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2006.07.16

うーん、残念!

イリジウム携帯電話と同じ運命をたどるのかなぁ...

まなにえ:ボーイングのコネクション航空機内通信サービスの停止予測

システムの維持費用が年間約170億円、一方システムを搭載した125機の一日あたりの利用者が1,000人。単純にペイしないですね。やはり衛星を使ったエンドユーザーレベルのサービスは無理があるのかなぁ。

乗客一人当たりのフライトあたり利用料が10ドルとして、利用者が今の2倍に増えたとして、年間売上が約8億円。つまりシステムの維持費が今の20分の1以下にならないとペイしない。

人工衛星の打ち上げコストを20分の1にしなさいってことですか。

大平貴之さん
にまかせてみたら、なんかやってくれそうな気が... (笑

新しいことをやりたいという人は、ケタ外れなことを考えないといけないんです。性能を2倍、3倍にするんじゃない。10倍、100倍にする。ケタをひとつふたつ変える。あるいは、まったく違う発想の商品を、革命的な技術を生み出すことを考える。難しいです。大変です。でも、そういうことを考えて実現する可能性を探る。それが、新しいことをやりたいという人の意味だと思うんです。

でも人工衛星の打ち上げコストがかりに100分の1になったとしたら、それはそれでパンドラの箱を開けてしまうような。今のインターネットがそうであるように。

でも、いつの時代も真の技術革新は数人のこじんまりとしたチームで起きる。植松電機の社長にも注目、かな。

ところで今頃になってやっと、ですが、やっと、iPod nanoを買いました。自分へのご褒美。これまで使っていたMP3プレーヤーや音楽ケータイのセンスの悪さにいささかうんざりしていたのが、「これだよな、やっぱこれしかないよな」っていわんばかりの操作性。さすがアップル。というか、他の会社のエンジニアって、なぜ自分の製品にこだわりを持つことができない? なぜ使う身になって考えない?

早速NatureとかGarbage CollectionさんのSTS-121打ち上げのPodcastとかを聴いてみた。

管制室:Okay Steve, looks like Discovery is ready, the weather is beautiful, America is ready to return the Space Shuttle to its flight. so Good luck and Godspeed, Discovery.
船長:Thank you very much Mike, and I can't think of better place to be here on the forth of July on the Independence Day to begin to ready launch into space. To the folks at Kennedy Space Center and shuttle program, thanks a lot to work so hard on last three days and last year get us ready. For all folks in Florida East Coast, we hope to very soon eh get you up close and personal look at the rocket's red glare.
管制室:Very nice, CDR. Appreciate those words. Good luck all.

とっさの時にこういうおしゃれな言葉がさっと出てくるようになりたいものだ。

今の時代の若者はいいねぇ。その気になりさえすれば英語のヒアリングの材料を入手する手段にはことかかない。センター試験でもヒアリングが導入されたし、10年後に宇宙飛行士選抜が開かれたら、受験生のヒアリング能力はこれまでよりも飛躍的にレベルアップしていることだろう。と、それは同時に、格差社会の拡大を意味するのか?

中学生の頃に一生懸命エアチェック(何)して貯めた曲をiPodに転送してみた。なんとなく映画版「世界の中心で愛を叫ぶ」に出てきた初代ウォークマンのことを思い出した。と同時に、ラジオ深夜番組にでてきた白血病の少女、とこちゃんのこととか。今の時代は白血病イコール死の病ではない。時代が時代であれば彼女は死ななくてもすんだのだろう、とか、とりとめもなく昔を想う。

真に優れた技術は人々に技術の存在を忘れさせて、時代と文化を切り拓く。あの時代の若者の心は、ラジオのパーソナリティのトークによってつなぎとめられていた。今の時代は?

そしてあのころのSONYはいつも光り輝いていた。アメリカの技術者魂に負けてる暇なんかない。

つれづれなるままに。

韓国の宇宙飛行士応募者は3万6206人

ここのところ忙しくてブログの更新ができなかったから影響をあまり受けなかったけど、ココログはずいぶん悲惨な状況になっていたようですね。少しはメンテナンスで改善されたかな?

YONHAP NEWS: 宇宙飛行士応募締め切り、応募者は3万6206人

例の韓国の宇宙飛行士募集の件。14日に募集を締め切った結果、応募者総数は3万6206人だったという。すご。旧NASDAよりも二ケタ多いよ。この違いはなに?

8月に英語と総合常識の筆記試験で応募者を500人に絞るという。絞ったあとの数は旧NASDAとそんなに変わらないけど、そこにたどり着くまでの競争率がすごいですね。この段階ですでに相当優秀な人材に絞り込まれそう。でも心理適正検査は必要だと思うが...

