2009.01.10

TPS

はやぶさのイトカワタッチダウンの時に、いち早くその偉業を世界中に広めてくれた米国惑星協会の科学技術コーディネーターであるEmily Lakdawallaさんが、火星探査機スピリットの記事を書いている。NASA TVのストリーミングを興奮しながら見守ってから、もう5年も経つのか。月日が流れるのは早いねぇ。

TPS: Five Years of Spirit on Mars

Emilyさんの記事はいつ読んでも感動的な文章なので大好きだ(はぁと)。今回の記事も、火星の冬を必死で耐え抜くスピリットにうるうると感情移入しながら読んでしまう。「こんな文章が書けるといいな」といつも自分を戒めるのだが、足下にも及ばない。"... we can all explore Mars – at least in spirit."というPunch Lineも、冷静に考えれば、ありがちなおやじギャグなのだが、ぶわぁ〜と泣けてしまった。歳を取ると涙腺が緩くてねぇ...

今、TPSのサイトを見たら、火星の表面にゴロゴロ転がっている石がなぜどこでもほぼ等間隔に並んでいるのかの謎を解くプレスリリースの解説記事が掲載されていた。じつにわかりやすい。2歳半の女の子のお母さんなのに、よくこれだけの記事をこれだけの頻度で書けるものだと、いつも感心してしまう。火星の大地に立って、つむじ風が平原を駆け抜けていく様子を数億年間、見つめ続ければ、石が少しずつ動いていく様子が見えるのだろう。気分はレイ・ブラッドベリの火星年代記

と思ったら、そのEmilyさんから惑星協会への寄付のお願いの記事が!

なんてことだ。これまで惑星協会から寄付のお願いの手紙が郵送で送られてくるたびに「ちぇ、またかい」と軽くあしらってたのが、他ならぬEmilyさんから懇願されると、思わずくらくらぁっときてしまう。ロサンジェルス郊外のスーパーで食料品を大量に買い込み、娘さんの待つ家に帰る途中の駐車場でふと見上げた黄昏の空に水星を見つけてしばらく見とれている彼女の姿を想像してしまう。(偶然にも同じ日、管理人も水星を見ていた!)

ということで、管理人自身は今年の会費はすでに払っているので、ちょこっと宣伝。みなさん、惑星協会のメンバーになりましょう! 入会手続きはこちらから。メンバーになると、ほかの雑誌では見られないような惑星探査の詳細な解説記事が掲載された会報(英語)が送られてきます。

メンバーにならなくても、こちらから寄付することもできます。

10年前の閉鎖環境試験チェンバーの中では、いつか火星の大地に立つことを夢見て、下手な絵を描いたものだっけ。あの時に同じ空気を共有した3人が、宇宙へとそれぞれ旅発つ。今回のメンバーもそろそろですね。がんばりましょう。

2007.09.17

ニコルソン・クレーター

一瞬、火星の人面岩の話題かと思ったけど、違うのね(w

Technobahn ニュース : 火星のナゾの地形「ニコルソン・クレーター」

元ネタはこれのようです。

ESA: Nicholson Crater on Mars

Nicholsoncrater
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin (G. Neukum)

Technobahnでは

こういった侵食は、流水によるものと、風による風化によるものの2つが可能性として挙げられるが、どちらにしても、どうして丘陵部分の片面だけにこのような侵食の跡が残っているのかに関しては十分な説明ができていない。
としているけれど、管理人は非専門家なので、この画像を見て、一目で「非科学的に」断言します。(w

これはどうみても風による浸食ですね。まるで風洞実験の跡みたい。風上側のクレーターの底面が標高が高く、風下側がえぐれている。しかも風食によって運ばれた堆積物が、風を遮る山の陰に堆積している。

これが何を意味するかというと、火星のこのニコルソン・クレーターの付近では卓越風の風向がほとんど一定であるということ。季節によって、風向の変動がほとんどないのでしょう。地球のような海を持たない火星では、大気の循環モデルが地球とは比較にならないほど単純であることを予想させる。

火星の大気圧と風速はわかっているのだから、ニコルソン・クレーターの中央丘を形成する岩石の硬度がわかれば、この地形が発達するのに何万年か、あるいは何千万年かかるのか、が計算で求められる。

