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2008.03.04

宇宙飛行士になるには(4)

前回からの続き

過去4回の宇宙飛行士選抜のうちの3回目と4回目を受験した経験をもとに、今回の選抜がどのような経緯を辿るか、宇宙飛行士を目指すとはどういうことか、について解説してみます。もちろん、選抜に落ちた人間の予想ですから、内容が正確であるという保証はどこにもありません。(^-^;)

今そこでできること

過去4回の宇宙飛行士選抜はいずれも旧宇宙開発事業団(NASDA)によって行われました。それぞれの選抜で求められる宇宙飛行士の資質やミッション内容は少しずつ異なっているので、募集要項も微妙に異なります。選抜試験のやり方も毎回かなり異なっています。選抜する側もいろいろ悩んで試行錯誤を繰り返しているのです。正確を期すためには、JAXAが今回の募集要項を4月1日に発表するまで待つ必要があります。

しかしその中でも、今から準備しておくと役立つことがあります。

それは「応募の動機」を考えておくこと、です。

応募書類の中には「宇宙飛行士志願書」という、A3の紙を二つ折りにしたような書類が含まれています。その中の、A4の3分の2くらいのスペースに「応募動機」を書く欄があります。

この志願書は、これからの1年間の選抜過程で、あなた自身を特徴づけてくれるパスポートのようなものです。その中でも「応募動機」の欄は、それぞれ個性があるので、選抜する側はたとえ何百人分の書類を見ていても、一人一人の応募動機を見るだけで「ああ、この人ね」と、あなたを思い出すことになります。二次選抜、三次選抜、と進んでゆくにつれて、役員面接の席上であなたに質問を投げかける役員の手元には、この志願書のコピーがあるはずです。

なぜ、宇宙飛行士になりたいと思ったのか、なぜ応募したのか、宇宙に対しどのような情熱を持っているのか、選考委員にアピールしておきたいことを、あなた自身の言葉で簡潔にまとめておきましょう。

応募動機のほかにも「自分の目指す宇宙飛行士像(自己アピールも含め)」を書く欄や、「応募に対する家族の意見」を書く欄もあります。

95年の選抜のときの書類のコピーを見直してみたら、「応募に対する家族の意見」には一言、「応援している」とだけ自分で書いていました。そしたら98年の書類では「応募に対する家族の意見(可能な限り家族本人が記入すること)」となっていました。よく書類選考で落とされなかったものだ...(汗

また、治療すれば完治するものについては、必ず今の段階で治療をすませておきましょう。

かつては「虫歯があると、パイロットや宇宙飛行士にはなれない」と言われていた時代がありました。成層圏などの気圧の低いところでは、虫歯の詰め物と歯の隙間に残っている空気が膨張して、我慢できない痛みを誘発し、操縦や作業に支障があります。現在は治療技術が進歩しているので、「フライト前にちゃんと治療すれば大丈夫です」と、JAXAのフライトサージャン(宇宙航空医学の医師)が言っています。

私は95年の選抜では親不知と虫歯の治療をしないままに2次選抜に臨んだため、不合格通知の紙にはしっかりと「歯科治療の必要を認める」という一文がありました。まぁこれだけが理由で落ちたのではないのでしょうが、選抜を実施する側から見れば「こいつ、どこまで本気で受験しているんだ?」という印象を持たれたのかもしれません。合格したいのであれば、今そこでできること、は、ちゃんとやっておきましょう。歯槽膿漏の人は、歯茎を毎日朝と夜にデンタルフロスでブラッシングすると、症状が軽減します。

一方、日本人に多い近眼についてはどうでしょうか。現在の基準では、視力が両眼とも裸眼で0.1以上かつ矯正視力1.0以上で色神が正常であることが求められています。毛利さんたちの時代には確か裸眼でも0.3以上求められていましたが、日本人には近視の人が多いことから、NASDAがNASAと交渉した結果、条件が緩和された、と聞いたことがあります。

最近はレーシック手術などで近視を矯正することができます。10年前のNASDAの判断では「手術はお薦めしない」とのことでした。急減圧などの過酷な環境で過ごす宇宙飛行士にとってどのような副作用が生じるかあまりわからなかったためです。

ところが!!!

今回の募集で選ばれた人がNASAに行って一緒に訓練することになるNASAの宇宙飛行士候補生募集条件を見てみると、

The refractive surgical procedures of the eye, PRK and LASIK, are now allowed, providing at least 1 year has passed since the date of the procedure with no permanent adverse after effects. For those applicants under final consideration, an operative report on the surgical procedure will be requested.

え〜〜〜、今の今まで知らんかった!

今回のNASAの募集では、「選抜の1年以上前にPRKもしくはレーシックの矯正手術をすませ、その後の後遺症が認められない場合は応募資格がある」とのことです!!

裸眼視力が0.1未満だと、これまでは宇宙飛行士になることを諦めざるを得なかったのですが、これは朗報になるかも、ですね。「1年以上前」ってところが微妙。JAXAが公表する募集要項を固唾を飲んで見守りましょう。JAXAのフライトサージャンの見解が重要です。くれぐれもあわてて手術を受けないように。

近視で裸眼視力が0.1ぎりぎりの人は、遠いところと近いところを交互に20秒ほど見つめて目のピントを合わせる毛様体筋のストレッチ運動をして、目をリラックスさせてやると、若干ですが視力が回復します。ただし疲労が蓄積しないように、ほどほどに。

体力作りにはジョギングや水泳が適しています。向井さんは選抜期間中、英会話教室2クラスに通いつつ、水泳をやっていたそうです。毛利さんはエアロビクスの教室に通ったそうです。アメリカ人で初めて地球を周回したジョン・グレンはジョギングを欠かしませんでした。

私の場合は95年の選抜ではスポーツの知識がなかったので、がむしゃらにトレーニングしては三日坊主で、全く効果がありませんでした。じつは脈拍を上げないゆっくりした運動を毎日30分ほど継続して行えば、有酸素運動能力は数ヶ月で見違えるほど向上します。「脈拍 有酸素運動」などで検索して、自分にあったトレーニング方法を見つけてください。

タバコは宇宙飛行士にとっては厳禁です。お酒はほどほどに。脂肪肝の疑いのある人は今から禁酒しておきましょう。

今のスケジュールではおそらく7月か8月頃に英語の試験、9月か10月頃に基礎学力試験と医学検査となります。大学のセンター試験程度の受験勉強を今からこつこつとやっておくといいでしょう。特に数学、物理、化学、生物、地学、英語のヒアリング、などです。

宇宙飛行士受験に王道なし。「これだけやっておけば大丈夫」という妙案はありません。「こんな宇宙飛行士になりたい」というイメージに自分自身を近づけていくために、地道にトレーニングを重ねましょう。「継続は力なり」です。

(続く)

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