2009年を振り返って
今年は日本の宇宙開発がいろいろな意味で大きな転換点となりました。ブログ記事を見ながら駆け足で振り返ってみると...
宇宙飛行士新三兄弟誕生
JAXAが10年ぶりに募集(前回はJAXAではなくNASDA)した日本人宇宙飛行士選抜がほぼ1年の時間をかけて終了。2月25日、油井亀美也さんと大西卓哉さんの2名の合格が発表されました。油井さんは航空自衛隊のパイロット、大西さんは全日空のパイロット、ということで、従来の人選とはかなり異なる結果に世間の注目が。
今回の選抜では初めて現場にテレビカメラが入り、その模様は3月8日にNHKスペシャル「宇宙飛行士はこうして生まれた」として放映されました。また今回の選抜では初めて「補欠合格」が設定され、9月8日、3人目の宇宙飛行士候補者として金井宣茂さんの合格が発表されました。三人はNASAやロシア宇宙庁の宇宙飛行士養成訓練に参加し、2年後に宇宙飛行士としての資格を認定される見込みです。
今回の選抜の特徴としては、管理人がこのブログで書いてきた連載記事「宇宙飛行士になるには」をかなりの受験生が読み込んでいて、新世代の人たちとも強いつながりができたこと。今回の二次選抜受験組はその人数にちなんで「49ers(フォーティーナイナーズ)」というのだそうです。
「宇宙飛行士になるには」の記事は@sorae_shunさんに http://sorae.jp/ の連載記事としても採用していただきました。
日本人の宇宙長期滞在
日本人として初めて、国際宇宙ステーションに若田宇宙飛行士が長期滞在しました。シャトルの外部燃料タンクのバルブの不調などでスケジュールが何度も延期となりましたが、ディスカバリー号で3月16日に打ち上げ、エンデバー号で7月31日に帰還、となりました。
また、日本人二人目の長期滞在となる野口聡一宇宙飛行士が、JAXAの宇宙飛行士としては初めて、日本人としては秋山さんに次いで二人目となるソユーズ宇宙船で12月21日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、23日から約5ヶ月の予定で今も国際宇宙ステーションに滞在しています。
日本人宇宙飛行士の今後の予定としては、来年3月に山崎直子宇宙飛行士がシャトルで、2011年には古川聡宇宙飛行士がソユーズで、2012年には星出彰彦宇宙飛行士が同じくソユーズで、国際宇宙ステーションを訪れる予定となっています。
日本の有人宇宙技術HTV
9月11日、JAXAが宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機を搭載したH-IIBロケット試験機の打ち上げに成功、18日には国際宇宙ステーションに無事ドッキングしました。暴露部に貨物を運ぶ暴露部と、大口径の与圧部から実験ラックを補給できる能力を持ち、日本が有人宇宙技術の一端を担う実力を持つことが実証された記念すべき第一歩となりました。8月31日の総選挙で政権交代したことともあいまって、国内で有人宇宙活動に関する議論が一気に活発化したのが印象的でした。HTVは11月2日、軌道離脱マヌーバの後に大気圏に突入しました。
世界天文年
今年は世界天文年ということで、各地で様々な行事催しがありましたが、空の上でも7月22日に皆既日食があり、全国各地でも部分日食が観測され、多くの人が空を見上げました。管理人は薄曇りの空から三日月上の太陽を瞬間眺めただけ... ^^;
後述するTwitterのおかげで、獅子座流星群や双子座流星群を見上げ、ネット上で盛り上がった一年でもありました。
宇宙開発戦略本部案とパブリックコメント
2月6日、政府の宇宙開発戦略本部専門調査会が開かれ、「2020年ごろにロボットによる月探査、25〜30年ごろに有人宇宙船を開発し、月面で飛行士とロボットが連携して探査する」とする計画案を提出。毛利衛日本科学未来館館長も日本の二足歩行ロボット技術を活用する案を独自に提出して話題となりました。
ノンフィクション・ライター松浦晋也さんのブログでは5月、宇宙基本計画へのパブリックコメントを、10月には宇宙活動法へのパブリックコメントを送ろう、という呼びかけがありました。
11月には行政刷新会議による事業仕分けが始まり、GXロケットの開発は中止、LNGエンジンの開発を継続とされました。
帰ってこい、はやぶさ!
