して聞いているうちに、ヒューストンとの交信もだいぶ聞き取れるようになりました。今でも番組内に出てくる会話はほぼ頭に入っています。

また、ケーブルテレビやCS衛星放送を契約している人はCNNを日常的に流すようにしておけば、世界の時事問題に精通することができて、一次試験の一般常識の問題でも役に立ちます。天気予報で最高気温や最低気温、風向きなどを意識的に聞き取る訓練をするのもいいでしょう。BBCでもいいですが、JAXAの英語検定で出題されるのはほぼ確実にアメリカ英語です。

TIME誌やNewsweek誌などを読んでおくのも役立ちます。例えばサブプライム問題について英語で解説しなさい、とか。じつは宇宙飛行士ともなると、アメリカやフランスの大統領と面会する仕事もあるかもしれないですし、各界の著名人とのパーティなど、日本国を代表した「宇宙飛行士外交」などのお務めも果たさねばなりません。

今この記事を読んでいるような人であれば、ネット上の情報収集も得意でしょうから、ネット上の素材を上手に活用するというのも一つの手法です。

NASA Multimedia Video Gallery

NASA TVのハイライトシーンを収めたビデオギャラリーです。現在飛行中のSTS-123のランデブーピッチマヌーバの映像と音声なんて、じつに萌えますね。

ここで問題です。STS-123のランデブーピッチマヌーバで耐熱タイルの様子を記録に収めるデジタル一眼レフは何台で、レンズの焦点距離と、撮影を担当している宇宙飛行士の名前は誰でしょう?

Planetary Radio Weekly Podcast

惑星協会(The Planetary Society)が提供するポッドキャストです。3月10日の番組では探査機が地球や他の惑星の重力を利用してフライバイする際に、探査機の速度が重力理論からずれるように見える現象の話題や、土星の衛星レアに輪があることが見つかった話題などが語られています。惑星協会の科学技術コーディネーターであるEmily Lakdawallaさんが、電話でのインタビューに答えています。

ここで問題です。Emilyさんが土星の衛星レアの輪のことを最初にブログに書いた時に慌てて電子メールを送ってきたのは誰でしょうか? また、この成果はどの論文誌に掲載されたでしょうか。

余談ですが、このEmilyさんは「はやぶさ」がイトカワにタッチダウンした時に惑星協会のブログでその偉業をいち早く世界中に広めてくれた、日本の宇宙開発業界にとっての恩人です。かぐやでもその打ち上げからハイビジョン映像、国際会議での科学的成果の発表に至るまで、きわめて熱心にフォローしてくれています。JAXAが科学探査ミッションを世界に認めてもらうには、Emilyさんが熱望しているような情報をタイムリーに英語で情報公開していくべきでしょう。

先のポッドキャストでは、電話インタビューの後ろでEmilyさんのお子さんの声が聞こえます。はやぶさのタッチダウンから9ヶ月後に生まれた赤ちゃんです。かわいい。

Flyby anomalyについてもWikipediaに載っているので、腕に覚えのある人は、この謎を解いてみるのもいいかもしれません。ただし、謎解きに夢中になって我を忘れてしまうような人は宇宙飛行士には不適格です。宇宙ホタルの謎解きに夢中になって危うく命を落としかけた宇宙飛行士のその後の運命についてはまた日を改めて。

(続く)

[3/17 追記]

IsanaさんのすばらしいPostcastコレクションのことに言及するのを忘れていました。

Reach for the stars - Podcast

それぞれのPodcastを聞きながら、文字として打ち込んでみましょう。こちらに解答があるので、後で比べてみてください。

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2008.03.08

訂正

AFPの記事にあった間違いを修正するつもりが、かえって自分の勘違いをさらけ出す醜態に。いやはや、面目ないです。こんな基本的なところをチェックし忘れるなんて。記事は修正しておきました。お詫びして訂正します。S石さん、ご指摘ありがとうございます。

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日本実験棟「きぼう」打ち上げまで77時間

土井さん二度目の宇宙へ。お気をつけて。

副長日誌経由。

なんというか、スゴい記事だなぁ。三つぐらい次元を隔てたパラレルワールドからの配信じゃなかろうか。
AFB BB News: 「きぼう」日本実験棟、いよいよ打ち上げへ 国際ニュース

