ふらいばい
最近「フライバイ」があちこちで話題になっているようなので、ちょっと説明を考えてみました。
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「フライバイ(Fly-by)」とは惑星探査機が少ない燃料で遠方の惑星に到達するために、手前にある惑星の角運動量を利用して探査機の軌道(遠日点)を増大させる航法のこと。「スイングバイ」とも呼ばれる。
探査機が惑星に近づくと、重力によってお互いに引き寄せられる。探査機の速度が惑星に最接近する距離に対して十分に速いとき、探査機は惑星の重力を振り切って再び飛び去っていく。この時、探査機と惑星の間で運動量が交換される。
フィギュアスケートの男女ペアの演技で男性スケーターが女性スケーターの腕を取って前に放り出す場面を考えてみる。女性スケーターの運動量は男性スケーターに腕を取られて前に放り出してもらうことで増加する。この瞬間、男性スケーターの運動量は減少するが、男女の共通重心で見た全体の運動量は保存している。腕を引き寄せるという作用によって男女それぞれの運動量が交換されている。
フライバイでも重力を媒介として運動量の交換が起きる。太陽を中心とした座標系で見ると、探査機と惑星が太陽に対する角運動量を交換していることになる。探査機が惑星の公転方向の後ろ側を通過すると、探査機の太陽に対する角運動量は増加し、惑星は減少する。惑星の前方を通過すると、探査機の角運動量は減少し、惑星は増加する。どちらの場合も共通重心でみた全体の角運動量は保存している。
実際には惑星の質量は探査機と比べると巨大なため、フライバイによる角運動量の交換は惑星の公転にほとんど影響を与えない。しかし探査機は軽いので角速度が大きく増減する。角速度が増加すると、軌道が変わり、遠日点が増加する。つまり、より遠くの惑星まで到達することになる。
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