世情
忙しくてkazuさんのRSSフィードの未読が山のように溜まっていたのを、この週末かけてやっと読了(謎。
その中で紹介されていたYouTubeのリンクを見ていて、ちょっと鳥肌が立ったのが、これとこれ。
いったいどんな人が映像編集しているのだろう。「Web 2.0 ...」のほうは細かいところまで技術的な配慮が効いていて、すばらしい。
「Did you know?」のほうは、それぞれの統計の原典にあたってみないとちょっと「?」というところもあるけれど、「We are living in exponential times.」というのは完全に同意。背景にアルゴンヌの人たちの世界観を感じるのだけれど、気のせいだろうか? 映画「ターミネーター」の世界観にもつながる。日本国内にいたのでは、この感覚はなかなか味わえないなぁ...
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最近、iTunes Music Storeのギフトコードが贈られてきたので、中島みゆきの「世情」を購入してみた。
♪世の中はいつも 変わっているからこれは1978年のアルバム「愛していると云ってくれ」に収められている一曲。その10年ほど前の学生運動に参加していた世代へのレクイエムとなっている。
頑固者だけが 哀しい想いをする
変わらないものを なにかに例えて
そのたび崩れちゃ そいつのせいにする
(中島みゆき 「世情」JASRACコード 04428021; ISWC T-101.324.145-5)
じっくり聴き直すのは何十年ぶりになるだろう。セピア色に変色したくても変色することが出来ないデジタル技術に閉じ込められた中島みゆきの歌声に思わず鳥肌が立つ。検索一発で30年前の記憶が突然目の前に提示されるという悲哀。
1969年1月18日、全共闘がバリケード封鎖していた東大構内に機動隊が突入し、翌19日、学生の最後の砦となっていた安田講堂が陥落した。翌20日、東大は1969年度の入学試験の中止を発表。
その4週間ほど前のクリスマスイブには、アポロ8号が人類史上初めて地球以外の天体の周回軌道に到達し、ウィリアム・アンダース宇宙飛行士が、月の地平から登ってくる地球の姿を写真に収めた。
庄司薫がこの時代のノンポリ受験生の感性を鋭く描いた「薫くん現象」が一世を風靡し、『赤頭巾ちゃん気をつけて』が芥川賞を受賞する。
4部作の最後となる『ぼくの大好きな青髭』が出版されたのも、奇しくも「世情」と同じ1978年。この9年間の日本人、特に若い世代の世界観の激動ぶりは敗戦時のそれとも匹敵する、と、思える。中国の若者が天安門事件のことを知らないのも、日本のこの時代を振り返ればどこか納得できるものがある。
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昨日は東京大空襲から62年だった。
ちょっと調べてみると、戦争を経験した日本人にとって忘れることのできない名前となった長距離爆撃機ボーイング「B29」、が、初めて日本を爆撃したのは1944年6月16日。八幡製鉄所の夜間爆撃を目指して米第20爆撃兵団第58爆撃航空団のB29の62機が中国の成都から北九州上空に侵攻している。
東京上空にB29が初めて飛来したのは11月24日。当時の日本軍機はエンジン性能が低く、高度1万メートル以上では満足な迎撃を行うことができなかったが、B29の側も、日本上空の強いジェットストリームに流され、軍事目標であった中島・武蔵製作所への爆弾のほとんどを外している。
それから2ヶ月後の1945年1月20日、サイパン・テニアン両島のB29爆撃機部隊の司令官であったハンセル准将が更迭され、ドイツ本土への戦略爆撃で功績をあげていたカーチス・E・ルメイ少将が着任する。ハンセル准将が軍事目標に対する高高度からの精密爆撃にこだわり、ワシントンの意向であった焼夷弾を用いた民間人への大量無差別爆撃に対して消極的であったことが更迭の理由と言われる。
3月10日、ルメイ少将の命を受け、サイパン・テニアン両島から発進した325機のB29が、2000メートルほどの低空から東京に1665トンの焼夷弾を投下。犠牲者の数は8万人とも10万人とも言われる。空襲は2時間半に及び、東京下町の木造家屋が折からの強い風にあおられて大火災となった。犠牲の多くは、発生した火災旋風による焼死や、熱を逃れて川に飛び込んだことによる溺死や圧死、など。ルメイ少将はのちに「もしアメリカが負けていたら、自分は戦争犯罪人として裁かれていた」と述べたと言われる。
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機銃掃射にやってくる艦載戦闘機コルセアのパイロットの顔をはっきりと見たという父は、昨年、鬼籍に入った。学生運動の記憶を持つ団塊の世代の大量退職が今月末から始まる。4月には平成生まれの大学1年生が入学してくる。
世の中は指数関数的に進歩し、ネット上を流れる情報の質と量もとどまることを知らず増え続けているけれど、人間の寿命と世代交替の時間は変わらないまま。
今回、Wikipediaをあちこち見ていて、大学紛争や戦争当時の記述が驚くべき勢いで増え続けていることに感銘を受けた。でも、ギルダーの法則に支えられた情報通信量の指数関数的増加は、人々の記憶と寿命との戦いに果たして打ち克つことが出来るのだろうか。
♪世の中はいつも 変わっているから
頑固者だけが 哀しい想いをする
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