おお、福田さんだ。お元気そうで。

福田さんの勢いとMiwa Suzukiさんのコラボ記事クォリティ、というところでしょうか。

日本は2020年までに月に宇宙飛行士を送ることを目標にしている。2003年には隣国中国がこれを達成している。
善意に解釈すれば、「JAXAは2020年までに国際プロジェクトに参加して、別の天体における有人宇宙活動のノウハウを蓄積しておきたい。隣国の中国は自国のロケットで2003年に有人宇宙活動を達成した。」と言いたかったのでしょうねきっと。
2009年3月には船外実験プラットフォームなど残りの部分が打ち上げられ
ということは、NASAはそろそろこのきぼう組み立ての最後のミッションのフライトアサインをしますね。タイミング的には超微妙。NASA的にはロボットアームの操作で万一ミスがあった時に国際問題にならないように日本人を起用したい。星出さんは次の1Jミッション、若田さん野口さんはISS長期滞在に向けて訓練中、となると、候補は古川さんか山崎さん。山崎さんは土井さんのクルーサポートアストロノートだから、いまアサインがあると外されてしまう。逆に、NASAがSTS-123の結果を見極めてからアサインをするとなれば、土井さんのサポートをした山崎さんの方が有利になる。NASAも国際協力パートナーである日本のプロジェクトを軽くはみないだろうから、となると、「3月のフライトアサイン」は、STS-123帰還後に発表される可能性が高い。

古川さんと山崎さんの適正を考えると、結論はほぼ決まっているのかも。

[3/8追記] S石さんのご指摘で、「きぼう」3便目のフライト、STS-127 2J/Aのアサインはすでに発表されていることを思い出しました。そういえば宇宙ステーション滞在を終えた若田さんがこのフライトで帰還するというニュースが流れていましたね。すっかり失念していました。すみません。S石さんありがとうございます。

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2008.03.07

宇宙飛行士になるには(5)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

職場との関係

今回、JAXAが募集する宇宙飛行士は1名から3名程度です。10年間、募集がなかったので、何人が応募するのか、まったく予測がつかないですが、前回が864人だったので、今回も1000人弱くらいではないかと考えます。

ということは、宇宙飛行士になるための競争率は300倍から1000倍の間。じつに狭き門ですね。応募する人のほとんどが、選抜の途中で不合格となって、涙を飲むことになります。

JAXAが求める応募書類には、家族が書く「応募に対する家族の意見」という欄がありますが、職場の上司などの推薦書は最初の段階では必要ありません。2次選抜までは職場に内緒にしておいても、とりあえず受験することはできます。第0次の英語試験と1次試験は週末に行われるので、週末が休みの人は仕事を休まなくても受けられますし、2次試験では筑波宇宙センターに一週間、缶詰めにされますが、会社に毎朝「今日も体調がすぐれないので、お休みします」と電話をかけ続けて試験を受けた猛者もいます。

試験設備の収容人数の関係で、3次選抜には今回も8人がチャレンジすることになると思いますが、この8人にはこのとき初めて、職場の上司からの推薦状を出すようにJAXAから求められます。なにしろ3次選抜を受験する、という人は、もういつ何時、宇宙飛行士としてJAXAに転職してもおかしくない、という状況なわけです。

職場に内緒で応募するか、あらかじめ上司や同僚に打ち明けてから応募するか、というのは悩みどころです。

「自分は1000人中の997人のほうにまわるだろう」という自信(?)があるのなら、職場に内緒で受験する、というのも一つの選択肢です。

でも、もし仮に万が一、3次選抜まで進むことになった場合、いきなり推薦状を上司に突きつけて、「これ、書いてください」というよりも、自分が何をやろうとしているのかを事前にわかってもらった上で応援してもらった方が、精神的にも落ち着きます。

とはいえ、上司や職場のトップがすんなりと応援してくれるかどうか、というのは、それぞれの組織で大きく異なるようです。宇宙航空関連業界の大企業であれば、「いや、じつは俺も若い頃、応募したことがあるんだよ。お前ならきっといい線いくぞ。がんばれ!」と、背中を押してくれる上司と出会う可能性も高いかもしれません。実績ベースではJAXAとかMHIとかIHIとかJALとかANAとか...

