はやぶさの報道ほか
このところ「猪瀬直樹」「運輸多目的衛星」の検索ワードでこのサイトに辿り着く人がまた増えた、と思っていたら、ひまわり6号の航空管制機能のアンテナに故障が見つかってたんですね。
asahi.com: 「空のカーナビ」ひまわり6号 管制機能に不具合
航空機の混雑が激しい太平洋路線で12月から航空機の間隔を半分にする予定だったのが、日本上空と小笠原周辺上空を担当するアンテナが使用できなくなったとのこと。残る4つの空域を担当するアンテナを使って機能を代替できるかを調べて、問題がなければ来春以降に計画を実行に移すとのこと。
国交省のサイトにもプレスリリースが。
1)これまでMTSAT-1Rの管制通信機能については、本年12月下旬から正式運用する予定としていたところです。アンテナそのものじゃなくて、アンテナを制御する電子機器が不調になったんですね。「別紙2」を見ると、使えなくなったA2とA6の替りに、A3のビームスポットを緩和して太平洋上をカバーするつもりのようだ。A3までこわれたら、太平洋上の航空機の混雑の緩和をめざした管制機能は使えなくなる。そうなったら猪瀬直樹氏がまた「国交省は一千七百億円の無駄遣い」とかいって喜ぶんだろうなぁ。「ひまわり6号」と名付けておいたのは正解でしたね>誰とはなく...
2)しかしながら、本年3月下旬、航空機に搭載される米国メーカ(Rockwell Collins社)の一部の衛星通信機器において、当該機器の起動時等に必要な衛星データ放送を受信すると、リセット動作を繰り返す不具合が生じることが判明しました。
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JAXAの広報の巧拙についてなにかと話題になっているはやぶさ。JAXAのプレスリリースのページでチェックしてみると、今年に入ってからJAXAがはやぶさについて出したリリースは次の7件。
10月27日 発表 「はやぶさ」の今後の運用について
10月27日 発表 「はやぶさ」の姿勢制御装置(リアクションホイール)の不具合について
9月14日 発表 「はやぶさ」の小惑星イトカワへの到着について
9月14日 報告 「はやぶさ」の小惑星イトカワへの到着について
8月24日 報告 「はやぶさ」の状況と今後の予定について
8月15日 発表 「はやぶさ」による小惑星イトカワの撮影成功について
3月16日 報告 第20号科学衛星(MUSES-C)「はやぶさ」の現状について
情報公開の量としては必要十分、なんでしょう、たぶん。
だけど普通の部外者にとって知りたいのは対文科省とか対財務省向けを意識した(かのようにみえる?)無味乾燥な報告資料なんかじゃなくて、探査目標となっている小惑星イトカワの具体的な情報なのだ。
なにしろ人類がまだ目にしたこともなかった星だ。イトカワそのものが地球にぶつかる心配はなさそうだとはいうものの、地球45億年の歴史のなかで、生命の進化に多大なる影響を与えてきたかもしれない特徴的な軌道を持つ小惑星なのだ。
矢野さんが、夜空に屹立する横浜ランドマークタワーを指さす。こういう素朴な言葉を研究者自らの口で語って欲しいのだ。人類が初めて目にするイトカワの写真が見たいのだ。メディアはなにをしている。
「あの高さが短径で、長径が600mほど。つまり、横にランドマークタワー2つぶんぐらいの大きさがあるんですよ」そして「大体の大きさが思い浮かぶでしょ」。
ある新聞記者の方と話をする機会があったので、上記の疑問をぶつけてみた。「なぜはやぶさの記事を書かないんですか?」と。
「えーと、各社とも一回ははやぶさについて取り上げていると思いますよ。タッチダウンしたらまた書くでしょうね。」
「日本にこんな高度な探査ができるなんて素晴らしいことじゃないですか。もっとリアルタイムでいま何が起きているか紹介することはできないんですか。」
「日本の新聞は紙面が限られているので、必要以上に冗長な情報を書くことはできないんですよ。読者の科学に対する関心も高くないですから。」
「New York Timesなんかの科学面は、科学雑誌も顔負けの取材と解説をしますよね。」
「アメリカやヨーロッパの新聞は何部にも構成が分かれていて、一つ一つの記事が長いんですよね。読んでいてまるで小説か何かのように冗長な書き方だなと感じます。我々は冗長な文章を書かない訓練を受けています。」
「小説のように冗長であるからこそ、読み手は書き手の情熱のようなものを感じる、ということもありますよね。」
話は例によって、「なぜ日本では科学雑誌が売れないのか」という方向に流れていった。酔っていたので正確な数字は覚えていないが、日本の代表的な科学雑誌といえば「ニュートン」と「日経サイエンス」。発行部数は「万」のオーダーだという。かたや日経サイエンスの本家、「Scientific American」の発行部数は「100万」のオーダーだとか。(正確な数をご存知の方がいらっしゃればご指摘下さい) 「National Geographic」にいたっては、それをはるかに凌駕するらしい。
アメリカでは会社の社長クラスがこの手の雑誌を読みこなすことが一種のステータスシンボルのようなものらしい。会社や歯医者の待合室などでこの手の雑誌を普通に見かける。ひるがえって日本では... 日常会話に科学の話題がでてくることは... どうなんだろう、日本では「おたく」とみなされる要因なのだろうか。
アメリカでは「Reader's Digest」なんてのがあって、時の話題に取り残されまい、という一種の強迫観念を持っているような忙しい人向けのダイジェスト誌として猛烈な売り込み攻勢をかけていたりする。TIMEやNews Weekも似たような側面がある。そこまで必死になって話題に取り残されまいとするのもどうかと思うけれど、でも、日本のように大多数の人は専門的な話には無関心、というのもこれもまたどうかと。
松浦さんが「はやぶさリンク」というのを開始しているので、トラックバックを送らせていただきます。
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衛星の不調といえば、ASTRO-E2、「すざく」のマイクロカロリメータの液体ヘリウムが消失した問題も気になる。NASAは今年7月12日には「NASA Telescope Launched on Japanese Space Observatory」なんていうプレスリリースを出して、まるでNASAの衛星を日本が打ち上げたといわんばかりのはしゃぎようだったのだけれど、マイクロカロリメータを稼働させるためには必須の液体ヘリウムが漏れ出して、8月8日にはこの機器による観測が不能な状況に陥った。JAXAはこの状況を宇宙開発委員会に報告したりプレスリリースも出しているけれど、NASAのASTRO-E2のページはだんまりのまま。
この機器の担当者は、打ち上げに失敗した先代のASTRO-Eの時代から数えると、もう何年もこの観測機器に情熱を傾けてきたとのことだから、心中お察しするにあまりあるものがあるが、広報体制がしっかりしていないのはなにもJAXAに限った話ではないようで...
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おまけ。
世界おまけニュース:宇宙飛行士の性欲問題
たしかにNASAはだんまりですねぇ... プロテスタントだからかなぁ...
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