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2008.07.05

神様のパラドックス

「神様のパラドックス」読了。

第三回小松左京賞受賞作の「神様のパズル」がデビュー作品となった機本伸司氏の「神様のパズルのスピンオフ作品」。パズルの登場人物が「おやまぁ、こんなところで!」という雰囲気で最後に友情出演(?)したりする。

Paradox

大学の文学部に通う1年生の井沢直美は、大学生活に慣れたものの、満たされない日々を送っていた。自分の運命を変えたいと、スーパーコンピューターを製造するメーカーのアルバイトに応募した直美だったが、アルバイトの内容は驚くべきものだった!航空機に搭載されている最先端の量子コンピューターを用いて占い事業を展開しようというのだ。航空機どころか、会社すら墜落しかけない計画。直美達の不安は的中し、占い事業は頓挫したかに見えたが・・・・・・
スピンオフというだけあって、同じ時系列で同じ台風が物語のクライマックスだったりする。冷静に考えると、「ちょ、おま、そんな寄り道してるヒマ、あったんかい??」という突っ込みをいれたくなったりもするのだけど... www

この作品がいつの間にか5作目なんですね。なんとまぁハイペースな。

全体の雰囲気は女子大生のグダグダな青春学園ものの「自分探しの物語」。量子コンピューターの「意識」インターフェース役のAIコンピューターの「フライディ」のキャラがいい味を出しているけれど、主人公とフライディ以外のキャラがハチャメチャなところは筒井康隆氏の黄金期を彷彿とさせる。

壮大なスケールの物語を平々凡々な日常生活の中で右往左往する一握りの登場人物が粛々と進行させていくところが機本ワールドのなんとも面目躍如な展開でした。

SFとしてみた場合、占い事業を成立させるための仮想世界構築のインプットには無理があるような気がするけれど、それ以外の設定や理屈には70年代のホーガンやニーブンを彷彿とさせるような、なんとも懐かしい香りがします。

量子計算実現のためにパラボリックフライトを持ち込むところがなんともおしゃれ。www
現実問題としては「とてもありえねーだろ」という設定だけれど、TOE(Theory of Everything)を考える上で、量子重力というのはもしかしたら本質的に重要な役割を果たしているかもしれない訳で、そこまで考えた上で背景のストーリーを脳内補完しながら読んでみると、なんともいえない味わいがある。

物語の中盤の登場人物の議論はちょっと冗長的で長過ぎる。なんとなく小松左京氏の「ゴルディアスの結び目」を連想した。読んでないけれど。クライマックスもお世辞にも「スペクタクル」とは言えないけれど、映画の1シーンとしてみたらかっこいいかも。でも、せっかく量子コンピューターの戦いなのに、あの「最終手段」をもちこむのはありえないでしょ。

壮大なスケールの物語を登場人物がちまちまグダグダと乗り越えていくという機本ワールドの世界観が好きな人には、おすすめの一冊です。「○○真理教」を連想させる団体も登場したりして、大学生の子供を持つ親が読めば、社会問題を考えさせられるという側面もあるかも。

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