年末ごろに韓国初の宇宙飛行士候補者2人が確定との見通し。この二人とも飛べるのかなぁ。余計な心配。

2006.07.06

STS-121打ち上げ成功

スペースシャトルディスカバリー号がアメリカ東部夏時間7月4日14時38分(日本時間7月5日3時38分)、打ち上げに成功。

読売新聞:「ディスカバリー」打ち上げ成功、断熱材5回はがれる

懸念されていた断熱材の剥離は少なくとも5回観測されたが、いずれも破片が小さく、影響は無いようだ。関係者の皆様、おめでとうございます。

Garbage CollectionさんがGoogleSatTrack 2 - STS-121 Special Editionを早速公開している。かっこいい。

いろんな人がそれぞれのブログで感想を述べてたり、逆に言及してなかったりするのが印象的だけど、特に印象的だったのがPlanetary SocietyのEmilyさんのブログ。無人探査を推進するPlanetary Societyの立場を踏襲しつつ、有人宇宙飛行についてのリスペクトを正直に表明している。日本の宇宙開発関係者でこのような態度が取れる人は私の記憶では......

今回のミッションが実質的なReturn To FlightになってしまったNASA。2010年までのタイムリミットにあと何回飛ばすことができるのか、正直、なかなか厳しそうだけど、もっと前向きな将来ビジョンを見せてほしいなと個人的には思う。

と同時に、政府主導の有人宇宙飛行のコスト面での限界も感じる。個人責任で人命が失われてもよいような冒険飛行時代が到来しないと、有人宇宙飛行に劇的なコストダウンをもたらすような技術革新は起きえないのではないのか。必要なのは賞金の基金設立かなぁ。

2006.07.02

サイバーナイフ

昨年10月、職場に一本の電話がかかってきた。父親の実家近くのとある病院の医師だという。電話を受けると、父親が喉の痛みを訴えて診察を受けた経緯を伝えた後、「お父さんは癌です」と一言。受話器を耳に当てながら、目の前の風景がなにか遠い別の宇宙の出来事のように感じられた。

電話の2週間前に来院、1週間前に組織検査の結果、癌であることが判明。

「ステージIVb、末期の下部咽頭癌です。骨膜への浸潤とリンパ節への転移が認められます。」

腎臓機能が低下しているので、抗癌剤は使えないとのこと。となると、外科手術か放射線治療しかないが、外科手術の場合、咽頭を切除するので、形成のために大腸を移植する必要があり、予後の保証がないことと、声帯を切除する必要があるので、しゃべれなくなること、また、食事は喉を切開して栄養剤を注入するしか無い、と、告げられた。

青天の霹靂である。

その半年ほど前から「のどが痛い」とか、「自分は癌にかかっている」と父親が折にふれて訴えていたのに、なにも相談に乗らなかったことが悔やまれた。

とるものもとりあえず病院に駆けつけて、レントゲン写真を見ながら医師の説明を聞いた。

父親の意向では実家を離れたくないという。外科手術を受けたあとの看護のことを考えると、咽頭切開と声帯切除はあまりにも堪え難い。なにより人間が人間として生をまっとうするためのQOL(Quality of Life:生活の質)があまりにも悪い。父親が健康である場合の平均余命と比べて考えたら、今、この時点で、彼が声を失い、食べるという行為を奪われるべき必然性はあるのか?

家族で相談した結果、放射線治療を選択することに決めた。患部を集中的に照射できる重粒子線治療などについても首都圏のいくつかの病院に問い合わせてみたが、保険適用の問題などいくつかの障害があり、その病院の医師に継続して通常の放射線治療をお願いすることに決めた。一つには、管理人が職場に戻っても診察費も取らずに電子メールで連絡を取り続け、現状について詳しく説明してくれる、若くて優秀で親切な医師であったことも大きい。医は仁術である。

11月から12月にかけてX線による通常の放射線治療を70グレイ程度行った。原発部位はかなり縮小したが、根絶には至らず、今年3月になって、その医師から「原発部位が膨張している。腫瘍の再発と認められる。緩和ケアとホスピスを考慮することを勧める」旨の連絡をいただいた。いよいよ覚悟を決めないといけないのか。

その頃、報道でフォトフリンを用いたレーザー治療、光線力学療法が治療成績をあげている、と知ったので、webで検索して、治療を行ってくれそうな首都圏の病院をいくつかあたってみた。国立がんセンターは電話による相談をうけおってくれず、セカンドオピニオンに関するコンサルティングを聞きにいくだけでも数週間の予約待ちの状況という。

絶望的な気持ちで次に電話をかけた病院で状況を説明して「だめもとなのは承知しているが、時間を稼ぐために光線力学療法を受けたい」と訴えた。たまたま、耳鼻咽喉科の先生に電話を取り次いでくれ、再度状況を説明すると、「セカンドオピニオンとして話を聞きます。来週の水曜日にこられますか?」 なんと、現在の担当医のこともよく知っているという。医者の世界は狭い。

東京の病院で見ず知らずの人間からの電話に対して医師が直接対応してくれることの奇跡!