似たような計算を他のクレーターに対して行えば、火星の卓越風が維持された期間が求められるかも。もしかしたら、火星に海が存在したとされる期間が推定あるいは否定されるかも。

2005.10.27

マーズ・ポーラー・ランダー発見は間違い

1999年、火星に着陸を試みて消息を絶ったNASAの火星探査機「マーズポーラーランダー」。5月5日の記事でNASAが再捜索を試みる、と書いて、追記で「お手柄!かな...」と書いたのだけど、その後の捜索で、パラシュートや機体だと思われていたのは実は火星表面の模様だったらしい。

Mars Global Surveyor Mars Orbiter Camera: Mars Polar Lander NOT Found

The Planetary Societyのブログ経由の情報。

解説を読むと、5月6日に書いた追記がいろいろ勘違いをしていたことに気づく。まず、Sky and Telescope誌のwebサイトに載っていたプレビュー記事の写真は1999年12月から2000年1月にかけて撮影されていたもので、この時、写真の領域は二酸化炭素の霜で覆われていた。

火星表面のある一点にカメラの狙いを定めて衛星全体をピッチ軸とロール軸で姿勢制御しながら撮影をするcPROTO (compensated Pitch and ROll Targeted Observation)というテクニックを駆使すれば、極めて解像度の高い写真を撮ることができるが、この操作は極めて難しいらしい。今年4月の撮影は露出があわなくて失敗。7月、8月、9月と撮影の試みを続けて、9月27日に撮影に成功。

新しく撮られた画像では、探査機と思われていた輝点が消失している。5年前の画像の輝点はどうもピクセルのノイズだったようだ。

cPROTOのテクニックは探査するべき地点が決まらないとできないので、候補地点が無くなった今となってはこれ以上の捜索はできないようだ。現在火星に向かっている新探査機、マーズ・ルコネサンス・オービターに搭載された高解像度カメラHiRISEの活躍が待たれるとのこと。

難しいものですね。

2005.05.28

マーズグローバルサーベイヤーが同僚衛星を撮影

現在、火星の周りを回っている人工の衛星で最も古いマーズグローバルサーベイヤーが、搭載するカメラで別の衛星を撮影した。

Sky & Telescope: Astro Image in the News: Spying on the Neighbors

4月20日にはESAの衛星、マーズエクスプレスを撮影。この時、両者の距離は250km。

翌日にはNASAの衛星、マーズオデッセイを撮影。この時、両者の距離は90km。

なかなか面白い画像だ。でも、地球衛星軌道上ではこんなことは日常茶飯事で行われているのだろうなぁ...

2005.05.05

マーズポーラーランダーの再捜索

スペースサイト!経由:

Space.com: Search on Again for Mars Polar Lander

1999年、火星に着陸を試みて消息を絶ったNASAの火星探査機「マーズポーラーランダー」の再捜索をNASAが試みるという。

以前の記事、

NASAの火星探査機と米国のスパイ機関
マーズグローバルサーベイヤーの解像度

でマーズグローバルサーベイヤーの解像度が思ったよりいいことを書いたけど、NASAはいつかマーズポーラーランダーを再捜索するんじゃないかと思っていた。スピリットとオポチュニティの探査がかなりの収穫をあげた今、再捜索の時間の余裕ができた、ということなんだろうか。

一説によると、もう見つかっているんじゃないか、という話もあるらしい。Sky and Telescope誌に注目。

[追記 5/6] 一夜明けて、Sky and Telescope誌のwebサイトに、マーズポーラーランダー発見?のプレビュー記事が載っている。

Sky and Telescope: Mars Polar Lander Found at Last?
FloridaToday: Mars craft wreckage found, scientist says
HoustonChronicle: Has scientist found Mars wreckage site?

サンディエゴのMalin Space Science Systems社のチーフサイエンティスト、Michael C. Malin氏によると、マーズグローバルサーベイヤーが1999年から2000年にかけて撮影した画像を、スピリットやオポチュニティの撮影に成功した経験を活かして再解析したところ、パラシュートと逆噴射ロケットの噴射痕とみられる地点を見つけ出すことに成功したとのこと。

画像を見ると、確かに着陸船本体も写っているように見える。

NASAは今年後半にマーズグローバルサーベイヤーの姿勢を火星表面の目標地点にロックオンして画像を撮影する方法により、解像度50cmの写真で再調査する予定という。

お手柄!かな...

