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2004.12.31

2004年の宇宙関連ニュース

気がつけば、ココログに引っ越してきてからもう一年以上経っている。2004年の5thstar的「今年の十大ニュース」。

SpaceShipOneが民間初の有人宇宙飛行に成功
ガガーリンが人類で初めて有人宇宙飛行に成功してから今年で43年。有人宇宙飛行は長い間、国家プロジェクトに限られていた。高度100km、わずか数分の弾道飛行とはいえ、バート・ルタン氏率いるスケールド・コンポジット社が民間初の有人宇宙飛行に成功し、X-Prizeを獲得した功績は大きい。今後、どのように進展していくのか、楽しみな分野でもある。

SpritOpportunityが火星に着陸
NASAの火星探査機スピリットとオポチュニティがそれぞれ1月4日と同25日に火星に着陸。当初の寿命を越えてすでに一年近く、火星表面のいろいろな場所の探査を続けている。同じ時期に火星を目指した日本の探査機「のぞみ」は電子回路のトラブルで火星周回軌道に入れず、昨年12月に太陽を巡る人工惑星に。欧州の「マーズエクスプレス」は火星周回軌道に入って貴重なデータを送り続けているものの、スピリットとオポチュニティの大活躍の前ではちょっと影が薄い。軟着陸を目指した「ビーグル2号」は行方不明となった。NASAとしては「M2K4」(今年は火星の年)というキャッチフレーズは大成功となった一年だ。

■カッシーニが土星周回軌道に到着
記事では取り上げなかったけど、7月1日、NASAの土星探査機カッシーニが土星軌道に到着。打上げが1997年。燃料を節約するためにまず金星で2回、地球で1回、木星で1回のスイングバイを行って、それぞれの惑星の軌道周回の運動エネルギーを分けてもらって土星軌道に到達している。7年の旅路。今月24日に探査機ホイヘンスを放出し、来年1月14日には土星の衛星タイタンに軟着陸を試みる。

野口宇宙飛行士の打ち上げ予定日が決まる
10月29日、NASAは野口宇宙飛行士のフライトSTS-114の打ち上げ予定日を「来年5月12日から6月3日の間」と正式に決めた。昨年2月1日のコロンビア号の事故の後、何度も打上げ予定日が浮上しては延期になっていたが、いろいろな安全対策が進みつつあることと、宇宙ステーションへの補給ミッションに早く復帰しないと宇宙ステーションのほうも心配なことから、今回の決定はあまり大きくは動かないものと見られる。1996年5月、旧NASDAの宇宙飛行士選抜で選ばれてから苦節8年。宇宙へ行きたいという夢は9年目にして叶うか。長い年月だ。5thstar的にはやっぱり大きなニュースだ。

宇宙飛行士三兄妹がNASAで訓練
古川、星出、山崎の三宇宙飛行士がロシアでの訓練を終えて、今度はNASAのミッションスペシャリスト養成コースに参加するために6月、渡米。NASAが緊急帰還機CRVの開発を予算不足で中止したことから、宇宙ステーションに一度に長期滞在することのできる人員が(ソユーズの定員である)3名に限られてしまい、長期滞在要員としての順番が回ってくるかどうか、かなり厳しい状況になってしまった3人だが、NASAの宇宙飛行士としての資格を得ることで、起死回生を狙う。個人的にはT-38の訓練や無重力飛行機による訓練、シャトルシミュレーターを使った訓練など、垂涎ものの訓練がめじろ押しで、かなりうらやましい。ただ、野口さんのフライトが成功すると、宇宙ステーションを完成させるためのフライトと、長期滞在1回、計2回分の日本人フライトが可能になる勘定だが、3人はこの時期、訓練コースにかかりきりとなり、ミッション固有訓練に対応できる日本人宇宙飛行士が土井、若田、の二人しかいなくなる。若い三人にしてみれば、せっかくのチャンスを逃してしまうことになるので、なんとももったいない。緊急帰還機としてのソユーズをはやく「2機常駐」体制にして、宇宙ステーションの滞在人数を増やさないと、日本人に順番が回ってこない。なんとかしなきゃね>JAXA

ブッシュ大統領が今後の宇宙計画を発表
1月14日、ブッシュ大統領が米国の今後の宇宙開発政策について演説した。月と火星への有人宇宙計画を視野に入れた野心的な計画。NASAという巨大な組織がこの計画で息を吹き返すか、はたまたあてどもなく漂流を続けるか、注目。

NASAのオキーフ長官が辞任
12月に入って、NASAのオキーフ長官が辞任するというビッグニュースが世界を駆け巡った。表向きの理由は、NASAよりも給料の良いルイジアナ州立大学の総長に就任する、というものだが、コロンビア号事故以降の苦しい時代のNASAを引っ張ってきた長官として、NASAの体質改善を途中で投げ出してしまう格好となり、今後のNASAのリスク対応体制に若干の不安が残る。

JAXA理事長が交替
JAXA理事長の山之内秀一郎氏が健康上の理由で11月14日に退任、NTTドコモの取締役相談役で宇宙開発委員会の非常勤委員の立川敬二氏が15日より新理事長に就任。来年2月のH-IIAロケットの打ち上げ再開に向けて民間企業出身の立川氏の采配ぶりに注目が集まる。

宇宙開発利用の基本戦略
9月9日の内閣府総合科学技術会議で宇宙開発利用の基本戦略(案)が答申。昨年の中国の有人宇宙飛行成功とアメリカの長期宇宙開発計画の発表を受けて急きょ見直しをしていた日本の宇宙開発計画。「総花的」という批判も一部にあるけれど、ある意味、ボトムアップ的な基本戦略の策定がJAXA側に求められている時代、と解釈することもできる。

宇宙開発推進へ議員連盟発足
3月17日、日本の宇宙開発を推進するための超党派の議員連盟が発足。

【番外】ハリケーン「フランシス」による被害
日本でも台風が最多上陸数を記録した今年はアメリカでも超大型ハリケーンによる被害が目立った。なかでもフランシスはフロリダのケネディ宇宙センターを直撃。いくつかの建物に被害をもたらした。野口宇宙飛行士がのるディスカバリー号には直接の被害は及ばなかったものの、安全対策のいくつかの作業工程を見直しせざるを得なくなり、当初、来年3月ごろだった打上げ予定が2ヶ月の延期に。

【番外】星になった受験仲間
平成10年度の宇宙飛行士募集選抜を受験した仲間(Issac98)の一人の名前が小惑星1951 WHに名付けられた。命名者は軌道計算の大家の中野主一さん。

【番外】ココログ利用一周年
12月17日はこのサイトのココログ利用一周年。2003年もいろいろなブログサービスが台頭して話題になったものだけど、今年はさらにたくさんの大手サービスプロバイダがブログに参入してきて、一種の社会現象となった。新聞記者高知県知事も(今は更新を停止しているようですが)ブログを始めたし、個人的に最も驚いたのは、JAXAの人もブログを始めたこと。25日付けの東京新聞(「真鍋かをりのここだけの話」がフィーチャーされている)によれば、ココログの開設件数が1年で約5万4000件。3月にスタートしたgooブログが9万件弱。ライブドアが約27万件。日本の人口を考えればまだまだ少数派ともいえるけど、登場人物はじつに「濃い」。今年は「ブログ定着の年」といってもいいかな。

来年もよろしくお願いします。

若い世代にとっての天文学

今年9月、小学生の4割が「太陽は地球の周りを回っている」と考え、3割は太陽の沈む方角を答えられない、という調査のニュースがネットをにぎわせた。

asahi.com: 小学生の4割「太陽が地球を回ってる」 国立天文台調査
日本天文学会
2004年秋季年会:小学生の天文・宇宙に関する理解とその改善策の提案 −天動説支持者は4割−
日本天文学会
2004年秋季年会:小学生の7割は月の満ち欠けの理由を知らない 小4〜6年のアンケート結果より

これと直接の関係はないけれど、数日前、日本数学会や日本化学会などの理数系学会が連名で理数科目の授業時間を増やすことなどを盛り込んだ改革案を中央教育審議会に提出したという。

共同通信:理数科目の授業時間増を 学力低下で学会が改革案

「ゆとり教育」の名の下に、小学校や中学校の義務教育課程が日本の教育にどのような影響を与えてきたかについては慎重に調べるべきだと思うし、改めるべきは改めるべき、と、思う。ただ、国立天文台の調査にしても、中央教育審議会の議論にしても、いささか議論が上滑りしているような感がある。

御用納めでまとまった時間が取れたので、書斎の本棚の古い雑誌を大量に処分しようとして、ふと、ある記事に目が留まった。今から約4年半前のSky & Telescope誌2000年9月号p.82の「Where Are the Young Astronomers?」(若い天文学者はどこにいる?)

