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2009.01.30

チャレンジャー事故から23年

Long Tail World経由

ジョン・デンバーは宇宙へ行くつもりだったのか。

一昨日はチャレンジャー爆発事故24回忌。この年の4月にはチェルノブイリ事故もあった。科学技術のイメージが大きく揺らいだ年。当時中学3年生だった山崎宇宙飛行士が「いつか宇宙に行きたい」と心に決めた年でもある。

雲の中から現れるシャトルが美しい。ジョン・デンバーはクリスタ・マコーリフとファイナリスト仲間だったのか。マイク・ミュレインが著書「ライディング・ロケット」で男女の美しい友情について追悼したジュディ・レズニックもこのチャレンジャーに乗っていた。

管理人自身はこの年の4月に渡米して、7月には上の映像でジョン・デンバーがギターを弾くロッキー山中の街アスペンを訪れたことがある。当時はアスペンとジョン・デンバーとクリスタ・マコーリフとNASAの関係など知る由もなかったけれど、今振り返ると、不思議な因縁を感じる。

万能伐採機

革新的発明と製品情報:万能伐採機
AFM Products

ち、地球温暖化...

2009.01.28

malloc()

MacOS X 10.4を使うようになってしばらくたつのだけど、なんだかメモリやディスクが断片化してきたのか、動作が時々固まるようになってしまった。アクティビティモニタでメモリの空きを確認すると目一杯だ。ちゃんと確認した訳ではないけれど、最近、Firefoxの動作も不審だし、WordやExcelを終了してもメモリを解放しないお行儀の悪い動きをする。ことえりの動きもすっかり悪くなってしまった。いっそのことディスクを初期化してクリーンインストールをしてみたいという衝動に駆られるけれど、仕事も忙しいしなかなかそこまで踏み切ることができない。

などと悩みながら

【コラム】OS X ハッキング! (295) メモリ激安の今、敢えて仮想メモリに思いを馳せる
【コラム】OS X ハッキング! (297) メモリを解放せよ -- スワップ防止対策補遺

をつらつら読んでいると、「iFreeMem」というシェアウェアに目が止まった。メモリをわざと大量に消費し、他のアプリケーションが確保しているキャッシュを強制的に解放させ、取り込んでおいてから解放することで空きメモリを確保してくれるツールだという。ブルートフォースな手段だけど手っ取り早い。

ということで早速ダウンロードして使ってみた。なるほど、面白いようにメモリが解放される。ただ、ディスクも使用率90%を超えているので、メモリだけ解放しても快適という訳ではないけれど。

などといっているうちに30日間のお試し期間も過ぎたので、クレジットカードで購入するかどうかしばらく迷っていた。

今日ふと「まてよ、メモリの確保と解放だけでいいならmalloc()とfree()で十分じゃん」と思いいたったので、早速試してみた。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

int
main( int argc, char **argv )
{
 char *s;
 int i, k;
 int num = 1000000000;

 s =(char *) malloc( sizeof(char)*num );

 k = num / 10;

 for ( i=0; i < num; i++) {
 if( i%k == 0 ) {
   fprintf(stdout, "%d", (int)(i/k));
   fflush(stdout);
  }
  s[i] = 'a';
 }
 fprintf(stdout, "¥n");

 free(s);
 exit(0);
}

これを memclean.c として

% cc -o memclean memclean.c

で、memcleanバイナリをキックするスクリプトを

#!/bin/sh
$HOME/bin/memclean

として memclean.command としてデスクトップに置いておく。

Memcleancommand

% chmod +x memclean.command

これをダブルクリックすると、10秒ほどかけてメモリを1GBほど確保してから解放して終了する。

Memclean

できた。Hello Worldなみの簡単プログラムだけど、デスクトップの片隅をダブルクリックするだけで簡単にメモリ解放できる。思わずうれしくなってポチポチッとクリックしまくる。構想からここまで正味15分ほど。シェアウェアいらないじゃん。Kernighan&Ritchie万歳! マッキン万歳!

