「GXロケットってその後どうなったんだろう、ちっとも話を聞かないねぇ」と思っていたら、こういうことだったんですか。読んでちょっとため息が出た。
JAXA: LNG推進系飛行実証プロジェクトの開発状況について
これで見る限り、宇宙開発委員会での審議を経て実機スケールでの開発がGOとなった2002年のうちに、複合材タンクと複合材ヘリウム気蓄器の開発で問題にぶつかっていたことがわかる。
管理人はロケットに関してはシロウトなのでよくわからないけれど、ロケットの基本と言えば
・十分な推力が得られるエンジンで燃料を理想的な状態で安定して燃やし続けること
・エンジン、燃料タンク、機体をできるだけ軽くかつ丈夫に作ること
じゃなかったっけ? この報告書をななめ読みする限り、そのどちらにおいても頓挫しているように見える。
しかし、あるプロジェクトを「失敗」と決めつけることは誰にでもできるけど、個人的にはこのプロジェクトに関わった人にはここ一番、踏ん張ってほしいなと願う。
「複合材内及び複合材/金属ライナ間での剥離が複数回発生し、開発の見通しが得られなくなった」とあるけれど、これはLNGの扱いに詳しい人間が現場にいなかったからではないのか。LNGの主成分によって剥離が生じたのであればとんでも、だけど、それくらい誰でも事前にチェックするだろうから、これはおそらく天然のLNGに紛れ込む不純物のせいじゃないのか?
「金属タンク/ブーストポンプ方式を代替形態案」とあるけれど、これは当初のLNGを採用した目論見に反していないのか? 開発スケジュールに間に合わせるために本末転倒な議論になっていないのか?
「エンジン燃焼中の燃焼圧変動及び推力低下」とあるけれど、これもまた、LNGの挙動に詳しい人間が現場にいないせいじゃないのか? 「ヘリウム気蓄器」ってなんのことだかよくわからないけど、もしヘリウムのガス圧によってLNGを押し出そうとしているのなら、LNG噴射口におけるガス圧と流量のきめ細かな制御がすべての鍵のはず。ガスの制御のシミュレーションや制御試験は十分だったのか? ウォーターハンマーが生じたりしていないのか?
管理人がもし野球チームの監督だったら、このチームをまずファーム落ちさせてGXプロジェクトから外すところだ。その上で単段式の小型LNGロケットを作らせてチームとしての自信を回復させる。ガス会社からLNGの不純物や化学反応に詳しい専門家を呼び寄せる。接着剤メーカーから複合材と金属接着の専門家を呼び寄せる。自動車エンジンメーカーと航空機エンジンメーカーから燃料噴射技術の専門家を呼び寄せる。
我ながら外野席から勝手なことばかりいってますね。すみません。
しかし、国家にとっての真の財産、国力とは、プロジェクトによって鍛え抜かれた人材であり、その人材が培った失敗と失敗回避のためのノウハウであるはず。巨額の科学技術予算が人材育成ではなく目先のプロジェクトだけにしか投入されないのだとしたら、そして、その目先のプロジェクトの成否によってしか、その人材が評価されないのだとしたら、不幸の根は深いのかも。
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