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2009.03.08

なぜパイロットが選ばれたのか?

ホシボシヲあ~かいぶ:危うい有人宇宙計画への反応

シンポジウムに出席していたJAXAの立川敬二理事長が、今回選出された宇宙飛行士2名についての質疑応答で、日本が有人宇宙活動を目指すことと選出された二人の前職がパイロットであることは関係がないとする旨の発言をしたとのこと。
こういう発言が出るとかえって怪しいと思われても仕方ないと思うんですけど、どうなんですかね?

松浦さんのところとか野尻さんのところで議論というか妄想がちょっと暴走気味ですね。プロの物書きの松浦さんまでが推測だけで記事を一本書いちゃってるし。

日経BPネット:10年振りの宇宙飛行士選抜はパイロット2名 独自有人飛行への布石か

私自身、自分の記事

ある程度予感はありましたが、JAXAもずいぶん思い切りましたね。この方たちが育ててくれるであろう、さらに次の世代の宇宙飛行士に期待をかけておられるようにも見えます。
などと、陰謀論に燃料を投下するような発言をしてしまったものだから、その責任を取る意味で、私の知る範囲のことをここにまとめておきます。情報のソースがどこか、とかは、聞かんでください(w

私自身が知っている事実:

・パイロットや自衛隊関係者が宇宙飛行士選抜を受験したのは今回が初めてではない。11年前と14年前の2次選抜、3次選抜にもこれらの人たちはいて、いずれもいつ選抜されてもおかしくないような優秀な人たちだった。
・宇宙飛行士の選抜は選考委員会の委員によって審議される。委員にはJAXA理事長、理事、本部長、部長などのほか、宇宙航空医学の医師、精神医学や心理学の専門家、現役宇宙飛行士、元宇宙飛行士、宇宙や科学技術に造詣の深い外部有識者など、多数の人間がいる。JAXAだけが独走することはできないし、政府機関以外の関係者も多い。
・最終候補者に対してはNASAとJAXAの宇宙飛行士も面接を行う。

直接の体験ではないが信頼できる筋からの情報:

・今回の最終選抜に残った10名は、医者、技術者、パイロット、自衛隊、海上保安庁など。いずれもいつ選ばれてもおかしくない優秀な人ばかり。
・今回はNASAの宇宙飛行士選抜と同じNASA側の面接を一人あたり1時間ほど受けた。他にもパイロット訓練施設やヒューストンの宇宙飛行士訓練施設で実際の訓練に基づく実技試験が課された。
・今回もっとも重視されたのは閉鎖環境における心理学的特性である。
・今回の選抜試験の試験項目には現役の日本人宇宙飛行士が自分たちの経験に基づく様々な提案を加え、前回の試験と比較すると大幅な改良が加えられている。
・着衣で重りをつけて靴を履いての3010分間立ち泳ぎが今回から追加された。海猿〜

報道や書籍などで周知の事実:

・毛利さんたち初代日本人宇宙飛行士は、スペースシャトル内で科学実験を行うペイロードスペシャリストとして採用された。
・NASAのミッションスペシャリストとして採用された宇宙飛行士にとっては、ペイロードスペシャリストは自分たちの宇宙行きの切符をうばってしまうライバル的存在であり、ペイロードスペシャリストのことを「お客さん」と呼ぶ。
・NASAの宇宙飛行士には海軍や空軍のエリートテストパイロットが多い。次いで医者や科学者、技術者など。
・NASDAは若田さん、野口さんをミッションスペシャリスト候補者として採用し、NASAのミッションスペシャリスト候補者訓練コースに(費用を払って)送り込んだ。その後、毛利、土井もミッションスペシャリストの資格を取得。
・NASDAは1998年の選抜では「日本で訓練を行う宇宙飛行士」として古川、星出、角野(山崎)を採用したが、2003年のコロンビア号の事故を受けて国際宇宙ステーションのスケジュールが延期になったことに伴い、ロシアとNASAの宇宙飛行士訓練コースに参加し、資格を取得した。

信頼できる筋からの情報と報道などから得られる情報を過去2回の受験体験と照らし合わせて私なりに推測すること:

・今回の宇宙飛行士選抜はNASAが数年ぶりに復活させた宇宙飛行士募集にあわせて行うことをJAXAの立川理事長が2007年末〜2008年初頭に決断した。その主たる理由は宇宙飛行士の訓練に必要な予算の節約である。
Kazuさんのブログにある東京シンポジウム 「宇宙と人間」−未来を拓く人類の活動領域の拡大−で立川理事長が「(日本が独自の有人宇宙活動を目指すことと二人がパイロットである事実とは)関係ない」と断言していた、というのは、まさしく理事長の本音であり、誤解されるのは片腹痛いこととお察しします。
・NASDA/JAXAは、宇宙飛行士選抜を行うたびごとに、どのような人材をとるのが適切なのかを現場レベルで真剣に悩んでいます。今回の選抜では、若田宇宙飛行士のこれまでのフライトや海底での長期滞在の訓練で得られた知見などが大幅に適用されているように見受けられます。特にロボットアームの操作に必要な判断能力と反射神経、閉鎖環境に外国の人間と長期滞在する際のリーダーシップとフォロワーシップ、シャトルが退役した後のソユーズなどでの宇宙への往復に伴う肉体的にも心理的にも過酷な訓練に耐えていけるか、などが重要視されたようです。もちろん成人病でないことや精神医学的にみて健康であることは基本中の基本です。

現場レベルに近い立場から今回の妄想劇を見ていると、相当に滑稽です。今回、宇宙開発戦略本部が有人宇宙開発構想を専門調査会に提案したのは全く独立の動きと思わざるを得ない。

でも、事実がどうであったにせよ、偶然が重なって世間が誤解あるいは期待したのであれば、それはそれで甚大な結果と言えます。また、この偶然をうまく利用しようとする動きがもしあるのであれば、それはそれで警戒するべきです。

今回、NHKのディレクターが選抜の模様を逐一取材したのも、全く偶然のきっかけです。しかしそのおかげで、宇宙飛行士選抜という、これまでは秘密のベールに覆われてきたプロセスの一部始終がNHKのカメラに収録されたのも、事実です。

みなさん、陰謀論で心の眼に色眼鏡をかけてしまうことなく、今夜9時からのNHKスペシャルをぜひご覧ください。番組で紹介されるのはそのごく一部ですが、現実が記録された生テープがNHKの倉庫の中に眠っています。

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Comments

初めまして、葉月野と申します。
拙ブログをご覧いただきましてありがとうございます。ここ数日の宇宙開発戦略本部のニュースで色々とネットを検索し、こちらのブログにたどり着きました。
その際、前ふたつの記事を拝見し、それにそのほかのサイトやブログなどで得た情報をもとに、自分の見解をブログ記事として書いたのですが、またこちらの「なぜパイロットが選ばれたのか?」という記事を読みまして、自分のブログ記事はちょっと先走りすぎるところがあったと反省しております。
自分ではそれなりに情報は拾ったつもりでしたが、やはりまだまだ知らないことばかりです・・・

葉月野さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

若田さんの宇宙ステーション長期滞在も控え、宇宙関連の議連の動きも活発で、経済産業省も文部科学省に対抗した独自の動きがあるなかで、それぞれの立場の人間がそれぞれの立場でいっせいに動き始めたなぁ、というのが、私の個人的感想です。JAXAの立川理事長もここまでの騒ぎになるとは思わず、当惑しているでしょう。

しかしISASの中でも野尻さんや松浦さんに対して情報を恣意的に選択してリークしているように見える動きがあることもずいぶん前から気になっています。もし本当に懸念があるなら、リークという形ではなく、ご本人が表に出てきてくれると、応援もしやすいのですが。

これからもよろしくお願いします。

補足です。

今回の騒ぎの中で惑星探査の予算が削られる可能性がある、というのは、直接の裏づけはないにせよ、かなり蓋然性の高そうな話だと思っています。

しかしそれは、既存の組織と人員と体制と予算をどうやって守るか、という話に矮小化させるのではなく、惑星探査に関する応援団、シンクタンク、ピアレビューア、アドバイザリコミッティ、パトロン、など、さまざまな応援団を作って態勢を立て直していく、息の長い活動が必要になるとも考えています。

広い視野と歴史観が必要になりますね。

5thstar管理人さん:

拙ブログへのコメントと、こちらでの返信ありがとうございます。

>既存の組織と人員と体制と予算をどうやって守るか、という話に矮小化させるのではなく(略)