*****

で、ふと我に返って上のソースコードを見てみた。クロック2GHzのCPUを使ってるのだから、あたりまえっちゃぁあたりまえなのだけれど、我々はスーパーコンピューターを毎日ごく当たり前に使う時代に生きているのだなぁ。それにしてはなんと大量のCPUサイクルを世界中で無駄に浪費していることか。ご先祖様に申し訳が立たぬ。ゲイツ君もジョブズもその点では同罪か。

小学校3年生の頃、彗星ハンターの関勉さんの著作を読んで彗星の軌道計算に憧れ、6年生の頃、当時売り出されたばかりの関数電卓で三角関数を独学で覚えて近所の電気店の店先で立ち読みならぬ立ち計算で一生懸命、軌道計算をしようとしていたことがある。あとで聞いたところでは、店員には学校の宿題をやっているものと勘違いされて大目に見てもらっていたらしい。大学に入ってからプログラム電卓を買って、やっと自分で書いたプログラムを保存することができる環境を手に入れた。その頃から比べると、計算能力は実に1億倍近くも向上したことになる、はず、なのだけど。

我にケータイアプリの開発環境を与えたまえ。さすればケータイ一台で月面にも到達してみせよう。すくなくとも計算上では、ね。

少年ジャンプのヒーロー成長ものの漫画では、なぜかいつも主人公よりちょっとだけ強いライバルが出現して、主人公が切磋琢磨して成長してライバルに打ち勝つ。そのライバルと意気投合して、次にさらにちょっと強いライバルを倒す。

あのころは、最先端の科学技術が、ちょっと手を伸ばせば届くところにあった。

アポロ計画とは、つまりそういう時代だった。計算上では。

2009.01.25

1917年にライデンシュタットで生まれていたら

本日のBGM - Jean-Jacques Goldman
 "Né en 17 à Leidenstadt"
 1917年にライデンシュタットで生まれていたら

♪Et si j'étais né en 17 à Leidenstadt
  Sur les ruines d'un champ de bataille
    Aurais-je été meilleur ou pire que ce gens
    Si j'avais été allemand?

 もしも1917年にライデンシュタットで生まれていたなら
  もしもあの戦場の廃墟の中だったとしたら
   僕はあの連中よりも善良だったのか悪徳だったのか
    僕がもしもドイツ人だったとしたら?

フランスで人気のあるパリ生まれのユダヤ人歌手Jean-Jacques Goldmanの1990年のヒット曲。歌詞はこの後、北アイルランド生まれのMichael Jonesと南アフリカ出身のCarole Fredericksがメドレーで歌うそれぞれの地域の状況へと続く。

*****

古くから京都に住んでいる人が「あん時の戦争では...」と語るとき、それは第二次世界大戦ではなくて、600年以上も前の応仁の乱のことを指すのだよ、と、酒の席の笑い話で語られることがある。京都の人にとってみれば、京都を文字通り二分して何年にもわたって町を焼き尽くした戦乱は、600年後の子孫にまで語り継がれるほど悲惨なものであったということでもある。「あん時いらい京都に戦争はあらしまへん」と豪語する人に140年前の「鳥羽伏見の戦いは?」と茶化すと、「あそこ(京都市南区と京都市伏見区)は京都やおまへん」と答えるのだと言う。ほとんど「ミシュラン京都編にぶぶ漬けが掲載されるか」級の笑い話だが、京都の人の繊細なメンタリティーと内に秘めたるプライドを都市伝説的に喝破しているとも言える。

関東の住人から見れば、京都、大阪、神戸、奈良、は、高速道路網やJR私鉄モノレールなどのインフラもよく整備された巨大経済圏に見えるし実際そうなのだけれど、JR西日本の三都物語という言葉に象徴されるように、これらの各都市の住民はおたがいそれぞれの文化やアイデンティティを内に秘めて「あそことはいっしょくたにすんな!」という強いプライドを持っているのだという。神戸や尼崎の町中だけをみても、阪急沿線とJR沿線と阪神沿線にはそれぞれの住民に相容れない葛藤があるのだとも聞く。このあたりの人間模様はNHKの朝ドラ『ふたりっ子』でもマナカナ姉妹がうまく演じていた。逆に関東から見ればこのあたりの微細構造は見えてこないし、理解することが極めて難しい。思わず「そんなのどうだってええやん。経済発展のためにもお互いなかようしなはれ」と語りかけたくもなってくる。

