猪瀬直樹氏の週刊文春の記事
昨日の記事で「猪瀬直樹氏がMTSAT-1Rを「無駄遣い」発言?」と書いた件。問題の週刊文春3月3日号を買ってみた。
まず、記事を読んだ全体の印象から云えば、「猪瀬氏はよく調査をしてるな」「しかしその表現は扇情的でミスリーディングだな」という正反対の感想が拮抗する。
予想通り?猪瀬氏が感情的に攻撃しているのは国交省航空局であり、MTSAT-1Rの航空管制の機能に関する部分だった。これに関しては管理人はあまり実情を知らないので、猪瀬氏の言い分を「さもありなん」と受け止める。
しかしMTSAT-1Rの成り立ちを知らない人やJAXAの役割とか知らない人が読めば、日本の宇宙開発全体が否定されているようにも解釈できる表現がある。これはいかがなものか。
たとえば記事のタイトルや小見出しはこうなっている
ニュースの考古学
猪瀬直樹
「アホバカ衛星」
「国産アホバカ衛星は一千七百億円の無駄遣い」
記事の出だしの部分は
結論を先に言ってしまおう。打ち上げる必要がない時代遅れの百六十三億円の人工衛星を搭載して、九十億円かけてH2Aロケットを打ち上げるのだ。しめて二百五十三億円。
国交省航空局は真相をひた隠しにしているため、今回の運輸多目的衛星(MTSAT-1R)は、表向きには気象衛星ひまわり5号の後継機とされている。新聞やテレビは、気象衛星ひまわりが老朽化して、後継機が必要、と説明している。
となっている。ここまではいい。航空管制の機能がその後の世界の流れで時代遅れになったということは、記事を注意深く読めばわかる。ただ「千七百億円」の内訳は、
・一回目の失敗のコスト
・二回目の今回の打ち上げ
・予備衛星のための来年の打ち上げ
ここまで七百億円超
・航空衛星センター(神戸市、常陸太田市)
五百億円
・標定局(ハワイ・オーストラリア)
・モニター局(札幌、東京、福岡、那覇)
三百五十億円
などなど
とされている。あの〜気象衛星の機能の部分までそのまま「無駄遣い」としてカウントされちゃっているように読めるんですけど...? H2Aの失敗まで衛星と一緒に「無駄遣い」とくくってしまっていいのか? 運搬手段であるロケットの失敗はもっと別に分析すべきじゃないのか?
しかし気の毒なのは気象庁、だよなぁ。国交省との力比べに負けたのだろうか? 管理人がもし気象衛星の側の責任者だったら、自分のクビをかけてでも航空管制機能との相乗りには反対していただろうな。猪瀬氏の記事では無視されているMTSAT-1計画の生い立ちの部分を掘り下げてくれるジャーナリスト、どこかにいないかな。
[2/27追記]
種子島の打ち上げ現場で取材したスペースノンフィクションライターの松浦晋也氏が日経BPにいい記事を書いています。
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