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2004.12.31

若い世代にとっての天文学

今年9月、小学生の4割が「太陽は地球の周りを回っている」と考え、3割は太陽の沈む方角を答えられない、という調査のニュースがネットをにぎわせた。

asahi.com: 小学生の4割「太陽が地球を回ってる」 国立天文台調査
日本天文学会
2004年秋季年会:小学生の天文・宇宙に関する理解とその改善策の提案 −天動説支持者は4割−
日本天文学会
2004年秋季年会:小学生の7割は月の満ち欠けの理由を知らない 小4〜6年のアンケート結果より

これと直接の関係はないけれど、数日前、日本数学会や日本化学会などの理数系学会が連名で理数科目の授業時間を増やすことなどを盛り込んだ改革案を中央教育審議会に提出したという。

共同通信:理数科目の授業時間増を 学力低下で学会が改革案

「ゆとり教育」の名の下に、小学校や中学校の義務教育課程が日本の教育にどのような影響を与えてきたかについては慎重に調べるべきだと思うし、改めるべきは改めるべき、と、思う。ただ、国立天文台の調査にしても、中央教育審議会の議論にしても、いささか議論が上滑りしているような感がある。

御用納めでまとまった時間が取れたので、書斎の本棚の古い雑誌を大量に処分しようとして、ふと、ある記事に目が留まった。今から約4年半前のSky & Telescope誌2000年9月号p.82の「Where Are the Young Astronomers?」(若い天文学者はどこにいる?)

この中に、前述の記事と同じ問題意識を持った統計が載っている。それもいまから5年以上も前のものだ。若い世代が天文学から離れる傾向というのは日本に限ったものではないことがよくわかる。

「最近の(2000年前後?)統計によると、オンタリオのヨーク大学の一年生1600人のうち53%は星占いをある程度信じている。これは1991年に行われた同様な統計の16%から急激に上昇している。」

「全米科学財団(NSF)が発行する『Science & Engineering Indicators 1998』によると、アメリカ成人の27%は太陽が地球の周りを回っていると信じている。半数以上は、地球が太陽の周りを一年で一周すると認識していない。」

この記事には、Sky & Telescope誌の購読者の年齢分布が年とともにどのように変わっているかのグラフも出ている。1979年から1998年の20年ほどの間に、購読者は急速に高年齢化している。全米の年齢別人口分布の中央値は平均寿命の延びとともに3歳ほど上昇しているが、同誌の購読者の年齢分布の中央値は12歳以上も急上昇している。

インターネットが普及を始めたのは1990年代半ば、だから、このグラフの傾向には直接の影響がないことが見てとれる。

この記事では、最近の若い世代は以前の世代と比べて天文学以外にも興味を持つ対象が増えていることを指摘している。それと、1960年代の米ソの宇宙開発競争が、天文に興味を持つ層を増やした影響も無視できないことが指摘されている。言い換えれば1980年代以降、若い世代が天文に興味を持つきっかけは、それ以前の世代に比べてかなり少なくなってきているように見える。

好きこそものの上手なれ。逆にいえば、好きでなければ、太陽が地球の周りを回っていようがその逆であろうが、関係ない、とも言える。

若い世代の天文学に対する興味の減少、は、日本に限った問題ではない。また、インターネットやハッブル望遠鏡の画像の普及などの表面的な現象の帰結、でもない。「若い世代が外の世界に興味を持たなくなるなにか」が、先進国に共通に蔓延しているように感じてしまう。

先の国立天文台の調査も、今後20年ほど、おなじ基準で続けていく必要があるだろう。中央教育審議会もまた、おなじくらい長いスパンで責任を持った議論を続けていくべきだろう。そして新聞記者は、同じくらい長いスパンの統計データをさまざまな場所から探しだして、もっと読みごたえのある記事を書くべき、だろう。

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Comments

5thstar管理人さん、コメントありがとうございます。

勉強も学校もキライなので、教育問題とかも難しい事はよくわからないのですが、アタシが子供の頃は「小学○年生」「○年の科学・学習」とかいった雑誌を親が買ってくれて、結構楽しく読んだ記憶があります。(図鑑も好きだったなぁ)
最近の子供さんは、どんな本を読んでいるんでしょうね?

す☆れれさんこんにちは。

私も学研の「○年の科学」読んでました!
んで、子供にも買い与えて...

あの付録はやっぱりいいですよね。

子供たちが読む最近の本の定番といえば、やっぱりハリーポッター、でしょうか。

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