日本のロケットが月へ飛び、ジャンボ旅客機が世界の隅々まで人を運び、GoogleやYouTubeが世界各地のありとあらゆる文化や情報を繋ぎ、人間を月へ送りこんだコンピューターよりも処理能力の高い携帯電話で地球の裏側からでも家族や友人と瞬時に連絡がつく時代が来ても、地域に根付いた暮らしを続ける人々の意識は容易には変わりそうもない。

世界の航空機運航の一日

松浦さんのこの記事を読むと、松浦さんがインタビューをしているであろう人たちの顔がなんとなく浮かんでくる。プライドとこだわりは優れた仕事を遂行するためのモチベーションには必須だが、時として社会全体を閉塞に導きうる。

もしもJR東海の社長が「700系のぞみは今日も無事故で一人のけが人を出すこともなく安全運行を行うことができました。JRは事故を起こすと大きくメディアに報道される傾向があるが、成功した時にも一面に出してもらって閉塞感をうち破るようにしてもらえればと思う」などという発言をしようものなら、それを聞いた人はどのように感じるのか、JAXAやISASの人びとには、今一度、考えてほしいと思う。

♪Et qu'on nous épargne à toi et moi
  si possible très longtemps
   D'avoir à choisir un camp

 もしもできることなら
  どちらかの陣営に与しなければならないような事態は
   この先ずっと起きないでほしい

2009.01.24

本日のBGM - 谷山 浩子「窓」 on YouTube

♪授業を独りで抜け出して
  空き部屋の窓から空を見た
   幾億年もの時の彼方
    空翔る船を見た

*****

高校の同期の同窓会があったので、出かけてきた。この記事に書いたキャッチャーとも数十年ぶりに再会。当時のまんまの風貌の人もいれば、自己紹介を聞いても信じられないほど面影が残っていない人もいて、面白い。自分たちが学生だった頃に今の自分たちの年代の人間を見ると、雲の上のように遠くて気難しくて威厳のある存在に見えたのに、我々がいざその年齢に達してみると、どうもあの頃から精神年齢があまり変わってないような気がしてしょうがない。これもこの世代の特徴なのか。

天文同好会の会長を務めていた頃、観測会と称して学校に泊まりこんで、朝、誰もいない教室の窓から朝焼けの空が明けていくのを眺めているのが好きだった。

同期の中には小さな会社の社長になったのもいれば、業界トップの巨大企業の部長をやっているもの、大臣官房参事官になったもの、親の病院をついで院長になったもの、ペンネームよりもペンネームっぽい本名を持ちながら平凡なペンネームで有名なSF作家になったものなどじつに様々。などという自分自身も、宇宙飛行士にはなりそこなったけれど、教室の窓の外の世界をここまでいろいろと渡り歩いてきて、世界中のありとあらゆる現場を自分の目に焼き付けることになるなんて、高校生の頃は想像もできなかった。

なんて濃い時代とメンツだろうか。

雪。受験の季節。30年前の今頃、大学受験のために上京した折、知人の紹介で深浦加奈子さんと初めてお会いした。大学受験の問題集を見せてほしいと頼まれたので、喫茶店でコーヒーを飲みながらしばらく話をしたのだが、女性と二人きりになる機会があまりなかった年頃だったので、ずいぶんとどぎまぎしたのを覚えている。その頃の記憶に残っている彼女の素朴で真面目な姿と、その後の個性派大女優としての存在感とが、どうにもつながらなくて不思議な感覚だ。その彼女も昨年病魔に倒れ、鬼籍に入った。ご冥福をお祈りします。

自分の身近にいる人間がある日突然、有名人になる感覚、あるいは、はるか彼方にいたはずの有名人といつの間にか普通に話をする存在になっている感覚。テレビのニュース画面を見ても、「ああ、あの街は行ったことがある」という感覚。これが自分自身にとっての「窓の外の世界」なのだろうか。夢が現実の世界と出会ってしまった、というのか。