そうですね、今回の騒ぎとは別に、体制の脆弱性は以前から存在しているわけですし、今になって慌てないためにも、早い段階から(せめてJAXA設立あたりからでも)、内外の協力者を固めておく必要はあったんではないかなぁと思っております。
特に予算については前からジリ貧だったわけだし、もっと危機感を持っていてもよかったんじゃないかなぁと。自分なら民間のメーカーともっとしっかりパイプを構築しておくとか考えますね。

情報のリークについては、おかげで自分のような外部の一般人にも動向が分かるという点ではありがたいんですがw、ただそれだけにそういった情報にもっと慎重にならないといけないですよね。特に自分は科学探査や天文活動の方に興味が惹かれてしまうので、ISAS系の方々の意見に傾きがちなんですがw

ともかくも、宇宙ファンだからと言ってそのまま鵜呑みにしちゃいかんという点で、今回は教訓になりました。

これからもちょくちょく5thstar管理人さんのブログを参考にさせていただくことがあると思いますが、よろしくおねがいします。

はじめまして。いつも真剣に拝見させて頂いております。今回初めてコメントさせて頂きます。

NHKスペシャルを見ました。まず、パイロットが選ばれたことと、今後の日本の宇宙事業の展望との関係についてですが、厳正な評価体制を見れば、それがいかにJAXAの意図で正確に行われたが良く分かりました。

ただ、その意図とは、「コマンダー」の一言につきると感じました。そのコマンダーに必要と考えられる資質に合致するのが、今回はパイロットであったお二人、ということだと思います。

さて、今後の募集について非常に気になるところです。

「今回の宇宙飛行士選抜はNASAが数年ぶりに復活させた宇宙飛行士募集にあわせて行うことをJAXAの立川理事長が2007年末〜2008年初頭に決断した。その主たる理由は宇宙飛行士の訓練に必要な予算の節約である」
「NASAは2年に1回ぐらい募集している。来年は無理だが、時期を合わせて一緒に訓練してもらう方が安上がりだ」

今夜の番組でも感じたのですが、宇宙飛行士募集は、様々な困難と、JAXAの方々の熱いビジョンとの相克によって形作られていくように思います。5thstar管理人さんは、今後の宇宙飛行士募集機会についてどのようにお考えでしょうか。来年なのか、5年後なのか、10年後なのか。

チャレンジした多くの方々が、最も気にされていることであると思います。

図々しく、かつ軽々しい質問で恐縮ですが、ご指南頂ければ幸いです。


葉月野さん、了解です。これからもよろしくお願いします。

kotaさんこんにちは。コメントありがとうございます。

「コマンダーの資質」

これが今回の募集のキーワードだったんですね。私自身、いままでいろいろ「???」と思っていたのが、冒頭の長谷川義幸さんのお言葉でストンと納得しました。

そういえば私も10年前の面接で「コマンダーをやれと言われたらどうするか」という質問をされたことを思い出しました。あの時、JAXAが求める答えをしゃべっていたら、今頃、人生変わっていたのかなぁ。

>5thstar管理人さんは、今後の宇宙飛行士募集機会についてどのようにお考えでしょうか。来年なのか、5年後なのか、10年後なのか。

こればかりは残念ながら誰にもわかりません。

まず、国際宇宙ステーションの今後の運用スケジュールがあまりにも不明確です。スペースシャトルはあと1年で退役するし、NASAは国際宇宙ステーションの運用を2015年で止めたがっています。

ステーションの運用が続いて、NASAが半分ほど手を引くと、今度は日本人宇宙飛行士の数が急に足りなくなります。この場合、あと4,5年で次の募集があるでしょう。

その先に予定されるNASAの月探査にJAXAがどのように参加するのかによっても必要な人員が変わってきます。

宇宙ステーションの運用が2015年で終わってしまうと、日本人宇宙飛行士の出番はほぼ無くなってしまいます。

その場合、

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date3&k=2009030600703

の中味が本当なら、次の募集は2020年までないかもしれません。

アメリカの動向、文部科学省と宇宙開発戦略本部の動向、ロシアの経済状況、中国、インドの計画、などなど、いろいろな要素が絡んでいます。

NHKスペシャルを見ようとブログに書いてから
いろいろ経由して、こちらに辿り着きました。
これから楽しみに読ませていただきます。
よろしくお願いします。

vivehodieさんこんにちは。よろしくです。

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