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2006.02.06

はやぶさ翻訳

Rogue Engineerさんが「小惑星探査機「はやぶさ」関連情報の翻訳 ― その1: 11月26日「イトカワ」への着陸」で「小惑星探査機「はやぶさ」にまつわる情報の英語への翻訳に関する顛末」をまとめておられる。管理人も彼の翻訳作業にはすごく助けられたし、あのとき感じた独特の興奮や義務感や困難やプレッシャーを共有できるのは、同じ時期に翻訳を試みた人間ならでは、という気がする。なので、管理人の視点からもあの頃のことをすこし振り返っておきたい。

以前にも書いたけれど、はやぶさミッションに海外からの注目が集まっていることに管理人が気付いたのは、昨年11月12日のはやぶさのリハーサル降下で「ミネルバ着地せず」という記事を書いたときだった。アクセスログを見ていると、海外の宇宙関連の掲示板でGoogleやBabelfishの機械翻訳を介してこのブログにリンクを張って、はやぶさの最新情報を得ようとしているのが手に取るようにわかった。アメリカやヨーロッパはもとより、北京、ペルー、セントペテルスブルグなど、予想もしてなかった国や地域からのアクセスが相次いでいた。そのなかでも特に高度な情報が集まりつつあったのがUnmanned Spaceflight.comのこのスレッド。Babelfishが「ミネルバ着地せず」を「Minerva it does not land」と翻訳して、やっと事態を把握している様子が見て取れた。と同時に機械翻訳の限界で詳細がつかめずにフラストレーションをためている様子もわかった。

で、最初のタッチダウンとなった11月20日。日曜日だったので、ベッドの中でノートパソコンをひろげて「そろそろタッチダウンかな」とのんびりした気分で情報収集を始めた。寺薗さんがISAS公式ブログで「何らかの理由により上昇に転じた模様」という一報を出した後、続報がなかなか出ず、混乱している様子が見て取れた。「JAXAは英語でも情報発信すればいいのに」とじれったくなったけれど、舞台裏のマンパワーの少なさも想像がついたので、松浦さんのブログでISASが9時から記者会見を開く、という記事を見た瞬間、「松浦さんが記者会見の模様を中継してくれる。これを翻訳できるのはボランティアしかいない!」ということに思いいたった。

10時半ごろの的川先生のコメントを松浦さんがアップしたのを待って、それまでの経過とともに最初の記事を11時50分ごろ、アップ。その後、松浦さんのブログの更新を追いかける形で昼食もそこそこに夕方まで更新を続けた。

効果はすぐに現れた。13時台には世界中から550ページビュー。絶対数は多くないが、地図上の分布がミネルバのときよりも確実に増えている。英語からさらにいろんな言葉に翻訳されて世界に伝わっていく様子も見えた。ロシア語、フランス語、スペイン語、イタリア語、フィンランド語、など。ISASの記者会見で的川先生や川口プロマネの一言一句が世界中の天文・宇宙ニュースサイトにその日のうちに掲載されるなんて、前代未聞? 翻訳作業の責任重大さに思わず身震いした。

問題はその後だった。世界からリンクされたのはいいけれど、平日は仕事があるので翻訳ができない。2回目のタッチダウンではやぶさがまた世界から注目を集めるのはあきらか。のりかかった船からは下りられない。どうしよう。

案ずるより産むが易し。松浦さんのブログをたどって、他にも海外の掲示板に情報を提供する日本人が現れた。naoさんやzundaさんやRogue Engineerさんも松浦さんのブログのコメント欄で翻訳作業を始められた。

2回目のタッチダウンとなった11月26日。朝から松浦さんのブログの翻訳作業を始めたものの、この日は昼から出かけなければならなかった。帰宅してから松浦さんの記者会見の記事を見ると、Rogue Engineerさんがすでに川口プロマネの解説の部分を翻訳しておられたので、残りを翻訳してアップして、就寝。翻訳作業をしてくれる人が他にも現れたことで、ずいぶん安心できた。