♪いくつも街を歩くうちに
  いつか外の世界は狭くなる
   教室の窓がもう見えない
    夢の行き場がどこにもない

「夢の行き場」は現実の世界で置き換わってしまったけれど、その現実の世界がいかに複雑で繊細で虹色に輝いている人類の営みの集積であるのかを、語り継いでいきたい。

2009.01.20

ビーチアニマル

こ、これはすごい。

テオ・ヤンセンさんというオランダのアーティストによる、動く造形だそうです。詳しくはこちら

オランダの海岸で動いているところをこの眼で見てみたい。

うーむ。バイラルに加担してしまった。思うつぼじゃん。

2009.01.19

閉鎖環境試験

宇宙兄弟第4巻を読んだ。取材に応じたのが32話のあたりだったので、インタビューの結果が反映されるのは34話あたりからかな、と思ったら、やはり34話に「戦友」という言葉が(w

37話でエウロパの海の生物の話題や天文の話題でファイナリスト達が盛り上がる場面なんて、まさにまんまですね。うまく取り込んでいただいてありがとうございます。ねぇ、Nセンセ? (^^;)

ロケットのある風景

ロケットのある風景
何年かぶりに図書館に立ち寄ってみた。清掃のために水を抜かれた池にライトアップされたロケットが映える。

2009.01.14

GSM対応携帯

auの前身、DDIとIDOがいち早く第2.5世代ケータイのcdmaOneを導入してから10年。国内も国外もケータイ事情は大きく変わったけれど、世界の通話エリアの趨勢はいまだ第二世代のGSM。STS-114の打ち上げを見に行ったときは、GSM対応ケータイN901iGをレンタルするだけのためにDoCoMoと契約したものだったけれど、Softbankに遅れること2年、DoCoMoに遅れること1年、auもようやくGSM対応ケータイを昨年になって投入した。

以来、auにとってのGSM対応初期モデルを見送って第2世代の機種を買うべきか、ずっと逡巡してきたのだけれど、ごんざぶろうさんのこの記事を見て、やっと初期モデルのW62Sを買うことに決めた。

W62s

決めたら速攻で近くのauショップに出かけてみたものの、W62Sはそのショップではもはや取り扱い中止。あわててケータイショップのはしごをして、3軒目でようやく最後の一台をゲット。

ワンセグがついてないモデルだけど、かえってシンプルで使いやすい。メニューの構造が一部、それまで使っていたW32Hとひっくり返ったりしていて、鏡の中の世界に迷い込んだようになるけれど、メーカーが日立からソニーエリクソンに変わったわりには意外に手になじむ。

普段一番良く使うアプリであるフルブラウザ(PCサイトビューアー)、Operaのバージョンは8.60。Gmailにアクセスしても従来通り使えるのでほっとする、のもつかの間、Googleリーダーがメモリ不足となって開けない。ううむ

[1/24 追記 モバイル向けGoogleリーダーのサイト http://www.google.co.jp/reader/m/view/を開いたら、ちゃんと見えました m(__)m]

と思ったら、なぜかEZwebのブラウザ経由だとGoogleリーダーも見られる。W32HではEZwebだと文字化けしてだめで、Operaだとちゃんと見ることができていたので、逆転してしまった

それにしてもasahi.comやYomiuri ONLINEやlivedoor.comが、ケータイフルブザウザからの閲覧を拒否したりモバイルトップページに強制リダイレクトしたりする設定にしてしまったのはなぜだろう? ケータイの読者に喧嘩を売ってるようにしか見えない。

とりあえずやっとこれで突然の海外出張でもあわてなくてすむ環境になった...かな? 昔日の勢いがなくなったとはいえ、田舎に住んでいても広範囲にエリアをカバーしてくれるauさんにはいつも感謝しています。やっぱりモバイルはユビキタスじゃなきゃね。

