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2009.01.13

チーム・バチスタ

木曜のNHKの朝のニュースで「死因不明社会」という本を書いた著者へのインタビューをやっていた。知らない人物だったのだけれど、インタビューからうかがえる人柄がユニークだったので、パソコンを広げてAmazonで検索してみた。海堂尊という人物らしい。代表作品が「チーム・バチスタの栄光」? どこかで聞いたことがあるな。そういえばテレビドラマ化されてたっけ。テレビドラマになるくらいだから、どうせたいした本ではなさそうだけれど、でもNHKのインタビューに応じる著者の誠実そうな人柄はなにかが気になる。

ということで、Amazonで「チーム・バチスタの栄光」の文庫本上下2巻をぽちっと注文したら、金曜の夜、届いた。

そしたらこれが面白いのなんのって。いやはや、とんでもない新人があらわれていたものですね。JAXAの宇宙飛行士の一般常識問題を受験してたら、出題されてたかも。わたし最近、一般常識ないです(むかしからか ^^;)

桜宮市という架空の街の東城大学医学部付属病院で、医局内の出世抗争からひとり離れて不定愁訴外来をひっそりと受け持つ田口公平は、ある日、院長の高階権太から特命を受ける。心臓外科の世界的権威、桐生恭一が率いる難易度の高い心臓形成手術、通称バチスタ手術の専門家集団「チーム・バチスタ」で起きている謎の術中死の原因を調べてほしいという依頼。医療ミスか、単なる偶然か、それとも故意によるものか。厚生労働省大臣官房秘書課付技官の白鳥圭輔との奇妙な調査が始まる...

第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した作者のデビュー作。

ホームズ役の白鳥とワトソン役の田口の役割分担は推理小説としては定番の範疇と思えるけれども、著者自身が現役の医師であるだけに、田口、高階、桐生など、登場人物の医師のキャラクター設定や心理描写や医局内の政治抗争や厚生労働省が抱える問題などの描写がすばらしい。しかも文章のテンポが歯切れが良くて爆笑もののペーソスがちりばめられていて、重苦しいテーマなのにまったく肩が凝らずに読み進むことができて、それでいて現代日本の医療が抱える巨大な矛盾が読者の心にしっかりと刻み込まれる仕掛けになっている。この著者、ただものではない。

作品は田口が関係者からインタビューを行い、手術に立ち会う第1部「ネガ」、白鳥が登場して田口や周囲の人間をひっかきまわしていく第2部「ポジ」、後日談ともいえる第3部「ホログラフ」から構成される。個人的好みは、田口がその人柄を活かして関係者の観察をする第1部。この歳になってくると、人間観察というものがどういうものかがだんだんわかるようになってくるから、田口が病院内の関係者をどのように観察していくかの描写がまさに自分自身の経験ともだぶってじつに興味深い。

管理人はかつて、医者と話をするのが大の苦手だった。たまたまあたった医師との相性が悪かったせいもあるのだろうけど、権威主義的で人の話を聞かずに論理的な分析をすることもなしに自らの話を押し付けてくる医師との出会いがトラウマのように医師のイメージを支配していた時期が長く続いていた。医者とのつきあい方の塩梅がわかるようになってきたのは、宇宙飛行士受験という経験が大きく影響している。選抜で外部の病院から委託される医師と出会って「一流の医者というものはこういう人たちのことをいうのか」と、目からウロコが剥がれるような経験をした。受験仲間の中にも医者がいたので、医者の世界の裏側の話もぽつぽつと聞くようになった。この小説に出てくるような医師たちと、人生の早い段階で出会っていたら、管理人もまた、今とは違った人生を目指していたのかも。

宇宙飛行士受験、という観点から読んでみても、この小説は実に興味深い。医者(著者)がいろんな人間をどこまで深く観察しているのか、その片鱗をうかがい知ることができる。二次選抜で心理面接や精神面接を受けた時のことを振り返ると、「自分の性格は選抜側にはここまでばればれだったのか」と赤面してしまう。今にして思えば、心理面接は「パッシブ・フェーズ」、精神面接は「アクティブ・フェーズ」(詳細は小説を参照)だったのか。なるほどね。

社会問題を正面から声高に糾弾するでもなく、権力闘争に明け暮れるでもなく、一歩離れた視点から物事の本質をコミカルにしかし着実にえぐり出す著者の生き様に親近感を覚えて、年齢を確認したら、同世代だった。やっぱりね。この感覚は、むかし上の世代から「シラケ世代」とレッテルを貼られたものたちにしかわからないものかも。

滑稽なのが、厚生省官僚の白鳥圭輔の素っ頓狂なキャラ設定。現実にはとても存在し得ないキャラのように思われがちだけど、小説を読んでいる間中、最近出会った某省の出向者の顔が浮かんできて困った。いるんですねやっぱり。

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Comments

私も海堂尊好きです。
今怒涛のように田口・白鳥シリーズを出してますよ。文庫化をひたすら待つ日々です。ちなみに、1次試験は彼ではなく、漫画(鳥山明とか・・・)でした。

こんにちは。そうですね。新作がどんどん出ているようなので、楽しみです。

しかし鳥山明とは、通ですね。

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