大学や公的研究機関の研究者であれば、自分の進退は自分の自己責任である場合が多いでしょうから、結果責任さえ取る覚悟があれば、比較的自由に受験できると思います。指導教官の性格にもよりますが... 毛利さんの著作によれば、毛利さんが当時所属していた研究室の教授は、当初、毛利さんを応援していたけれど、2次選抜、3次選抜、と進むにつれて、だんだん機嫌が悪くなっていったようです。

民間の会社では、直属の上司が応援してくれても、会社のトップが「うん」と言ってくれないケースも考えられます。特に会社のお金で何年か留学させてもらっていたような場合、英語力や海外滞在経験がJAXAに対しては有利に働きますが、有能な若手を引っこ抜かれる会社の側からすれば「誰のおかげでここまで育ってきたと思っているんだ!」と言いたくなる気持ちもわからなくもありません。

実際のところ、最終選抜にまで残るような人ほど、元の組織にしてみれば、手放したくないというのが本音でしょう。JAXAはその辺りの事情を見極めるために役員が一軒一軒、最終選抜者の職場のトップを訪ねて挨拶にきます。

宇宙飛行士選抜受験といえば、究極の転職であり、ヘッドハンティングです。転職のことばかりを考えるような人を警戒する一方で、相手の組織が手放したくないと思っている人をいかにして円満に採用するかに関してもJAXAは細心の注意を払っています。

JAXAのある人によれば「周囲の人を味方に付けて、物事を円満に解決していく能力、も、宇宙飛行士の資質のうち」だそうです。自分を理解し、応援してくれる上司や同僚や家族に恵まれているか、というところで、すでに選抜試験は始まっています。

(続く)

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2008.03.06

白崎さん講演会

私と一緒にヒューストンまで行ったファイナリストの一人、白崎先生が、倉敷科学センター プラネタリウムで15日に講演会だそうです。

白崎 修一 科学講演会「夢を追いかけて〜私の宇宙飛行士への挑戦」 倉敷科学センター

岡山在住の人、チャンスですね。

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GXふるぼっこ

ある人から、こんなブログがあることを教えてもらった。

The Third Three-Months:
朝日新聞記事「GXロケット、開発費当初の3倍1500億円に、」、宇宙開発の無駄遣いを注視せよー1
朝日新聞記事「GXロケット、開発費当初の3倍1500億円の見通し」、宇宙開発の無駄遣いを注視せよー2
朝日新聞記事「GXロケット、開発費当初の3倍1500億円の見通し」、宇宙開発の無駄遣いを注視せよー3
朝日新聞記事「GXロケット、開発費当初の3倍1500億円の見通し」、宇宙開発の無駄遣いを注視せよー4
朝日新聞記事「GXロケット、開発費当初の3倍1500億円の見通し」、新聞は科学政策の失敗を糾弾せよ

どうも松浦さんの記事をベースに徹底分析なさったらしい。いやはや、GXロケットぼっこぼこです。でも正論なんだよなぁ。特に新聞記者への注文など。

新聞社は別に月刊誌またはインターネットで詳しい報道をする体制をぜひ整えてほしいと思います。記者さんは当然詳しい知識と情報を集めたはずですから、それを発表しないのは宝の持ち腐れです。
責任者不在を非難するだけでは駄目で、失敗がなぜ起きたのかを徹底的に分析し、今後の教訓を引き出すことが大変重要です。新聞社の科学部は、単に科学の内容を記事にするだけでなく、社会に影響を及ぼす科学政策の失敗をもっと徹底的に追及すべきです。

「宝の持ち腐れ」というのは、まさにその通りですね。asahi.comなんて、日本の新聞各紙の中では真っ先にwebサイトを立ち上げたのに。このページによると、CNN.comとほぼ同時。すごい。ちなみに、NASDAがwebサイトを作ったのも確か95年だった気がする。この年に5thstarの元となる宇宙飛行士募集があって、webで募集要項を確認したような記憶が...