この中に、前述の記事と同じ問題意識を持った統計が載っている。それもいまから5年以上も前のものだ。若い世代が天文学から離れる傾向というのは日本に限ったものではないことがよくわかる。

「最近の(2000年前後?)統計によると、オンタリオのヨーク大学の一年生1600人のうち53%は星占いをある程度信じている。これは1991年に行われた同様な統計の16%から急激に上昇している。」

「全米科学財団(NSF)が発行する『Science & Engineering Indicators 1998』によると、アメリカ成人の27%は太陽が地球の周りを回っていると信じている。半数以上は、地球が太陽の周りを一年で一周すると認識していない。」

この記事には、Sky & Telescope誌の購読者の年齢分布が年とともにどのように変わっているかのグラフも出ている。1979年から1998年の20年ほどの間に、購読者は急速に高年齢化している。全米の年齢別人口分布の中央値は平均寿命の延びとともに3歳ほど上昇しているが、同誌の購読者の年齢分布の中央値は12歳以上も急上昇している。

インターネットが普及を始めたのは1990年代半ば、だから、このグラフの傾向には直接の影響がないことが見てとれる。

この記事では、最近の若い世代は以前の世代と比べて天文学以外にも興味を持つ対象が増えていることを指摘している。それと、1960年代の米ソの宇宙開発競争が、天文に興味を持つ層を増やした影響も無視できないことが指摘されている。言い換えれば1980年代以降、若い世代が天文に興味を持つきっかけは、それ以前の世代に比べてかなり少なくなってきているように見える。

好きこそものの上手なれ。逆にいえば、好きでなければ、太陽が地球の周りを回っていようがその逆であろうが、関係ない、とも言える。

若い世代の天文学に対する興味の減少、は、日本に限った問題ではない。また、インターネットやハッブル望遠鏡の画像の普及などの表面的な現象の帰結、でもない。「若い世代が外の世界に興味を持たなくなるなにか」が、先進国に共通に蔓延しているように感じてしまう。

先の国立天文台の調査も、今後20年ほど、おなじ基準で続けていく必要があるだろう。中央教育審議会もまた、おなじくらい長いスパンで責任を持った議論を続けていくべきだろう。そして新聞記者は、同じくらい長いスパンの統計データをさまざまな場所から探しだして、もっと読みごたえのある記事を書くべき、だろう。

2004.12.29

書評「A LAND IN MOTION」

サンフランシスコの対岸に位置するバークレイは学生の街だ。ここを訪れるたびにアメリカの中の自由の息吹と学生の若々しさを感じてなんだか気分が浮き浮きとしてくる。天文学者クリフォード・ストールが西ドイツ(当時)のハッカーを追跡した経験を描いた本「THE CUCKOO'S EGG」の舞台もバークレイだ。坂道を登っていると、クリフォードが汚らしいスニーカーを履いて自転車で坂の上からさっそうと駆け降りてくる姿が目に浮かぶような気がする。

それなりの年配の人であれば、バークレイと言えば映画「いちご白書」の舞台として記憶にとどめておられる方もいるのだろう。1960年代、学生運動華やかなりし頃は、この地が反戦運動の拠点だった。

そんな反戦運動の闘士達が当時、根城にしていた書店がサンフランシスコのダウンタウン、チャイナタウンやイタリア人街からさほど遠くないところにある、というので、知人につれて行ってもらった。その書店とは「CITY LIGHTS BOOKS」。通りを一本隔てると、日本人が迷いこむとあまりよろしくない地域、らしい。

CITY LIGHTS BOOKS
261 Columbus Ave.
San Francisco
www.citylights.com

チェ・ゲバラの著書なんかが平積みにされていたりして、なるほど、なかなかとんがった感覚の持ち主が店主を勤めているのだな、と、みょうに感心する。Amazon全盛のご時世、先鋭的な品ぞろえの書店なのに経営が成り立つ、というのは、サンフランシスコの住人がそれだけ先鋭的だ、ということなのだろう。

この書店を訪れたのは米軍のイラク侵攻が始まるか始まらないかという時期だったけれど、「ADDICTED TO WAR」という、アメリカの軍事政権を痛烈に風刺した漫画教育本が目に留まったので、買ってみた。同じ時に買ったのが「A LAND IN MOTION 〜California's San Andreas Fault〜」という本だ。

サンフランシスコといえば、1989年の大地震を思い出すまでもなく、日本と同じ地震の街でもある。実際、カリフォルニアは日本の4つの島とほぼ同じ規模だけれども、その大半を活断層地帯が貫いている。そのなかでもまさに親玉中の親玉というべき存在がサン・アンドレアス断層だ。

「A LAND IN MOTION」は、1000km近いこの断層のいろいろな場所での風景を綺麗に切り取った写真集のような趣きと、最新の地球科学のわかりやすい解説書の側面を合わせ持つ。英語が読めない人でも、この本に掲載された豊富な写真と図解を眺めるだけでも、地球の息吹の側面を視覚的に十分体感できるだろう。地球は生きた星だ。

日本は地震の国なのに、このように芸術的にもすぐれた地球科学の啓蒙本になかなかお目にかかれないのは残念な気がする。たとえ出版しても、あまり売れないのだろうか。

この本の冒頭に、Don Charlesという人の詩が引用されている。

If I could move real slow
I could hear the rocks talkin'
If I could move real slow
I could see the trees walkin'
.....

スマトラ島沖地震の津波災害で亡くなられた人々のご冥福をお祈りします。

2004.12.27

JAXAコラム

JAXAコラムに以前紹介したサイエンス・フロンティアつくばの記事が載っている。

コラム 第12回 特別編集 サイエンス・フロンティアつくば

この会を主催したのはつくばサイエンス・アカデミーであって、JAXAは共催機関の一つ、なのだけど、中身的にはたしかに「ほとんどJAXA」でしたもんね。

それぞれの講演の中身はダイジェストしすぎていて、もともとあった「面白み」がどこまで伝わるかちょっと疑問のところもあるけれど、そこそこうまくまとまっている。

パネルディスカッションの「人間かロボットか」という議論でマレー博士と向井宇宙飛行士のかけあいが面白い。

忘年会

reunion045thstarとIssac98のメンバーと、9月23日の記事の人たちとで忘年会。この企画も紆余曲折はあるが徐々に進行中。ことがうまく運べば、2007年頃には皆さんにも公開できる、かな。あと3年弱か。先の長い話だね。

いろいろと盛り上がった話の中で、ヨーロッパ某所の懐かしい地名が出てきて、ちょっとびっくりした。世界が狭いというべきか、このメンバーの行動半径が広いというべきか。みんなあいかわらず元気だ。