2009.01.13

チーム・バチスタ

木曜のNHKの朝のニュースで「死因不明社会」という本を書いた著者へのインタビューをやっていた。知らない人物だったのだけれど、インタビューからうかがえる人柄がユニークだったので、パソコンを広げてAmazonで検索してみた。海堂尊という人物らしい。代表作品が「チーム・バチスタの栄光」? どこかで聞いたことがあるな。そういえばテレビドラマ化されてたっけ。テレビドラマになるくらいだから、どうせたいした本ではなさそうだけれど、でもNHKのインタビューに応じる著者の誠実そうな人柄はなにかが気になる。

ということで、Amazonで「チーム・バチスタの栄光」の文庫本上下2巻をぽちっと注文したら、金曜の夜、届いた。

そしたらこれが面白いのなんのって。いやはや、とんでもない新人があらわれていたものですね。JAXAの宇宙飛行士の一般常識問題を受験してたら、出題されてたかも。わたし最近、一般常識ないです(むかしからか ^^;)

桜宮市という架空の街の東城大学医学部付属病院で、医局内の出世抗争からひとり離れて不定愁訴外来をひっそりと受け持つ田口公平は、ある日、院長の高階権太から特命を受ける。心臓外科の世界的権威、桐生恭一が率いる難易度の高い心臓形成手術、通称バチスタ手術の専門家集団「チーム・バチスタ」で起きている謎の術中死の原因を調べてほしいという依頼。医療ミスか、単なる偶然か、それとも故意によるものか。厚生労働省大臣官房秘書課付技官の白鳥圭輔との奇妙な調査が始まる...

第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した作者のデビュー作。

ホームズ役の白鳥とワトソン役の田口の役割分担は推理小説としては定番の範疇と思えるけれども、著者自身が現役の医師であるだけに、田口、高階、桐生など、登場人物の医師のキャラクター設定や心理描写や医局内の政治抗争や厚生労働省が抱える問題などの描写がすばらしい。しかも文章のテンポが歯切れが良くて爆笑もののペーソスがちりばめられていて、重苦しいテーマなのにまったく肩が凝らずに読み進むことができて、それでいて現代日本の医療が抱える巨大な矛盾が読者の心にしっかりと刻み込まれる仕掛けになっている。この著者、ただものではない。

作品は田口が関係者からインタビューを行い、手術に立ち会う第1部「ネガ」、白鳥が登場して田口や周囲の人間をひっかきまわしていく第2部「ポジ」、後日談ともいえる第3部「ホログラフ」から構成される。個人的好みは、田口がその人柄を活かして関係者の観察をする第1部。この歳になってくると、人間観察というものがどういうものかがだんだんわかるようになってくるから、田口が病院内の関係者をどのように観察していくかの描写がまさに自分自身の経験ともだぶってじつに興味深い。

管理人はかつて、医者と話をするのが大の苦手だった。たまたまあたった医師との相性が悪かったせいもあるのだろうけど、権威主義的で人の話を聞かずに論理的な分析をすることもなしに自らの話を押し付けてくる医師との出会いがトラウマのように医師のイメージを支配していた時期が長く続いていた。医者とのつきあい方の塩梅がわかるようになってきたのは、宇宙飛行士受験という経験が大きく影響している。選抜で外部の病院から委託される医師と出会って「一流の医者というものはこういう人たちのことをいうのか」と、目からウロコが剥がれるような経験をした。受験仲間の中にも医者がいたので、医者の世界の裏側の話もぽつぽつと聞くようになった。この小説に出てくるような医師たちと、人生の早い段階で出会っていたら、管理人もまた、今とは違った人生を目指していたのかも。

宇宙飛行士受験、という観点から読んでみても、この小説は実に興味深い。医者(著者)がいろんな人間をどこまで深く観察しているのか、その片鱗をうかがい知ることができる。二次選抜で心理面接や精神面接を受けた時のことを振り返ると、「自分の性格は選抜側にはここまでばればれだったのか」と赤面してしまう。今にして思えば、心理面接は「パッシブ・フェーズ」、精神面接は「アクティブ・フェーズ」(詳細は小説を参照)だったのか。なるほどね。

