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2008.01.06

科学技術立国の先に待ち受けるもの

この記事を読んで、ふと思い出した議論がある。

三年ほど前、ある酒の席で「ポスドク1万人計画がもたらしたもの」と、「若い世代のキャリアパス」について雑談を交わしていたときのこと。ある人が「ポスドク1万人計画によって大量に職にあぶれた博士たちの目の前に、防衛産業の就職口が提供されたら、職に困った若い世代は雪崩を打つようにそのポストに群がるだろう」と、ポツンと懸念を漏らした。

当時の私は「まさかそこまで世の中が急速に変わることはないだろう」と、たかをくくっていたけれど、どうもその後の宇宙基本法の動きや関連業界の動きを眺めていると、私のこの認識はかなり甘かったらしい。

東京新聞:武器輸出3原則 緩和検討 政府 共同開発など解禁

政府が武器輸出三原則を緩和する方向で検討に入ったとのこと。武器の開発・生産を他国と共同で行うことと、共同開発参加国への輸出の解禁が検討課題らしい。

この記事では三菱グループ側の本音が透けて見えてくる。

三菱電機相談役
日本経団連評議員会副議長・宇宙開発利用推進委員長
谷口一郎氏:
「産業界では、第二期科学技術基本計画の間に宇宙関係国家予算がおよそ八五%程度の水準にまで減り、宇宙開発・宇宙利用に従事する従業員も約三割減少しました。」
「宇宙予算の減少などにより、宇宙関連企業の数が半減しているのは非常に大きな心配事です。これを取り戻すためには政府のアンカーテナンシー(長期調達保証)の確立が必要です。」
「米国の場合、NASAの予算約1兆6000億円とは別に国防総省にも同程度の宇宙関係国家予算があるのです。それによって開発と技術・技能の伝承が行われているのです。」
「その際には、防衛庁にもぜひ参加いただいたらよいと思います。」

参考URL:
宇宙政策シンクタンク_宙の会:宇宙基本法をめぐる議論
スペースレフニュース:2007-11-19 井上ひさしさんら有識者7人、「宇宙基本法」反対アピール
松浦晋也のL/D:「宇宙基本法を考える2」の補足その1
松浦晋也のL/D:「宇宙基本法を考える2」の補足その2

就職口(人件費)というのは、若い技術者を意のままに効果的に動かす麻薬のような権力だと改めて感じいる。「ポスドク1万人計画は大成功だった」とほくそ笑んでいる関係者がどこかに潜んでいないだろうか...??

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Comments

宇宙分野でポスドクをやっている者です。今年度で任期切れなのでここ1年就職活動をしていました。最近は三菱重工がかなり大々的に中途採用を行っている様で、ロケット・衛星関連(名誘)も強くアピールしており正直かなり惹かれましたが、名誘はやっぱりメインが兵器という点がどうしても引っかかり結局諦めました。幸い他の所で職が見つかりましたが、そこも任期制ですので、数年後再度就職活動をする時に名誘から話があれば、年齢的にも生活の安定欲しさに入ってしまうかも知れません。個人的には軍需産業にとても抵抗ありますが、宇宙工学を生かせるポストがこうも少ないと、正直選択肢として考えざるをえない所があります。そういうわけでこのエントリーには色々と考えさせられました。

ポス毒さんこんにちは。就職活動というのは将来が見えなくて、本当に苦しいものですよね。私自身もいくつもの会社を訪問していた頃のことを思い出します。

MIAUのシンポジウムでは

http://d.hatena.ne.jp/illegal-site/20071226/p1

>コンテンツ産業の売上というのは、
>経済全体から見て非常に小さい。
>巨大に見える角川グループも年間
>売上が1,300億円である。NTTが
>10兆円というような中、一ケタも
>二ケタも小さい。

という話が出てきます。こうしてみると、日本の宇宙開発産業というのは、映画や音楽のようなコンテンツ産業よりもさらに小さなムラ社会、ということになりますね。宇宙への憧れはさておき、大学・大学院で宇宙工学を志した人みんながみんな、この業界で食べていこうというのはとてつもなく難しそうです。

(それにしてもNTTの年間売り上げというのは、あのNASAの予算よりも一ケタ多いのですね!)

ブログ検索でこんな記事を見つけました。

http://plaza.rakuten.co.jp/whatman/diary/200801020001

防衛産業に技術職として入社する人がこのような裏社会にいきなり携わる可能性はかなり低いですが、その一方で、防衛予算の巨額さに魂を奪われて、JAXA本体の舵を大きく切らせようとしている一派がいるのも事実なので、いずれ宇宙開発業界でもこのような話と遭遇するようになる可能性は高いと思われます。ご参考まで。

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