件の記事では宇宙飛行士を活用する体制についてもぼっこぼこです。

このノウハウの継承の体制がわが国にはないのではないか。新聞社にはこのあたりの突っ込んだ分析もぜひお願いしたいと思います。
これは毛利さんと向井さんの去就のことを指しているのだと思いますが、この問題についてはいずれ連載の方でも取り上げたいと考えています。未来の宇宙飛行士にとっても切実な問題でもあるだけに。

「きぼう」に関する記事の指摘についても、役員面接で「どう思うか」と逆に利用されそうな予感が...

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2008.03.04

宇宙飛行士になるには(4)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

今そこでできること

過去4回の宇宙飛行士選抜はいずれも旧宇宙開発事業団(NASDA)によって行われました。それぞれの選抜で求められる宇宙飛行士の資質やミッション内容は少しずつ異なっているので、募集要項も微妙に異なります。選抜試験のやり方も毎回かなり異なっています。選抜する側もいろいろ悩んで試行錯誤を繰り返しているのです。正確を期すためには、JAXAが今回の募集要項を4月1日に発表するまで待つ必要があります。

しかしその中でも、今から準備しておくと役立つことがあります。

それは「応募の動機」を考えておくこと、です。

応募書類の中には「宇宙飛行士志願書」という、A3の紙を二つ折りにしたような書類が含まれています。その中の、A4の3分の2くらいのスペースに「応募動機」を書く欄があります。

この志願書は、これからの1年間の選抜過程で、あなた自身を特徴づけてくれるパスポートのようなものです。その中でも「応募動機」の欄は、それぞれ個性があるので、選抜する側はたとえ何百人分の書類を見ていても、一人一人の応募動機を見るだけで「ああ、この人ね」と、あなたを思い出すことになります。二次選抜、三次選抜、と進んでゆくにつれて、役員面接の席上であなたに質問を投げかける役員の手元には、この志願書のコピーがあるはずです。

なぜ、宇宙飛行士になりたいと思ったのか、なぜ応募したのか、宇宙に対しどのような情熱を持っているのか、選考委員にアピールしておきたいことを、あなた自身の言葉で簡潔にまとめておきましょう。

応募動機のほかにも「自分の目指す宇宙飛行士像(自己アピールも含め)」を書く欄や、「応募に対する家族の意見」を書く欄もあります。

95年の選抜のときの書類のコピーを見直してみたら、「応募に対する家族の意見」には一言、「応援している」とだけ自分で書いていました。そしたら98年の書類では「応募に対する家族の意見(可能な限り家族本人が記入すること)」となっていました。よく書類選考で落とされなかったものだ...(汗

また、治療すれば完治するものについては、必ず今の段階で治療をすませておきましょう。

かつては「虫歯があると、パイロットや宇宙飛行士にはなれない」と言われていた時代がありました。成層圏などの気圧の低いところでは、虫歯の詰め物と歯の隙間に残っている空気が膨張して、我慢できない痛みを誘発し、操縦や作業に支障があります。現在は治療技術が進歩しているので、「フライト前にちゃんと治療すれば大丈夫です」と、JAXAのフライトサージャン(宇宙航空医学の医師)が言っています。

私は95年の選抜では親不知と虫歯の治療をしないままに2次選抜に臨んだため、不合格通知の紙にはしっかりと「歯科治療の必要を認める」という一文がありました。まぁこれだけが理由で落ちたのではないのでしょうが、選抜を実施する側から見れば「こいつ、どこまで本気で受験しているんだ?」という印象を持たれたのかもしれません。合格したいのであれば、今そこでできること、は、ちゃんとやっておきましょう。歯槽膿漏の人は、歯茎を毎日朝と夜にデンタルフロスでブラッシングすると、症状が軽減します。

一方、日本人に多い近眼についてはどうでしょうか。現在の基準では、視力が両眼とも裸眼で0.1以上かつ矯正視力1.0以上で色神が正常であることが求められています。毛利さんたちの時代には確か裸眼でも0.3以上求められていましたが、日本人には近視の人が多いことから、NASDAがNASAと交渉した結果、条件が緩和された、と聞いたことがあります。

最近はレーシック手術などで近視を矯正することができます。10年前のNASDAの判断では「手術はお薦めしない」とのことでした。急減圧などの過酷な環境で過ごす宇宙飛行士にとってどのような副作用が生じるかあまりわからなかったためです。

ところが!!!