12月14日のJAXA/ISASの記者会見では三島さんが用意された翻訳用Wikiが活躍した。ネット上にボランティアが分散している場合、Wikiで下書きを集めてまとめていくというのは、共同作業に向いている、と、その着眼点に感心した。

微妙なニュアンスが含まれる一問一答をリアルタイムで翻訳するのは緊張する作業だった。しかしもとをたどれば、JAXA/ISASが世界で初めてのことに挑戦したからこそ、ここまで世界から注目を浴びたのであって、はやぶさチームの苦労に比べたら、管理人の数週間の緊張など取るに足りない。

世界で初めてのことに挑戦する気持ちを忘れないでほしい。その気持ちが真摯であれば、応援してくれる人は、必ず現れる。

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Comments

難しいけれど、お気に入りに登録していて、いつも拝見しています。こんにちは、初めまして。青森県にすんでいます。私は禅寺のお嫁さんなのですが、禅僧と宇宙飛行士はとても似ているなあと思います。この二つの職業で決定的に違うのは学力なんですよ。うちの息子には学力もちゃんともった、禅僧になってもらいたいものです。今日メールしたのは、4月5日にケネディセンターで川畠成道さんのヴァイオリンコンサートがあるのをお知らせしたかったのです。どうぞお近くにすんでいるお友達にお知らせくださいね。午後6時から7時の予定です。成道さんのヴァイオリンは惑星を守るひびきです。野口さんのお顔が大大大好きな、muramatsu nohara 42歳歌人より。お元気で。またブログ、拝見いたしますね。

muramatsu noharaさん、コメントありがとうございます。禅の世界はあまりよく知らないですが、なにか共通するようなものがある気がしますね。何十年後かに退職したら禅寺にも行ってみたいと思っています。

ケネディ宇宙センターでヴァイオリンコンサートですか。すごいですね。知り合いに連絡しておきます。これからもよろしくです。

川畠成道さんのコンサートは
宇宙センターではありませんよ!!
ワシントンDCのケネディ・センターです。

そうです、禅と宇宙は通じるものがあります。
私の歌集の冒頭はこんな文章です。
聞いて(読んで)くださいねっ。
  
うすいガラスの扉越しに聞こえる、柱時計の振り子の音。もうすぐ起きる時間だ。夜明けの気配のなか、秒針の動きはひとつひとつ確実に、耳から心臓へと届いてくる。夜の眠りに中断されていた意識が、いままでの記憶とこれからをつなげ、血の流れとともにまた立ち上がり動き出してゆく。
仏教に血脈(けちみゃく)という言葉がある。永遠の未来から釈迦を通じ、以後の仏弟子へと脈をなす、師弟の証明。人ひとりからまた人ひとりへ、人間の肉体をとおして伝わってゆく、仏法の系譜である。
 いまを生きていて私たちは、すでに終わった誰かの未来、そして過去を同時に歩いている。余韻、また余韻。痛みとひびきは静かに連なってゆく。
 果てしない余韻のなか、落ちてくる水滴のひと雫ふた雫は水脈をなし、繰り返しこぼれるつぶやきは、とぎれれることのない言葉の脈となり、柔らかに激しく詩の門をあける。
・・・・・で、次に「惑星だより」という詩がはいります。

宇宙を、そして地球の地面を
子どもたちが夢見て歩ける(飛べる)ようなお仕事、
なさっているのですね。素敵ですね、本当に。
また遊びにまいりますね。


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» [space] The Yakumo Project による「はやぶさ」情報翻訳を振り返る [いろいろ]
昨年 11 月に小惑星イトカワにタッチダウンした探査機「はやぶさ」.はからずもこのミッションは日本語ドキュメントを英語圏へ発信する "The Yakumo Project" の最初の活動の舞台となった.最近になって,この活動を総括する記事がいくつか世に出た. http://fukumori.org/diary/20060129.html#p01 http://fukumori.org/diary/20060209.html#p01 http://5thst... [Read More]

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