打上げ見学ツアー

5thstarのサイトを見て連絡してきた人と某所で打合せ。来年の野口宇宙飛行士の打上げに合わせたツアーを企画中だという。

かつてケネディ宇宙センターやジョンソン宇宙センターを見学して回った時の印象や、オーランドにあるディズニーワールドの話などをコメントした。

企画担当の人は、小学生のころに毛利宇宙飛行士の打上げの映像をみて感動し、今度の打上げ見学ツアーもぜひ小学生に体験してもらいたいと思っているという。

oazo実際のシャトルの打上げは、直前になってスケジュールが変わることが多々あるし、しかも今回はコロンビア号の事故の後の初めての打上げとあって、NASAもいろいろな面で神経をとがらせることになるだろう。そういう意味では、見学ツアーといっても、いろいろと考えうる障害はいっぱいあるのだが、管理人も可能な限りサポートしてあげたい、と思う。

がんばるべし。

2004.12.25

宇宙関連TV番組情報 2005.1

受験仲間のMさんからのテレビ情報です。

*****

気がつくのが遅れたのですが、NHKラジオで宇宙番組をやっています。
毎週月 21:30〜22:00 NHKラジオ第二 宇宙から人間へ
毎週火 11:00〜11:30 NHKラジオ第二 宇宙から人間へ (再)
http://www.nhk.or.jp/nhk-text/05_kyouyou/culture_h.html
講師は元NHK解説委員の高柳雄一さん。今は我が母校、電通大の教授です。放送は半分終わってしまいましたが、来年3月まで続くそうです。テキストは2冊で、後編はそろそろ発売のはずです。

コロンビア号事故についての本が出ていたので買ってきました。
衝撃のスペースシャトル事故調査報告
−NASAは組織文化を変えられるか−
http://www.jisha.or.jp/material2/cyu/tosyo/ae_sinsyo/ae_sinsyo.html#25818
今年の7月発行となっていましたが今月まで気がつきませんでした。著者の澤岡昭さんはJAXAの非常勤技術参与で、ISSの産業利用プロジェクト
責任者だそうです。

以下はいつものテレビ情報です。

12/25 土 21:00〜22:15 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅7
12/26 日 23:25〜24:25 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅1(再)
12/27 月 23:00〜23:55 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅2(再)
12/28 火 23:00〜23:55 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅3(再)
12/29 水 23:00〜23:55 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅4(再)
12/29 水 24:05〜25:00 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅5(再)
12/30 木 23:00〜23:55 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅6(再)
12/30 木 24:05〜25:20 NHK総合 地球大進化・46億年・人類への旅7(再)
http://www.nhk.or.jp/daishinka/

12/31 金 12:00〜12:50 NHK教育 小柴昌俊博士の楽しむ最先端科学 宇宙論 (再)
1/ 1 土                脳科学
1/ 2 日                量子
1/ 3 月                言語
http://www.nhk.or.jp/winter/etv/etv06.html

12/31 金 21:30〜23:00 NHK教育 アニメ プラネテススペシャル
http://www3.nhk.or.jp/anime/04winter/program/takarabako.html#planetes
人気の高いエピソードの再放送や、制作スタッフへのインタビューが
放送されるそうです。

1/ 8 土 19:00〜19:45 NHK教育 サイエンスZERO 土星探査 最新報告
                生命誕生の謎に迫る (再)
1/11 火 24:00〜24:45 NHK教育 サイエンスZERO 土星探査 最新報告 (再)
http://www.nhk.or.jp/zero/

1/ 9 日 23:00〜24:00 NHK BS2 熱中時間-忙中・趣味あり「わが心大空にあり」
          ロケット作りに魅せられたバス整備士 (再)
10月初頭につくば市で行われる予定の全国大会に向け制作にいそしむ真弓さんに密着

1/25 火 9:30〜10:50 NHK BSハイビジョン 星々に最も近い場所 すばる(再)
1/26 水 9:30〜10:50 NHK BSハイビジョン 星々に最も近い場所
              これが国際宇宙ステーションだ(再)

以下はスカイパーフェクTVの有料放送。
ディスカバリーチャンネル
1/ 2 日 5:00〜 6:00 321ch 土星探査機カッシーニ (再)
http://japan.discovery.com/episode/epiintro.php?id1=838114&id2=000000

1/ 5 水 9:00〜10:00 321ch 宇宙 最後のゴミ捨て場 (再)
http://japan.discovery.com/episode/epiintro.php?id1=412671&id2=000000

1/ 6 木 9:00〜10:00 321ch スペースウォーカー:究極の綱渡り (再)
http://japan.discovery.com/episode/epiintro.php?id1=413047&id2=000000

以下はスカイパーフェクTVの無料放送。

サイエンスチャンネル
1/ 1 土 出動!子供科学博士 科学の目で地球を探れ!地球観測衛星 (再)
http://sc-smn.jst.go.jp/8/bangumi.asp?i_series_code=B030208&i_renban_code=045

*****

Mさんまいどどうも。

2004.12.24

補給船プログレスが無事打上げ

すでにあちこちのブログに載ってますが

FloridaToday: Crucial cargo supply ship blasts off
JAXA: 国際宇宙ステーションへの補給フライト 16P

宇宙ステーションに補給物資を送る無人宇宙船プログレスが日本時間午前7時19分、バイコヌール宇宙基地(カザフスタン共和国)から無事打ち上げられたようです。宇宙ステーションとのドッキングは、26日午前8時31分の予定。

食料や予備の酸素の補給など、もし今回の打ち上げが延期になっていれば乗組員が緊急帰還用ソユーズで宇宙ステーションを後にして地球に帰ってきていただろうだけに、まずは無事に打ち上がって、ほっと一息。担当者はドッキングするまでは気が抜けないでしょうけど。

スペースシャトルが飛ぶことができない間の乗組員の交代や物資の補給を一手に引き受けるロシア宇宙局。大事な局面をきっちりこなして、また株が上がりましたね。

2004.12.23

神舟6号は来年9月打ち上げ

SpaceDaily: China's Second Manned Space Flight To Blast Off In September

中国の有人宇宙船神舟6号は来年9月に打ち上げ予定とのこと。2名乗り組みで5日間の宇宙滞在を目指す。今回は宇宙飛行士は打ち上げ後、軌道モジュールに移動していろいろな実験をこなすようだ。

アメリカは神舟のスパイ衛星としての機能を心配している様子。

閉鎖環境試験ふたたび

星が好きな人のための新着情報経由

JAXA: 閉鎖環境適応訓練設備を用いた有人実験参加者公募について

今年度もやるんですね。毎年恒例というか。JAXAの次の宇宙飛行士選抜(いつになるのか見当もつきませんが)を受験したいと思っている人がいたら、この実験に参加しておくと参考になると思います。

詳しくは1月に書いたこちらの記事を参照。

それで思い出したけど、彗星探査機「ディープ・インパクト」もそろそろ打ち上げ、ですね。

閉鎖環境試験の結果はサイエンス・フロンティアつくばのポスターセッションに掲示されたのをちょっと斜め読みしたけれど、どこかで公開されてないのかな。

2004.12.21

禁じられた周波数

So-netのソニーのiEPGテレビ番組表【テレビ王国】の「レコメンド情報」を見ていたら、23日の夜遅く(正確には24日午前2時30分)にテレビ朝日の深夜映画で「オーロラの彼方へ」が放映されることに気がついた。(放映日時は関東地方の情報)

原題は「Frequency」。管理人はこの映画を数年前ジュネーブで時間待ちをしている時にたまたま入った映画館で観た。フランス語の題は「Frequence Interdite」。直訳すればそれぞれ「周波数」「禁じられた周波数」?

デニス・クェイド出演。2000年、米映画。

1969年、消防士のフランク(デニス・クェイド)はある火災現場で事故により命を落とす。30年後、息子のジョンは、父の遺品のアマチュア無線機をなにげなく操作しているうちに、懐かしい父の声を聞く。不思議なオーロラの出現により、1999年の現在と、父の事故の数日前の1969年とがアマチュア無線の周波数でつながってしまう。息子は父の命を救おうと懸命にマイクに向かって喋りかけるが...