すぐに父親に連絡し、現在の医師に紹介状と診断写真などの資料を準備してもらった上で東京に呼び寄せ、その病院の医師から話を聞いた。事前に担当医の所見を聞いていた通り、父親の癌は粘膜下進行例なので、レーザー治療の適用の範囲外だという。転移の可能性についても指摘されたが「転移は覚悟していますが、原発部位を外科手術以外の方法で叩いて、可能な限り時間稼ぎをしたいんです」と訴えた。すると。

「サイバーナイフというものをご存知ですか。」

という。話を聞くと、照射するのは従来通りのX線だが、照射器をロボットアームで制御して、ピンポイントでいろいろな角度から照射するので、患部以外の健康な組織への被曝を抑えながら、効果的に患部への照射が可能になるという。一も二も無い。「治療を受けます。紹介状を書いてください。」と、その場でお願いをした。

家に帰って早速Google検索してみた。

http://www.sky.sannet.ne.jp/ybaba/

サイバーナイフは工業用ロボットを使用して定位的放射線治療を行う装置です。現在は頭頚部の腫瘍や脳動静脈奇形の治療に対して健康保険が適応となります。諸外国では体幹部の定位放射線治療にサイバーナイフが使用されていますが、本邦ではいまだ認可されていません。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20050606ik13.htm
http://wakaba.or.jp/cyberknife/about/index.html

咽頭癌では幸い、保険が適用されるようだ。1992年にスタンフォード大学の脳神経外科ジョン・アドラー医師がシリコンバレーでAccuray社という会社を起業し、始めたものだという。1994年にFDAの認可を取り、治療開始。認可まで2年しかかかっていない!

日本では1997年から治療が始まり、脳腫瘍や耳鼻咽喉科・口腔外科領域の腫瘍の治療も可能になっているが、体幹部の治療は認められていない。

サイバーナイフの照射データを入力するために患部の詳細な3次元データが必要となるが、腎臓機能が弱っている父親に造影剤を使用してPET・CTを適用するかどうか、担当医との間でしばらくやりとりがあった後、5月中旬に3日間、60グレイほどの照射を行った。

治療の現場を見ると、頭が動かないようにマスクでしっかり固定し、SF映画に出てくるようなロボットアームに支えられた照射器の下で30分ほどただじっとしているだけだ。治療の瞬間は何も感じない。

Cyberknife

ただし、生きている組織を放射線によっていわば「焼き殺す」わけなので、副作用は出る。まず臭い。唾液が出なくなり、喉が渇く。全身がだるくなる。

体幹部の照射が日本で認められない理由も現場を見て理解した。人間は呼吸をするので、体幹部の臓器は呼吸に従って場所が変わる。患部の場所が呼吸によって変わるのをリアルタイムでミリ単位で正確に追跡する技術が無ければサイバーナイフの適用は不可能だ。

しかし逆にいえば、その技術さえ開発されれば、日本人の癌からの生還率は劇的に上昇するはずだ。サイバーナイフの体幹部への適用の技術開発をさぼっているのは日本の医学会の怠慢と外科医が職を失うことへの危惧ではないのか。

父親の術後の経過は正直言って、あまりよくない。なれない都会での生活のストレスからか、胃潰瘍を併発して大量に下血し、一時は生命が危ぶまれた。かろうじて地元の病院に入院することができ、輸血と投薬で小康状態を取り戻している。原発部位である喉の痛みはだいぶよくなり、飲み込む場所を選べばものも食べられる。先日、魚の刺身を旨そうに食べた。

状態がよくないとはいえ、ものが食べられ、普通に会話ができることの幸せ! この先、父親にどれだけの時間が残されているのかはわからないけれど、電子メールや電話での家族からの問い合わせに気軽に応じ、嫌な顔を見せずにセカンドオピニオンに対応して最新の医療技術を適用してくれた医師達の連係プレーに心から感謝したい。

日本人の3人に1人が癌で命を落とす時代だ。癌の予防、診断、治療、緩和の技術開発と保険適用に対する日本の医学会と厚生省の真の改革を望む。

[8/14追記] 一時はどうなることかと思ったけれど、胃潰瘍もすっかりよくなって、杖をつけば散歩に出られるようになるまで回復し、緊急入院から2ヶ月ほどで退院することができた。のどはすっかりよくなって、食欲も旺盛。あの輸血がなければ確実に命を落としていただろう。病院の先生に感謝。拾った命。人生をせいいっぱい楽しんでほしいと願う。

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