2004.04.09

NASAの火星探査機の探査を5ヶ月延長

JAXAの月探査情報ステーション経由の情報。

NASA、ローバミッションを5ヶ月延長へ

5ヶ月の延長運用の資金として、1500万ドル(約16億5000万円)の追加支出を行うことを決めた.....ローバ計画全体額の2%程度
スピリットとオポチュニティの状態が極めて好調なことからの決定でしょうが、目一杯、探査に頑張ってくれることに期待、ですね。

的川先生は、のぞみの観測装置を活かせなかったことが悔しくてしょうがない様子ですが...

それにしても桧舞台に立てなかった日本の「のぞみ」の観測機器を、運んでくれる探査機はないものでしょうか。それらには、アメリカやヨーロッパの現在の機器が束になってもかなわない大気・プラズマの観測機器がつまっており、今回のアメリカの発見をグローバルに検証するための大切な「武器」なのですが……
どちらかというと「YMコラム」というよりは「YMの個人日記」、という趣ですね。

個人的には本家TPS会誌の雰囲気のほうが好きです。本家TPSについてはまたいずれご紹介しましょう。

2004.02.01

オポチュニティが火星の地表に

NASAの火星探査機オポチュニティが台座から火星の地表に無事降り立ったとのこと。

Opportunity on the Martian Ground
Image Credit: NASA/JPL

障害が回復して調査活動に復帰したスピリットとともに、これからたくさんの情報を送ってくれることを期待。

2004.01.25

オポチュニティがタッチダウン

NASA TVの情報。2時6分、無事タッチダウンしたようです。おめでとう!

JAXAのページが常時更新されてます。

[18:13追記] 最初の画像が届きました! すばらしい。

Opportunity Image
Image credit: NASA/JPL

NASAの火星探査機の情報をお求めの方へ

NASAの火星探査機オポチュニティの着陸は日本時間の25日(今日だ!)の午後2時5分頃、です。

その影響か、このサイトへもGoogleなどの検索エンジンでの来訪者が増えてきました。

火星探査機の日本語で読める情報は

JAXA月探査情報ステーション「マーズ・エクスプロレーション・ローバ

がもっとも充実しているようです。休日出勤、ご苦労様です>関係者の方

心配されるスピリットのデータ送信の状況も、次第に原因が特定されて改善されつつあるようですね。予断は許さないものの、めでたい話だ。

英語での情報はNASA/JPLのwebサイトから:

NASA/JPL: top > Mars Exploration Rovers

NASA TVの中継
がReal Playerで観られます。

ただし、着陸の瞬間は世界中からアクセスが集中することが予想されるので、いちばん肝心な瞬間はReal Playerでは観られない、かも、しれません。

オポチュニティの成功を祈ります。

マーズグローバルサーベイヤーの解像度

火星探査機スピリットの着陸地点を火星軌道周回中の別の探査機マーズグローバルサーベイヤーが撮影した画像をNASAが公開した。

MER image

Image credit: NASA/JPL/Cornell

左側の写真はスピリット自身が撮影した火星表面の画像を変形加工して、真上から見た映像のようにしたもの。右側はマーズグローバルサーベイヤーが火星周回軌道上から写した画像。

何枚かの写真をコンポジット法で合成処理しているように見える。ランダーとエアバッグが展開した大きさはマーズグローバルサーベイヤーのカメラではほぼ 6 x 7ピクセル、といったところか。

ローバー(探査車)の大きさは1.6 x 1.5 x 2.3 m。上の写真と比較すると、4ピクセル分くらいになるようにみえる。マーズグローバルサーベイヤーのカメラの解像度って、意外にいいじゃん。

あくまで想像だけど、12月31日の記事の追記のテクニックを使ったのだろう。しかしこれだけの解像度の写真が撮れるなら、1枚の写真だけでもかなりいけるんではないのか?マーズポーラーランダーが行方不明になったのは解せないなぁ>NASAとNIMA

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