タイムトラベルものの変形とも言える典型的B級SFファンタジー映画。スリルとサスペンスもちょっと交錯する。ノスタルジーと親子の情愛が入り交じった爽やかな映画。

管理人がお気に入りなのは、父の遺品のアマチュア無線機を整理しようとしている息子のジョンの傍らで、甥?が「それって、昔の人が使ってたインターネットだよね」というセリフ。あの時代のアマチュア無線が持っていたノスタルジックな雰囲気がこのひと言にうまく凝縮されている。

「オーロラの出現による時間を越えた通信」というのはなんともできすぎな設定だけれども、30年前、夏場になるとスポラディックE層という特殊な電離層の出現とともに、関東地方の無線局が管理人の無線局をコールして「パイルアップ」という状態になっていたのを順番に裁いていた記憶が蘇ってきて、懐かしい。

フランス語の映画のタイトルのほうがなんとなく趣があるなぁ、と、思ってしまう。

JAXAがブログ!? part 2

ふと気がつくと、「JAXAいはもとの宇宙を語ろう!」というブログからトラックバックをもらっていた。どうもありがとうございます。以後、お見知りおきを...

なんとなくとった動画とか :ブログ開始のご挨拶なんていうエントリーがあって、「午前2時でぇす」とかいう動画に思わずう〜む。

最近、JAXAの情報公開の方針って、変わりつつあるんでしょうかね。「JAXA採用担当者ブログ」が登場した時にもずいぶん驚いたものだけど...

feed meter設置してみました

RSS feed meter for http://5thstar.air-nifty.com/blog/やじうまWatchで紹介されてから気になっていた「feed meter」を設置してみました。

日付が変わってから「昨日のランキング」を見てみたら、いきなり206位にランクインしていて、ちょっとびっくり。MyblogListなんかでは番外なのに...

最近、こんなブログでもご贔屓にしてくれるかたが増えているようで、嬉しい限りですが、宇宙関連ネタ、って、時事ネタとは違って、アクセス数が爆発的に増えるようなものでもないですね。とはいっても、本家サイトとはケタ違いのアクセス数を獲得している、というのもまた事実、なわけで...

来年5〜6月の野口宇宙飛行士の初フライトに向けて、盛り上げていくべく頑張る、です。m(__)m

2004.12.19

晴海埠頭

harumi家人の3アマ受験に付き合って、晴海へ。埠頭を渡る風は冷たい。遠景にレインボーブリッジ。その左手にはお台場のまばゆいビル群が見える。

晴海に国際展示場があったころ、モーターショーを見に来たことがある。「未来がそこにある」という華やいだ雰囲気があった。

今の晴海からはかつての華やかさは消え、忘れ去られた空間に人間がひっそりと暮らしているという、下町とも人工の街ともつかない、独特の侘びのような雰囲気がある。

巨大なゴミ処理場ができていて、その廃熱を利用した公立の温水プールがある。が、客は少ない。銀座や築地とお台場の中間に位置する「都心から車で3分」の場所なのに、ぽっかりとすべての時間が止まったようだ。

雑草があちこちに生えている広大な空き地の中で親子がポツンと電動ラジコンカーを走らせて遊んでいた。

2004.12.18

ノートPC雑感

宇宙開発とは関係ないけれど、ITmediaのコラム記事「
日本の「パソコン」はどこへ行く?」をつらつら読みながら考えたことなど。

2年ほど前、blogが日本の社会に定着し始めた頃は、新し物好きな個人がMovableTypeなどのblog用のツールを自分たちで設定して立ち上げて、コミュニティが形成された。それと同じような試行錯誤の時代が80年代半ばのパソコン通信の黎明期にも日本にあって、新し物好きの人たちが自分たちでパソコンを買ってきて、パソコン通信のホスト用のツールをインストールしたり自分で開発したりして、いわゆる草の根BBSなるものが全国あちらこちらにあった。

その頃のパソコンといえば今とは比べものにならないほど脆くかつ高価なもので、特にハードディスクは衝撃や振動にとてつもなく弱かった。サーバーホストを設置した地域に地震があると、「うちのホストのハードディスクは大丈夫でした」などという情報があちらこちらの草の根BBSで飛び交ったものだ。

そんな「パソコンとは脆いもの」「稼働中のハードディスクには絶対に振動を与えるな」という「常識」が覆されたのは、IBMのThinkPadなど、対衝撃性の強いノートPCが開発されてきたことの貢献が大きい。時代とともに「常識」も変わる。ThinkPadはスペースシャトルの打ち上げ時の衝撃にも耐え、気圧の変動にも強いという性能を誇るから、NASAにも採用されたという経緯がある。

その一方で、変わらないものもある。ディスプレイ、キーボード、マウス(やパッド)などの入出力機器だ。休みの日にベッドの中でのんびりパソコンを操作したりする時に思うのは「ああ、もう少し楽な入出力機器は流行らないものか」と。

ウェラブルPCというのは、どうなったのだろう。いくらパソコン本体が小さくなっても、入出力機器がまともに機能しなければ市場では評価されないことは、PDAの盛衰が示している。オリンパスのEyeTreckも、その後、市場を席捲した、という話はついぞ聞かない。ちょっとGoogle検索してみたら、SONYがヘッドマウントディスプレイをまだ生産しているみたいだけど、この値段ならデスクトップPC本体が買えてしまう。解像度も普通のディスプレイを置き換えてしまうほどの衝撃的なインパクトはない。

その一方で、冒頭のコラム記事にもあるように、パソコン市場はどうも変な方向に進み始めている気がする。IntelやAMDが今年はチップのロードマップを大幅修正したことからもわかるように、さしもののムーアの法則にも「熱と消費電力」が大きな壁となって立ちはだかるようになってきた。WindowsとWordやExcelなどのOffice製品をひたすら「重たく」して、新しいパソコンに買い替えてもらおう、という、Wintel連盟の目論見は、さすがにもう通用しなくなり始めた。市場のサポートがなくなれば、これらの会社の変わり身は早いだろう。

個人的に2005年のPC業界に望みたい「こんなノートPCが欲しい」リスト。

・ウィルス感染の心配をしなくてもすむノートPC
・セキュリティアップデートの心配をしなくてもすむ
 ノートPC
・ファイルバックアップの心配をしなくてすむノート
 PC
・今の携帯電話と同じく、充電を2,3日忘れても平気
 で使えるノートPC
・動作中に落としてもたたいても壊れないノートPC
・3年といわず、5年経っても陳腐化せずに、恥ずか
 しげなく持ち歩けるようなノートPC
・今のディスプレイの解像度をはるかに凌駕する、
 小型で軽量で安価なヘッドマウントディスプレイ
 が使えるノートPC
・いつでもどこでも(特に空港ターミナルと旅客機と
 新幹線)ネットワークにつながるノートPC
・何年経っても最新のブラウザとメールソフトが
 ちゃんと動くノートPC
・どんなプロジェクタに接続してもまともなプレゼン
 がちゃんとできるノートPC

いずれも、どこか一社が頑張れば実現する、というシロモノではないけれど、「ノートPC」という形態は早く卒業して、次の時代のパソコンのパラダイムを見せてくれることを、顧客の一人は望んでいますよ。

2004.12.17

ライブドアは宇宙を目指す

プロ野球、競馬参入、と、このところなにかと話題作りの多いライブドアの堀江社長が今度は宇宙を目指すという。

河北新報社:有人ロケットは民間で ライブドア宇宙へも進出?
共同通信:有人ロケットは民間で ライブドア宇宙へも進出?
時事通信:今度は有人宇宙飛行計画=5年以内に独自ロケットで−ライブドアの堀江氏
川島レイのレイランド:ライブドアが宇宙へ
じゅりのぶらぶら日記:有人やっちゃう?
StarChartLog:ほりえもん、火星有人飛行への夢をぶち上げる
話題のナレッジベース:堀えもん:今度の“新規参入”で、ライブドアが宇宙(そら)への扉を開く