今回の募集で選ばれた人がNASAに行って一緒に訓練することになるNASAの宇宙飛行士候補生募集条件を見てみると、

The refractive surgical procedures of the eye, PRK and LASIK, are now allowed, providing at least 1 year has passed since the date of the procedure with no permanent adverse after effects. For those applicants under final consideration, an operative report on the surgical procedure will be requested.

え〜〜〜、今の今まで知らんかった!

今回のNASAの募集では、「選抜の1年以上前にPRKもしくはレーシックの矯正手術をすませ、その後の後遺症が認められない場合は応募資格がある」とのことです!!

裸眼視力が0.1未満だと、これまでは宇宙飛行士になることを諦めざるを得なかったのですが、これは朗報になるかも、ですね。「1年以上前」ってところが微妙。JAXAが公表する募集要項を固唾を飲んで見守りましょう。JAXAのフライトサージャンの見解が重要です。くれぐれもあわてて手術を受けないように。

近視で裸眼視力が0.1ぎりぎりの人は、遠いところと近いところを交互に20秒ほど見つめて目のピントを合わせる毛様体筋のストレッチ運動をして、目をリラックスさせてやると、若干ですが視力が回復します。ただし疲労が蓄積しないように、ほどほどに。

体力作りにはジョギングや水泳が適しています。向井さんは選抜期間中、英会話教室2クラスに通いつつ、水泳をやっていたそうです。毛利さんはエアロビクスの教室に通ったそうです。アメリカ人で初めて地球を周回したジョン・グレンはジョギングを欠かしませんでした。

私の場合は95年の選抜ではスポーツの知識がなかったので、がむしゃらにトレーニングしては三日坊主で、全く効果がありませんでした。じつは脈拍を上げないゆっくりした運動を毎日30分ほど継続して行えば、有酸素運動能力は数ヶ月で見違えるほど向上します。「脈拍 有酸素運動」などで検索して、自分にあったトレーニング方法を見つけてください。

タバコは宇宙飛行士にとっては厳禁です。お酒はほどほどに。脂肪肝の疑いのある人は今から禁酒しておきましょう。

今のスケジュールではおそらく7月か8月頃に英語の試験、9月か10月頃に基礎学力試験と医学検査となります。大学のセンター試験程度の受験勉強を今からこつこつとやっておくといいでしょう。特に数学、物理、化学、生物、地学、英語のヒアリング、などです。

宇宙飛行士受験に王道なし。「これだけやっておけば大丈夫」という妙案はありません。「こんな宇宙飛行士になりたい」というイメージに自分自身を近づけていくために、地道にトレーニングを重ねましょう。「継続は力なり」です。

(続く)

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2008.03.02

宇宙飛行士になるには(3)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

宇宙飛行士の仕事

「宇宙飛行士」と聞くと、誰をまず思い浮かべますか? 毛利さん? 向井さん? 野口さん? 若田さん?

あるいは、人類で初めて地球を一周したユーリ・ガガーリンや、人類で初めて月面に第一歩を印したニール・アームストロング、ちょっとマニアックなところでは、映画「アポロ13」でトム・ハンクスが熱演したジム・ラベルなどを思い浮かべる人もいるかもしれませんね。

「宇宙飛行士」というと、今でも子供たちには絶大な人気があります。かっこいい職業の代名詞ともいえるでしょうね。生身の毛利さんと会ったりすれば、その独特の雰囲気と存在感には圧倒されます。

しかし、宇宙飛行士が毎日どのような仕事をこなしているか、という現実の姿があまりにも知られていない、というのもまた事実でしょう。最近ではJAXAのwebページなどを丹念にチェックすれば、日常の訓練風景などが定期的に公開されています。今回の宇宙飛行選抜に応募しようと考えている人のうちの何人が、それらの訓練風景を「もし自分が合格したら、これがこれからの仕事になるのだ」という意識で見ているでしょうか?