探査機はやぶさの帰還予定日まであと165日。小惑星イトカワへのタッチダウンでわくわくしてからもう4年も経っています。満身創痍となって姿勢制御もなかなか大変ですが、運用チームの人たちは「真田運用」と異名をとる超絶テクニックを次々と繰り出して、カプセルを無事に地球に帰還させるべく、日夜がんばっています。
当ブログのはやぶさ関連記事はこちら:
2009.02.08
Hayabusa's returning home
2009.02.09
はやぶさ翻訳アゲイン
米国惑星協会のEmily Lakdawallaさんもはやぶさのことを記事にしてくれています:
2009.11.19
Hayabusa's still coming home: JAXA engineers come up with yet another creative solution
2009.12.17
Hayabusa on the home stretch
がんばれはやぶさ!
米国惑星協会
米国惑星協会といえば、看板ブロガーのEmily Lakdawallaさんが第二子Sanayaちゃんを4月に出産
されたのですが、その出産休暇中のゲストブロガーとしてご招待いただき、米国惑星協会のブログに招待記事を5本執筆しました。会員になってから苦節?16年、こんな形で協会に貢献することができたなんて、感涙。
Twitterにハマる
Twitterそのものは去年試していたのですが、そのまま放置状態。気を取り直して@5thstarのIDで再開したのが今年3月。最初の数ヶ月は@NASAのTime Lineを眺めながら、シャトルの打ち上げをNASA TVで眺めるくらいだったのが、@kazuhitoさん、@summerwindさんとTwitter宇宙呑みをしたあたりから爆発的につぶやき始め、いまではTwitter無しでは生きられない身体に...www
宇宙からのはじめてのつぶやきは5月13日。ハッブル望遠鏡の修理ミッションに参加したMike Massimino宇宙飛行士が
というメッセージを送ってきました。
JAXAでも10月29日に野口宇宙飛行士が、11月10日には山崎宇宙飛行士がTwitterを始められ、12月28日には野口宇宙飛行士が宇宙から初めて日本語で
@Astro_Soichi 日本の皆様へ、はるかISSからメリークリスマス!
というメッセージを届けてくれました。
Twitterで流れてくる情報をもとに国際宇宙ステーションを眺めたり、獅子座流星群や双子座流星群を見たり、宇宙ステーション内の写真を見ながら「食べるにぼし」を同定したり、年末にはTwitter宇宙クラスタの忘年会が開かれるまでに。ロサンゼルス郊外のNASA/JPLから送られてくる映像を見て、ウィルソン山天文台に迫る山火事の模様に気をもんでいたのも、Twitterの情報があればこそ、でした。
金星ミク
いつも独創的なアイデアで楽しいものづくりにチャレンジしては、その様子を動画にまとめて楽しませてくれるニコニコ技術部。その中でもネギ振りはちゅねミクを自作のロケットに搭載して打ち上げ試験を続けていたのが超電磁Pさんこと森岡澄夫さん。管理人の今年のエイプリルフールネタとして取り上げさせていただいたのだけど、現実はネタよりも奇なり? 9月には仲間たちと、米国ネバダ州のロケットコンテスト「XPRS」(eXtreme Performance Rocket Ships)に参加、はちゅねミクを載せた全長約2メートルのK-550ロケットを打ち上げるという快挙に。
その超電磁Pさんが、JAXAの金星探査機あかつきのメッセージキャンペーンに団体枠で初音ミクとはちゅねミクのイラストを載せよう! というキャンペーンを始められたので、管理人も英語のブログ記事を書いて応援することにしました。当初100名だった目標が数時間で達成され、次の1,000名も数日で達成、有志の手によってメッセージが英語、中国語、韓国語、フランス語、エスペラント語などに翻訳されていくにつれて署名の輪も国際的に広がり、31日現在、13,000人を超える署名が集まっています。
探査機に名前を乗せるキャンペーンの広がりがやや頭打ちの傾向を見せつつある中、これまで宇宙開発に興味を持たなかった層がこの金星ミクキャンペーンで今後どのように宇宙開発に親近感を抱くのか、今後の展開が注目されます。
時の流れのスピードがどうにかなってしまったんじゃないかと思えるほどにいろいろなことがあった2009年。
来年がみなさんにとってよい年でありますように。
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