以下、堀江語録。

「3年以内、遅くとも5年以内に有人ロケットを地球周回軌道に飛ばしたい」
「ブッシュ(米大統領)より先に火星に有人飛行する」
「日本の宇宙開発には夢がない。われわれベンチャーが成果を挙げて、市場を開拓したい」
「すごく賢い人は見えてしまうからやらない。僕はそんなに賢くないからやる。でもやらなければ成果は出ない。失敗したって、またやり直せばいいんです」
「熱意だけではだめ、金がいる。金と熱意があれば宇宙開発はできる。僕は何千億円も投資はできないが、数十億とか数百億の単位だったら、自分で決めて投資できる」
「国のお金を使うと、利害関係者が多すぎて、身動きできなくなる。民間ならそんなことはない」
「現在は国威発揚のために国家予算を利用することはできない。また、例えば日本であれば米国や中国、ロシアに遠慮して有人飛行をしていないのではなどと思えてしまう」
「有人宇宙飛行自体は日本の技術力があれば、10年以上前に実現できたはず。『月に行けることはわかっている』と結論だけ言うのではなくてやってみること。インターネットも10年前には将来が予想できたが実装して広めることがすごい。iモードだって、初めて見たときは『フツーじゃん』と思ったが携帯端末に搭載されると、思ってもみなかった利用方法が現われた」
「資金調達とプロジェクトマネージメントで宇宙開発に主体的に参加できるようになってきた。地球上で環境問題を議論するのも大事だが、宇宙には見果てぬフロンティアが広がっている。がむしゃらに頑張れば想像以上に頑張れるのが人間。宇宙開発は停滞している世界を再び活性化させる手段になるのではないか」
「地球周回軌道上の宇宙飛行だけでなく、月面着陸や火星旅行なども民間企業で行ないたい」

喋ってることはなかなか面白い。彼なりに勉強もしているようだ。ただ、軌道周回のための有人ロケットはIT技術とは違って、数人のコアメンバーがキーパーソンとなれば達成できるという話ではない。まずはSpaceShipOneのように、高度100kmを目指すのが無難だと思うけどな。宇宙飛行士の訓練だって必要だ。宇宙酔いをどうするつもりなんだろう。数百億円なら数百億円を投資しっぱなしという状態を、株主ならなんというのか。うーむ。どこまで本気なんだろうか。

*****

一方、こちらはJAXAが宇宙ステーションでCMを作ることに協力する、という話。

毎日新聞:JAXA:宇宙にCM撮影機材、企業に貸し出し 産学官共同研究6事業の一つに

「ハイビジョンカメラを来年中に打ち上げ、テレビ局や広告会社の要請に応じて有料で貸し出す。カメラマン兼俳優を演じる宇宙飛行士に商品を持たせ、地上から指示を送って撮影することも可能。」だって。有料といっても、カメラの輸送料とか宇宙飛行士の勤務時間って、結局は税金じゃないのか。最近のJAXAのやることってよくわからん。

よくみたら、こっちにプレスリリースが。

JAXA: 宇宙パートナー制度の事業提案の選定結果について

宇宙CMは、この宇宙パートナー制度の一つ、というのがよくわかる。他のプロジェクトには世界最高性能プラネタリウム「メガスター」を一人で開発した大平貴之さんとか、「上がれ!空き缶衛星」を執筆したUNISEC事務局長の川島レイさんまで含まれているではないか!

JAXAに妙に親近感を感じるとともに、「ぉぃぉぃほんとにこの方向性でよいの?」と思ってしまう自分がちょっと哀しかったり...

2004.12.14

JAXAで会合

jaxa総合開発推進棟の夜景。

これまで「JAXAとは無関係の人間」と言ってきたのが、これからは使えなくなるのかも...

2004.12.13

海に沈んだマーキュリー宇宙船の展示

ヒューストンのジョンソン宇宙センターに隣接して設置されている展示施設、スペースセンターヒューストンに、かつて海に沈んだマーキュリー宇宙船、「Liberty Bell 7」が展示されているという。

NASA/JSC Space Center Houston exhibit introduces visitors to 'The Lost Spacecraft'

映画「ライトスタッフ」を観た人ならご記憶と思うけれど、アラン・シェパードに次いで2番目の弾道飛行を行った宇宙飛行士、ガス・グリソムが乗った宇宙船「Liberty Bell 7」が、無事、15分間の弾道飛行を終えて大西洋に着水し、回収作業を待っていた時、ハッチの爆裂ボルトが突然作動し、グリソムは命からがらカプセルを捨てて脱出した。その後、カプセルは4,800メートルの海の底に沈んだ。

それから38年、カプセルはアポロ11号の月着陸から30周年の記念日である1999年7月20日に海の底から引き上げられ、翌日の21日、奇しくもグリソムの弾道飛行から38周年の記念日に打ち上げ地点であるケープカナベラルに帰還した、という。うーん、引き上げられていたのか。いつの間に。知らなかった。

グリソムはマーキュリー計画の後、1967年1月27日にアポロ1号の打ち上げ訓練中に発生した火災によって、エド・ホワイト、ロジャー・チャフィーとともに命を落としている。

2004.12.12

NASAのオキーフ長官が辞任へ

FloridaToday紙のスクープ記事みたいだ。NASAのオキーフ長官が今週辞任するという。

FloridaToday: O'Keefe to quit this week

FloridaTodayによると、長官は金曜の夜、ルイジアナ州立大学からの大学総長就任の提案を受入れた、という。

ホワイトハウスは早速、NASAの次の長官を誰にするか、検討を開始した。現在、5人の候補がいる。

Ronald Kadish 米空軍中将
Robert Walker 元下院議員
Ron Sega 元シャトル宇宙飛行士
Charles Bolden 元シャトル宇宙飛行士
Robert Crippen 元シャトル宇宙飛行士

このうちRonald Kadish氏が次期長官の最有力候補とされる。この9月まで、アメリカ国防総省のミサイル防衛システム機関の責任者だった。

Robert Crippen氏は、先に引退したJohn Young宇宙飛行士とともに、スペースシャトルコロンビアの初フライトを成功させた、伝説の宇宙飛行士の一人。

それにしても、シャトル飛行再開の準備が佳境に入っているこの時期に辞任とは意外だ。NASAのじつに困難な時代を乗りきった長官として、そのリーダーシップは歴史に名を残すだろう。ご苦労様でした。

書評「科学技術はなぜ失敗するのか」

Do you think for the future?の記事を読んでから気になって、amazon.co.jpのショッピングカートに「科学技術はなぜ失敗するのか」を乗っけておいた。著者の中野不二男氏は元NASDAでH-IIロケットを担当した五代富文氏と共に「日中宇宙戦争」を執筆した人でもある。

安野光雅氏の「石頭コンピューター」の31年ぶりの改訂版が出版されたのを記念に、「科学技術はなぜ失敗するのか」も一緒に買い求めた。つーか、amazonの送料を節約したかった、ともいう。

「科学技術はなぜ失敗するのか」は2002年1月から2004年11月まで中央公論に「ニュースの方程式」として連載されたコラムを新書判として纏め直したもの。「まえがき」にはこんな言葉がある。

 だが、そうした成果が一般の人々にまで届くことは、ほとんどない。毎年10月中旬に行われるノーベル賞選考委員会の結果も、日本人が受賞しなければ、驚くほど小さなニュースにしかならないのが現実である。
 それどころか、社会における日々の出来事においても、およそ科学・技術に関連するものは、メディアはほとんど伝えない。伝えないばかりか、失敗や事故といった“負”の側面だけに集中している。しかもその“負”の内側に潜む問題にまでは、手を伸ばそうとはしていない。少なくとも私にはそう思えてならないのである。
 ......略......
 気象衛星だけではない。通信衛星であれなんであれ、国民生活に直接関わるような衛星は、予備機を用意しなければならないのである。しかしそうした根本の問題については、メディアはほとんど触れようとしない。報じるのは、失敗という目の前の結果だけである。日々起きている事件や事故には、かならず一歩踏み込んだ背景があると私は思う。科学・技術がからんでいる場合には、そこにこそ本質があるといってもよい。
前著の「日中宇宙戦争」が少しぼやけた出来栄えだったので、あまり期待していなかったのだけど、いい意味で裏切られた。読み始めてから数時間で、一気に読み終えてしまった。近年にない、なかなか爽やかな読後感。ノンフィクションとは、こうでなくっちゃ。各新聞社の科学部記者にこそ読んでもらいたい本だと思う。

連載コラムを本にした、というわりには、掲載の順番が元の記事の時系列とは無関係に纏め直されている。どちらかというと、前半の記事が面白くて、後半にいくに従って、テーマの掘り下げに若干の物足りなさを感じたり、取材不足を感じることもある。宇宙関連や原子力、燃料電池、ロボットなどのテーマが著者の得意分野なのか、いい切れ味を見せているのに対し、SARSやアメリカ軍「誤爆」、零戦のテーマは正直、食い足りない。しかしこういうすぐれた著者を一本釣りする編集者がいるとは。中央公論も読んでおいたほうがいいのかな...