少なくとも、私は受験前、まったく考えていませんでした。(^^;)

しかし、JAXAがどのような宇宙飛行士を求めているかを冷静にかつ正確に認識しておくことが、これからの1年間にわたる選抜試験の正否を握っている、と考えて間違いはないでしょう。

JAXAが今回公開した情報の中に「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士の任務」というページがあります。

今回募集する宇宙飛行士は最長6ヶ月程度国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗し、ISSと「きぼう」日本実験棟の運用・維持を行うとともに、宇宙環境を利用した様々な実験・研究を担当します。
ここで求められている任務をどれだけ正確にイメージして、そのために自分は何を準備すればいいのか、さらにその準備を着実にこなしていくことができるか、という、「イメージ作りと計画・実践」が、合格への秘訣といっても過言ではないでしょう。毛利さんや向井さんの旦那さんの著作を読めば、彼らが選抜受験にあたって、どのような心構えで、どのような努力を重ねたのかがわかります。

幸い、今年は日本人宇宙飛行士が3回、宇宙に行きます。JAXAからもマスメディアからも、さらにはNASAからも、膨大な量の情報が公開されることでしょう。それらの情報を「もし自分がこの立場だったとしたら」という、自分目線でとらえ直した上で、自分自身のあるべき姿をイメージトレーニングしていくことが、役員面接などでプラスに評価されるはずです。

3月11日にスペースシャトルSTS-123で2度目の宇宙を目指す土井宇宙飛行士のミッションの情報が公開されました。

JAXA: 1J/Aミッション:「きぼう」組立ミッション - 「きぼう」日本実験棟
JAXA: SPACE@NAVI-Kibo WEEKLY NEWS 第8号

また、野口宇宙飛行士のブログでは、

野口聡一blog: 土井さんのフライトのことをもっと知りたい人は

という記事で、このミッションの報道関係者向け資料プレスキットが紹介されています。これらの資料の隅々にまで「これが自分の仕事になるんだ」という気持ちで目を通しておき、土井さんのミッション中の一挙手一投足、発言のすべてについて、「自分ならこうする」というイメージトレーニングをしておくとよいでしょう。

とはいえ、選抜ではこれ以外にも厳しい健康診断や心理テスト、学力テスト、一般常識問題などが課せられます。視力や身長などのいかんともしがたい理由で門前払いの憂き目に遭う人も少なくありません。せめて、今この瞬間に誰にでもできること、しておかなければ後悔すること、について、次回、解説してみます。

(続く)

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2008.02.29

宇宙飛行士になるには(2)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

宇宙への情熱

前回の記事では「宇宙に情熱があり、過酷で長い訓練にも耐えられるような強い意志のある人物を採用したい」というJAXAのコメントが選抜の最終段階で重要な意味を持つ、と述べました。ちょっと解説しましょう。

宇宙飛行士というのは、宇宙へ行って、そこであらかじめ定められたミッションを遂行して、無事に帰還することが仕事です。そのために、ありとあらゆる事態を想定した訓練を何年もぶっ続けに受けることになります。シベリアの極寒の地に不時着して、1日か2日ほど無人の地で救助を待つ、というケースや、夜間、海面に不時着して、ヘリに救助され、そのヘリがさらに墜落して、真っ暗闇で上下逆さまになったヘリから脱出する、などのサバイバル訓練、あるいは、宇宙ステーションに搭載された実験モジュールでどのような実験を行うかを地上からの聞き取りづらい無線で指示通りに遂行する、など、です。

就寝前や起床時のわずかな自由時間に、窓から地球を眺めたりすることができますが、ほとんどの時間は窓のない宇宙船の船内で、ただひたすら単調な作業を黙々とこなしていきます。

宇宙飛行士になるためには、宇宙への情熱が不可欠ですが、ここでいう宇宙とは、宇宙物理学や天文学のことではありません。書斎に閉じこもってハッブル望遠鏡が撮影した天体写真を見るのが好き、というだけでは勤まりません。自分自身が宇宙空間へ飛び立ち、帰還するための、ありとあらゆる訓練を情熱的にこなすことができる資質が不可欠です。「ジェット機を自分で操縦したい」「エベレスト登頂や南極点踏破に挑みたい」「スキューバで困難な海域を征服したい」「スカイダイビングしたい」などの意欲がある人がどちらかといえば宇宙飛行士向きと言えます。といっても、あくまで「意欲」のことであって、これらのスポーツをほんとにやっておく必要などはありません。

