窓
本日のBGM - 谷山 浩子「窓」 on YouTube
♪授業を独りで抜け出して
空き部屋の窓から空を見た
幾億年もの時の彼方
空翔る船を見た
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高校の同期の同窓会があったので、出かけてきた。この記事に書いたキャッチャーとも数十年ぶりに再会。当時のまんまの風貌の人もいれば、自己紹介を聞いても信じられないほど面影が残っていない人もいて、面白い。自分たちが学生だった頃に今の自分たちの年代の人間を見ると、雲の上のように遠くて気難しくて威厳のある存在に見えたのに、我々がいざその年齢に達してみると、どうもあの頃から精神年齢があまり変わってないような気がしてしょうがない。これもこの世代の特徴なのか。
天文同好会の会長を務めていた頃、観測会と称して学校に泊まりこんで、朝、誰もいない教室の窓から朝焼けの空が明けていくのを眺めているのが好きだった。
同期の中には小さな会社の社長になったのもいれば、業界トップの巨大企業の部長をやっているもの、大臣官房参事官になったもの、親の病院をついで院長になったもの、ペンネームよりもペンネームっぽい本名を持ちながら平凡なペンネームで有名なSF作家になったものなどじつに様々。などという自分自身も、宇宙飛行士にはなりそこなったけれど、教室の窓の外の世界をここまでいろいろと渡り歩いてきて、世界中のありとあらゆる現場を自分の目に焼き付けることになるなんて、高校生の頃は想像もできなかった。
なんて濃い時代とメンツだろうか。
雪。受験の季節。30年前の今頃、大学受験のために上京した折、知人の紹介で深浦加奈子さんと初めてお会いした。大学受験の問題集を見せてほしいと頼まれたので、喫茶店でコーヒーを飲みながらしばらく話をしたのだが、女性と二人きりになる機会があまりなかった年頃だったので、ずいぶんとどぎまぎしたのを覚えている。その頃の記憶に残っている彼女の素朴で真面目な姿と、その後の個性派大女優としての存在感とが、どうにもつながらなくて不思議な感覚だ。その彼女も昨年病魔に倒れ、鬼籍に入った。ご冥福をお祈りします。
自分の身近にいる人間がある日突然、有名人になる感覚、あるいは、はるか彼方にいたはずの有名人といつの間にか普通に話をする存在になっている感覚。テレビのニュース画面を見ても、「ああ、あの街は行ったことがある」という感覚。これが自分自身にとっての「窓の外の世界」なのだろうか。夢が現実の世界と出会ってしまった、というのか。
♪いくつも街を歩くうちに
いつか外の世界は狭くなる
教室の窓がもう見えない
夢の行き場がどこにもない
「夢の行き場」は現実の世界で置き換わってしまったけれど、その現実の世界がいかに複雑で繊細で虹色に輝いている人類の営みの集積であるのかを、語り継いでいきたい。
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