ひとつ難点を挙げるとすれば、この本のタイトルはえらくミスリーディングだ。おそらく本のタイトルを決めたのは売れ行きを気にする出版社の側であって、著者には責はないのかもしれない。著者自身はまえがきなどでも「科学・技術」と二つの言葉の間に「・」を加えて、両者をきちんと区別している。英語なら「Science "&" Technology」だ。

「失敗」のリスクを織り込まなければならないのは個別の「科学プロジェクト」や「技術」であって、「科学」そのものではない。いや、科学はむしろ人間の誤謬と無知を前提として織り込んであって、いかにしてそれらを乗り越えていくのか、が、進歩のためのパラダイムであるとも言えるだろう。このタイトルは語弊が多い。

宇宙開発委員会と総合科学技術会議などの関係も詳細に書かれていて、日本の宇宙開発の今後を占う上でも必読の一冊、と言える。

2004.12.11

宇宙開発委員会

文部科学省の宇宙開発委員会の議事録情報が突然増えた。更新日を見ると昨日(金)の午後5時。

webに不慣れだった担当者が溜まってた仕事を突然片付けたんだろうか? それとも委員か誰かが指摘したんだろうか...? それとも...?

ま、なんにせよ、いいことです。

JAXAがブログ!?

覚え書き@kazuhi.to経由で知ったのだけど、なんと

JAXA採用担当者ブログ

なるものがスタートしてます。驚愕。時代、なんですかねー。管理人的今年の十大ニュースの一つ、かな。2004年は日本社会へのブログ定着の年、として、記憶にとどめられそうですね。

2004.12.09

H-IIA 7号機にMTSAT-1Rを搭載

8日に開催された第42回宇宙開発委員会において、H-IIAロケット7号機を来年2月に打ち上げることと、それに運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1R:気象衛星ひまわりの後継、プラス、太平洋上の航空管制支援機能)を搭載することが決まった。

JAXA: H-IIAロケットの打上げ再開について

固体ロケットブースターの分離失敗で打ち上げに失敗した2003年11月29日のH-IIAロケット6号機からほぼ1年3ヶ月ぶりの復帰となる。

この再開第1号となる7号機に運輸多目的衛星を搭載するかどうかは、JAXAとしても悩ましい決断だっただろう。

これは管理人の単なる妄想かもしれないけれど、11月15日にJAXAの理事長が交代したのは、妙にこの決断の時期とうまく符合する。山之内前理事長の体制のままではきっとゴニョゴニョゴニョ... いや、管理人の妄想です、はい。

この日の委員会では今月1日に日本科学未来舘で開催された第2回総合技術研究本部公開研究発表会の開催結果についての報告もあったようだ。

JAXA: 第2回総合技術研究本部公開研究発表会の開催結果について

特別講演として招待されたノンフィクション作家の中野不二男氏による「航空宇宙と日本社会」の概要が紹介されている。

以下の3点が提案として述べられたという。

  1. 国民が日本の航空宇宙開発に何を期待するかをくみ取るため、日本の航空宇宙"技術"に対する国民の意識調査(支持を確認)を行う。
  2. 日本の航空宇宙開発を国民に対して積極的にアピールする。
  3. 我が国に適する宇宙開発のあり方を考えるための、"民"による、独立したシンクタンクを設置する。

なかなか面白げな講演だったようですね。聴きたかったな。JAXAデジタルアーカイブスに載せてくれたりしないのかな。

警察国家への道

ちょっと長いコラム記事ですが、まずはこちらをじっくり読んでみてください。

忍び寄る警察国家の影

これはまぁもうなんというか、日本の社会、ここまで来ちゃったか、という感じですね。

その後で、こちらの記事の一番最後のコメントにご注目。

「あいつ怪しい」元警察トップに職質

なんか、ぜんぜん懲りてない、という風情ですね。日本はこれからどうなっちゃうんだろう。

2004.12.08

John Young宇宙飛行士が引退

数日前の記事だけどyosuke の日記経由:

SPACE.com: Space Legend John Young Retiring
asahi.com: 月まで2回往復の米ヤング飛行士が引退へ

勤続42年。ジェミニ、アポロ司令船、アポロ月着陸船、スペースシャトル、と、4種類もの宇宙船を操縦したのは、後にも先にも彼一人、だろう。コロンビア号の初フライトは、今思い出してもかっこよかったなぁ。長い間、ご苦労様。

2004.12.07

Knowledge Superhighway

辺境から戯れ言経由:
CNET Japan: インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞

コラムニスト梅田望夫氏が将棋の羽生善治さんの発言として、最近の若い世代の将棋人口がインターネット上の対局などを通じてあっという間に「アマチュアで考えうる最高峰」のレベルにまで到達できてしまう、という現象を紹介している。

羽生さんの世代では考えられなかったようなスピード感と、そこから一歩進んでプロの棋士を目指す、ということがいかに大変であるかを比喩する言葉として

「将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということだと思います。でも、その高速道路を走り切ったところで大渋滞が起きています」
という表現をされた、とのこと。

Spiegelさんのいうように、このコラム記事の指摘は職業エンジニアにもあてはまるし、管理人的に見れば、その他の知的な生産活動を行う職業全般にもあてはまる、と思う。

先人が苦労して築き上げた業績をたどることは簡単だけれども、そこから一歩踏み越えて先に進むためには気の遠くなるような努力が必要。それ自体は別に珍しいことではないのだけれど、インターネット、という社会基盤の整備によって、「高速道路と大渋滞」の現象が質的にも量的にも急激に広がっていることは確か。

新しくやってきた人が、壁にぶつかる、ということも、大変なことだけれど、古くからやってきた人が、古くからやっているというだけの理由で一種の既得権を主張しようとしても、渋滞の中でもみくちゃにされて、あっけなく踏みつけられていく。いやはや、大変な時代になりましたね。

K.Moriayma's diary経由:
HotWired: 若年層のネット移行で、紙媒体の新聞・雑誌が絶滅する?