社会問題を正面から声高に糾弾するでもなく、権力闘争に明け暮れるでもなく、一歩離れた視点から物事の本質をコミカルにしかし着実にえぐり出す著者の生き様に親近感を覚えて、年齢を確認したら、同世代だった。やっぱりね。この感覚は、むかし上の世代から「シラケ世代」とレッテルを貼られたものたちにしかわからないものかも。

滑稽なのが、厚生省官僚の白鳥圭輔の素っ頓狂なキャラ設定。現実にはとても存在し得ないキャラのように思われがちだけど、小説を読んでいる間中、最近出会った某省の出向者の顔が浮かんできて困った。いるんですねやっぱり。

2009.01.10

TPS

はやぶさのイトカワタッチダウンの時に、いち早くその偉業を世界中に広めてくれた米国惑星協会の科学技術コーディネーターであるEmily Lakdawallaさんが、火星探査機スピリットの記事を書いている。NASA TVのストリーミングを興奮しながら見守ってから、もう5年も経つのか。月日が流れるのは早いねぇ。

TPS: Five Years of Spirit on Mars

Emilyさんの記事はいつ読んでも感動的な文章なので大好きだ(はぁと)。今回の記事も、火星の冬を必死で耐え抜くスピリットにうるうると感情移入しながら読んでしまう。「こんな文章が書けるといいな」といつも自分を戒めるのだが、足下にも及ばない。"... we can all explore Mars – at least in spirit."というPunch Lineも、冷静に考えれば、ありがちなおやじギャグなのだが、ぶわぁ〜と泣けてしまった。歳を取ると涙腺が緩くてねぇ...

今、TPSのサイトを見たら、火星の表面にゴロゴロ転がっている石がなぜどこでもほぼ等間隔に並んでいるのかの謎を解くプレスリリースの解説記事が掲載されていた。じつにわかりやすい。2歳半の女の子のお母さんなのに、よくこれだけの記事をこれだけの頻度で書けるものだと、いつも感心してしまう。火星の大地に立って、つむじ風が平原を駆け抜けていく様子を数億年間、見つめ続ければ、石が少しずつ動いていく様子が見えるのだろう。気分はレイ・ブラッドベリの火星年代記

と思ったら、そのEmilyさんから惑星協会への寄付のお願いの記事が!

なんてことだ。これまで惑星協会から寄付のお願いの手紙が郵送で送られてくるたびに「ちぇ、またかい」と軽くあしらってたのが、他ならぬEmilyさんから懇願されると、思わずくらくらぁっときてしまう。ロサンジェルス郊外のスーパーで食料品を大量に買い込み、娘さんの待つ家に帰る途中の駐車場でふと見上げた黄昏の空に水星を見つけてしばらく見とれている彼女の姿を想像してしまう。(偶然にも同じ日、管理人も水星を見ていた!)

ということで、管理人自身は今年の会費はすでに払っているので、ちょこっと宣伝。みなさん、惑星協会のメンバーになりましょう! 入会手続きはこちらから。メンバーになると、ほかの雑誌では見られないような惑星探査の詳細な解説記事が掲載された会報(英語)が送られてきます。

メンバーにならなくても、こちらから寄付することもできます。

10年前の閉鎖環境試験チェンバーの中では、いつか火星の大地に立つことを夢見て、下手な絵を描いたものだっけ。あの時に同じ空気を共有した3人が、宇宙へとそれぞれ旅発つ。今回のメンバーもそろそろですね。がんばりましょう。

2009.01.09

Bright Futures

松もとれて、いまさらという感じですが、あけましておめでとうございます。

某先生から達筆な年賀状が... お心遣い、ありがとうございます。

にしても、「負けないで ともに未来へ」って... (^^;)

負けてるわけではないつもりなのですが、このところ記事が途絶えて、ちょっと疲れ気味な雰囲気をかもしだしてたのかもですね。ご心配をおかけしたのであればすみません。

宇宙関連のニュースがあいついでますね。今年もよろしくお願いします。

[追記] そういえば記事が載ってましたね>某方面

「一緒にいて気持ちが和らぐのは古川さん」

ということで、はい、ありがとうございます。

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