とはいえ、ほんとに合格したらあまり危険なスポーツはできなくなるので、もしもやり残したことがあるのなら、選抜が始まる前の今のうちに。(^o^)v

(続く)

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2008.02.28

宇宙飛行士になるには(1)

10年ぶりに日本人宇宙飛行士を募集することをJAXAが正式に発表しました。

JAXA: 10年ぶりに日本人宇宙飛行士候補者を募集! 募集要項は4月1日に発表予定

10年前の選抜は宇宙三機関統合前のNASDAですから、JAXAになってからの募集は初めてです。NASDA時代には4回の募集がありました。

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

まずは情報の整理

JAXAが公開する情報や、ニュース記事などは、とても貴重な情報源です。コピーを取るなりして、あとでじっくりと読み返してみましょう。

MSN産経ニュース:宇宙飛行士10年ぶりに募集 JAXA
時事ドットコム:10年ぶり宇宙飛行士募集へ=活動拡大、若手確保−宇宙機構
時事ドットコム:新人飛行士、飛べない可能性も=4月1日から募集−ISS長期滞在要員・宇宙機構
asahi.com: 10年ぶりに宇宙飛行士募集、ISSに滞在 宇宙機構
YOMIURI ONLINE: 「求む!宇宙飛行士」10年ぶり開発機構が募集開始へ
毎日jp:JAXA:ステーションに長期滞在…宇宙飛行士を募集
NIKKEI NET: 日本人宇宙飛行士を新規募集・宇宙機構、10年ぶりに
NHKニュース:宇宙飛行士 10年ぶり募集へ
TBS News i: 10年ぶりに日本人宇宙飛行士募集へ

また、上記のJAXAのページには、文部科学省の宇宙開発委員会に提出された資料がPDFでリンクされています。この資料によると、「2月27日 記者発表」とあるので、産經新聞だけが昨夜の時点でフライングして記事にして、他の新聞各社やNHKは、JAXAの記者発表をちゃんと待ってからその内容やJAXAへのインタビューを詳しく記事にしたことがよくわかりますね。(^^;)

今回の募集の詳細も掲載されています。

これらの一次資料は、何度でも読み返してみてください。読むたびに新たな発見があると思います。

たとえばNHKのニュースの最後にある

宇宙航空機構では「宇宙に情熱があり、過酷で長い訓練にも耐えられるような強い意志のある人物を採用したい」と話しています。
というひとこと。

この何気ないひとことが、選抜の最終段階で重要な意味を持ってきます。これからの1年間、いろいろと心の迷いが生じたときにこの言葉を思い出しましょう。

(続く)

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2008.02.27

JAXAが宇宙飛行士募集

秋沙のココログ既知ログ:JAXA、10年ぶりに宇宙飛行士の募集をする方針を決定
MSN産経ニュース:宇宙飛行士10年ぶりに募集 JAXA

おお。

JAXAが国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士を1〜3人程度募集する方針、とのこと。申し込みは4月1日から。

宇宙ステーション後の計画がまだ見えていないから、募集は当分先、と思っていたけれど、今にして思えば、この記事が予兆だったのか。10月の理事長のコメントだから、平成20年度の予算要求の編成が始まった時期だと思われる。

昨日の読売の社説を見て、論説委員が何が言いたいのかわからず「?????」っていう状態だったんですが、こういう動きがあったとは。

JAXAのスイートスポットは20代後半から30代前半でしょうね。若田さんの人柄をロールモデルにしてがんばってください>若い人たち。毛利さんをモデルにすると管理人のようになります(w

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2008.01.19

Tsubasa

今夜(18日)の「たけしの誰でもピカソ」は70年代のフォークソング特集だった。正やんやこうせつやイルカの歌声をぼーっと聴いていて、ふと10年前の選抜のことを思い出した。

ということで、ほとんど4年ぶりに選抜体験記に新エントリーを書いてみた。

5thstar 選抜体験記:翼をください

歌は、遠い昔の記憶を連れてくる。

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