紙媒体の新聞・雑誌はこの先、若い世代に受け入れられるか?という話題。今さら、という感はあるけれど、HotWiredが掲載すれば、なぜかそれなりに説得力を感じる。確かに古新聞を古紙回収にまわす労力ってバカにならないし、うんざりするよなぁ〜。と、思ったら、まんぷく::日記にこんな記述が。

回収新聞
たまった新聞は捨てるのが面倒だ。ポストに前日の新聞を置いておくと配達時に回収してくれる、なんてサービスがあったらいいかもしれない。
すばらしい! 紙媒体の新聞が生き残るには、こういう総合的なサービスの提供を模索するというのもいいかも。

1997年5月、INTERNET Watchに朝日新聞科学部記者の団藤保晴氏が「インターネットで読み解く!」という連載コラムを開始した。Googleなどの検索サービスを縦横無尽に駆使してあるテーマに関連するページを探し出し、様々な時事問題を斬りまくる、という、ネットならではの斬新な手法に当時は感動したものだ。

しかし、連載を読み進むにつれて氏が記事を書く際のステロタイプな問題分析のスタイルが鼻につくようになって、コラムを読まなくなり、気がついたら連載は終わっていた。

去年、たまたま何かのGoogle検索をかけた時に、氏のwebサイトを発見した。自前の無料メールマガジンを発行して、連載コラムを続けている。7年前のスタイルを保ち続けていて、それなりに元気なようだ。

その団藤氏が最近「ブログ時評」なるブログサイトを開設したことを「ネットは新聞を殺すのかblog」経由で知った。

案の定、といったら失礼になるかもしれないけれど、ブログ上の議論が高じてたくさんの匿名コメントが集中し、団藤氏が彼一流の独自の基準でコメントの大量削除を始めたことから騒ぎが大きくなってしまった。

ブログサイトに寄せられたコメントをどのように処遇するかはそのブログサイトの所有者に裁量権がある。けれど、所有者がコメントをどのように処遇するかを観察することによってその人物の人格が透けて見えてしまうのもまた事実。氏が自分のブログを開設するにあたっては、双方向のコミュニケーションスキルをもっと磨いてからでも良かったのではないか。

先の「インターネットの普及と高速道路の渋滞」でいえば、氏が16年ほど前にパソコン通信のサービスを立ち上げた経験は、ブログの開設に必ずしも長所として作用するわけではない。彼が「高速道路の終端での渋滞」のどの部分で立ち止まってしまっているかは、読者が判断すること、なのかもしれない。

StarChartLogでStellaさんが指摘しているように、ガ島通信のこの記事が今回の件でも問題の所在を理解するための助けになるように思う。

2004.12.05

スペースシャトル耐熱タイルの修理方法

HoustonChronicleに、

NASA not sure that fixes can be made during flight, but the agency sees no delay for liftoff

という記事が出ている。直訳すると「軌道上の修理の成否に疑問符、NASAは打ち上げ日程に変更なしと」

スペースシャトルの耐熱タイルなどが打ち上げ時に損傷を受けた場合、軌道上で宇宙飛行士が宇宙遊泳で修理をして安全に帰還する方策を確立すること、というのが、昨年8月にコロンビア号事故調査委員会の勧告のひとつ。これを受けてNASAが開発してきた耐熱タイルの修理方法が実用に耐えるかどうかを評価する進捗状況報告書が16日に開催されるReturn To Flight Task Groupで議論される。

耐熱タイルを修理するための補修剤は2液混合型で、修理の直前に混ぜ合わせてペースト状にする。真空中でこの操作を行うと、窒素ガスが発生して、ペーストの中にスポンジ状の気泡が発生する。この気泡が大きすぎると、再突入の際の熱に耐えられない、という。

一方、コロンビア号の事故の直接の原因となった、主翼前面を守るカーボンファイバの耐熱パネルにひびが入った場合、炭素とシリコンでできた合成フィルムを貼り付けることになっている。コロンビア号の場合、外部燃料タンクから脱落した断熱材の衝突でできた15cmから25cmの長さのひびが致命傷となったと考えられているが、現在の補修方法でカバーできる長さは10cmまで。

これらの修理方法を採用するかどうか、NASAは来年1月中に結論を出すという。

一方、FloridaTodayにはこんな記事が。

Danger to limit KSC spectators

訳すと、「ケネディ宇宙センターの打ち上げ見学が危険防止のため制限される?」

打ち上げ中に爆発事故があった場合、政府賓客や招待客などの特別見学席や、NASAの作業員などに危険が及ぶ可能性が考えられるという。

来年5月から6月に予定されている野口宇宙飛行士の打ち上げを見に行けるかどうか、管理人的にはスケジュール調整が微妙だけど、かりに見学が制限されることにでもなったら、切実な問題だ。今のところ、NASAの敷地外のココアビーチなどからの見学には影響が及ばないようだけど。

FloridaTodayの記事にはこの見学制限を受け入れるべきかどうかのアンケートが掲載されている。

*****

ところでNASAのReturn To Flightサイトに、野口宇宙飛行士ほか、STS-114のクルー全員の訓練風景の写真集が掲載されている。

心なしか、野口宇宙飛行士が非常に目立つ形でフィーチャーされている。映画の一シーンみたいで、とてもかっこいい。

かうんとだうん

本家サイトの入り口に、野口宇宙飛行士の打ち上げ予定日(正確にはlaunch window)までの残り日数のカウントダウンを追加しました。JavaScriptを有効にしてある場合のみ表示されます。本日の表記は「あと158日」。

こうやってカウントダウンを始めると、「いよいよ!」という気分が盛り上がってきますね〜♪

2004.12.04

宇宙ステーションのパソコンはどうなる?

自宅のWinXPパソコンにやっとSP2をあてた。

ところで、昨日、IBM、パソコン事業売却を検討=中国企業などと交渉-東芝にも打診というニュースが流れた。New York Timesのスクープ記事みたいだ。他のニュースソースが沈黙しているようなので、少し様子を見ていたのだけど、

じゅりのぶらぶら日記:どうなる宇宙パソコン?!

を読んで、このニュースが思っていた以上に重大なインパクトを持っていることに気がついた。

そうなのだ。国際宇宙ステーションをコントロールするパソコンは、IBM ThinkPadが重要な要素を占めている。IBMがパソコン事業から撤退したら、宇宙ステーションやスペースシャトルで使っているパソコンが壊れたら、そのメンテナンスは誰がするのだ? 今後はNASAもDellとかHPあたりとお付き合いを始めるのか?? う~ん、ThinkPadって、Macユーザーの管理人から見てもいいマシンなのになぁ~。98年の最終選抜でも、閉鎖環境の中でThinkPadを使った検査項目があった。管理人はこのとき初めてThinkPadに触って惚れ込んで、その後、自分で使うパソコンとしてもThinkPadを買った、というのはないしょだ。

ところで、NASAが国際宇宙ステーションで使うThinkPadに載せるOSは、今となってはかなり懐かしいSolaris 2.3のIntel 386版、だと、昔誰かに聞いたことがある。しかもソースコードをNASA向けに徹底的にデバッグしてある。だから、ThinkPadといえども、いまどきのウィルスの影響を受けるわけではない。ご安心あれ。

つーことは、IBMのパソコンがなくなったら、誰かがHPとかDell向けにまたSolaris 2.3を徹底的にデバッグしなきゃならんわけだ。大変ですね~>NASA。

ところでThinkPadのキーボードにある例の「赤いぐりぐり」、は、TrackPointというようです>じゅりさん

気になる記事のメモ 12/4 [IT関連]

備忘録の整理
ACCSのWebを停止に追い込んだ700Mbpsを超えるDDoS攻撃の実態
デジタルデータの確からしさ
住基ネット侵入実験の講演を断念したSecurityLabのCTO、総務省を訴える
ACCS裁判、弁護側は「特定電子計算機」の定義を問い直す
住基ネット侵入実験の発表中止問題、専門家が総務省を提訴
長野県住基ネット侵入実験のNuwere氏「管理責任の所在をはっきりと」
住基ネット:講演中止 後援の総務省が注文付け
住基ネット侵入実験者の発表が中止に 総務省が難色
公取委、Windowsにおける特許の非係争条項でMicrosoftの審判開始
米国特許が愛想を尽かされる理由
ユーザーは「IE以外」に、開発者はまだ「IEオンリー」
オープンソースは「西部開拓時代」——SCOのマクブライドCEO
IndyMediaのサーバー押収
「2画面特許」の訴訟、ドコモが勝利していた
S・バルマー:「iPodのなかには違法コピーがいっぱい」
広島大とMS社 共同研究で提携へ
次期版Windowsのコンポーネントに新世代ウイルスの懸念
学生を不安にさせたビル・ゲイツ氏のコメント
『Googleニュース』中国版、中国政府の検閲に追従
『Google』で検索できない『ニューヨーク・タイムズ・コム』の問題点
米計算機学会、ペーパーレス電子投票に否定的見解
個人情報流出事件から教訓は得られるか
職場での電子メール、やってはいけない7カ条
Kerberosに重大な欠陥——ネットワーク認証に影響も

2004.12.03

ビールは放射線から体を守る?

日本アイソトープ協会が発行している「ISOTOPE NEWS」の11月号に「ビールは放射線から体を守る?」という記事が載っている。執筆は東京理科大薬学部の物部真奈美氏と放射線医学総合研究所の安藤興一氏。記事によると

...お酒を飲むことにより原爆被ばく後の病体がよくなったという事例がいくつか書いてある。他にも、昔から放射線技師など放射線作業従事者の間でお酒は放射線被ばくに効くのではないかという噂はあり、また、チェルノブイリ事故の起きたウクライナでもそのような噂があったと聞いたことがある。
むむむ、と思って記事を読み進むと、筆者達はマウスにビールなどを1ccずつ飲ませて30分後に放射線を照射し、30日後の生存率を調べている。

実験データのグラフを読み取る限り、ビールを飲ませた群は、他の対照群よりもあきらかに生存率が高くなっている! X線照射の場合、30日後に生存率が50%となる被ばく量は、ビールを飲んだ群が約7.8グレイ。生理食塩水を飲んだ群とノンアルコールビールを飲んだ群が約7.2グレイ。5.5%のエタノールを飲んだ群が約7.6グレイ。生存率のカーブは急なので、このわずかな違いが被ばくによる生死を分ける鍵となる。炭素線を照射した群ではさらに顕著な差が見られる。

記事ではビールに含まれるシュードウリジンという物質が放射線で誘発される染色体異常を減少させることが確認されたことも書かれている。また、ビールに少量含まれているメラトニンにも放射線防護活性があることも知られている、とのこと。他にもポリフェノールをはじめ、いろいろな抗酸化物質が含まれていると言う。これらの抗酸化物質とエタノールが共存することで体内への吸収が促進されるという仮説が提唱されている。

そういえばうちの祖父(故人)は、まだ医療用のレントゲンの放射線規制が緩やかだった頃、文字通り水でも浴びるように毎日仕事で放射線を浴びていた。けれど、お酒もまた大酒呑みで、浴びるように飲んでたな。家族が心配して一升瓶を隠すと、薬用エタノールを飲んでいた。身体がお酒を必要としていることを本能で感じとっていたのだろうか。

なんという実験結果だろう。いままで祖父のことをただの大酒呑みとしか思ってなかったけど、ちょっと尊敬。

この研究が進めば、宇宙放射線対策のために宇宙ステーションにもお酒を持ち込むことが正式に認められるようになったりしてもしかして。ロシアの宇宙飛行士はミールの時代にすでにウォッカを持ち込んでいた、という噂があるけどね...

2004.12.02

文系の壁?

「理系白書ブログ」で元村有希子さんが「文系は不要?」「文系不要論」というエントリを立て続けに書いている。

管理人は「文系」「理系」という言葉がそもそも好きではない。日本の社会の中で「文系」「理系」という言葉が会話にのぼる時、あるいは新聞紙面を賑わせる時、ほとんどの場合は「言い訳」「あきらめ」「紋切り型思考」のいずれか、の、ネガティブなニュアンスや文脈の中でしか使われていないような気がする。

あと、これは管理人の思い過ごしかもしれないが、「文系」「理系」の違いにこだわることが多いのはどちらかというと自称文系人間、のような気がする。「自分は文系だから...」というセリフと、「自分は理系だから...」というセリフのどちらを耳にすることが多いだろう?

そもそも「文系」「理系」の区別、あるいは定義、って、なんなのだろうか。...と、定義からして気になってしかたがないあたりが、管理人が「理系人間」であることの証、なんだろうか? :p

「数式が苦になるか、ならないか?」「論理を大事にするか、情緒や協調性を大事にするか?」 こういう観点で人を見ると、たしかに人間は「ある集団」と「もう一つ別の集団」に分けられる...ような気がしてくる。

でも、数学が嫌いな理系だっているし、文系にだって論理が求められる分野がある。ひとくちに「理系」といっても、分野が異なれば、求められるスキルは文系と理系の壁以上に分厚い壁がある、ように思える。例えばお医者さんに求められるスキルとIT技術者に求められるスキルと旅客機のパイロットに求められるスキル。

今の日本の教育システムでは、文系と理系の区別はどうやら高校生の時に大学受験を意識したあたりから始まるようだ。端的には「数学」を受験科目として選択するか、否か。これに「物理」がセット定食のメニューとして加わることが多い。

つまり日本でいう「文系」とは、ある得意な分野を積極的に選択した結果、ではなくて、「数学」と「物理」を消極的に忌避した結果、というケースがかなり多いのではないか? とすれば、「文系と理系」の区別がネガティブな文脈で語られる機会が多い(気がする)ことにも納得がいく。

ところでコンピュータについて文系と理系のそれぞれ大学1年生に同じ内容の講義を行った経験から言えば、文系のクラスの方が学習態度もまじめで、レポートや試験の成績もよかった。

これは管理人の講義のあり方が適切でなかったせいかもしれないし、どちらかというと文系向けのテーマに偏った講義だからかもしれないし、たまたまそれぞれのクラスの個性がでただけなのかもしれないし、あるいは文系のクラスのほうが試験問題の傾向をあらかじめ先輩から入手するなど要領が良い?せいかもしれない。ので、一般化するのは危険だけれども、「コンピュータだから」といって、いわゆる文系人間の方が不得手であると決めつけるのは早計と思う。うまく好奇心を育んであげることができれば、人間はいろんなことに興味を持つ。興味を持てば、その道に長じる。と、信じたい。

と、ここまで長文をたらたらと書いてきたのを読み返してみて、我ながらやっぱ「唯我独尊(理系人間の特徴の一つとされる)」なのかな、と、思う。HotWiredにTech総研のこんな記事が載っていた。

エンジニアに言われて「ムカついた」ひと言

この文章の「エンジニア」って言葉を「理系人間」で置き換えてみると、どき、管理人にも心当たりが... う〜くわばらくわばら。反省しなきゃ。「文系と理系の壁」って、その正体はこういう人間関係、なのかも。

2004.12.01

飲み込めるカプセル内視鏡

ITmediaニュース:飲み込めるカプセル内視鏡、オリンパスが開発

昨夜のNHKニュースでもやっていたけど、「飲み込めるカプセル内視鏡」のニュース。

オリンパスメディカルシステムズは11月30日、錠剤のように飲み込めるカプセル型内視鏡を開発したと発表した。チューブを挿入する従来型と異なり、患者の負担を抑えながら消化器内を観察できる。早期の実用化を目指すほか、無線による給電システムや患部への薬液放出機構なども開発を進め、従来型と同等にまで高性能化を図っていく。
しばらく前にアメリカでも同様な内視鏡カプセルが開発されていたけど、オリンパスのものは、飲み込んだ人間の体の外から強い磁場をかけることによって、カプセルの姿勢や体内の場所をある程度コントロールすることができる。薬を内蔵しておいて、患部にピンポイントで塗布することもできる。これはすごい。

なぜこの記事のカテゴリを「宇宙開発」にしたかというと、この技術が実用化されれば、宇宙飛行士選抜のあり方は、間違いなくこれを使って様変わりするだろう、から。

選抜体験記」にも書いたように、宇宙飛行士選抜の中で内視鏡による胃と大腸の検査は、一週間にわたる医学検査の中でも最大のヤマ場となる。その検査が楽になって、危険度も下がる、となれば、受験者にとってはうれしいこと、だけど、「同じ管を共有した仲間」としてのなんともいえない独特の連帯感は、将来の宇宙飛行士選抜では味わえなくなるのだろう。

年寄りのなんとやら、かもしれないけれど、ちょっと寂しい。

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