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2003.12.23

夢を紡ぐ人びと

Lunar Embassyという会社がある。いくばくかのお金を払うと、月や火星の土地1エーカー分(約1200坪)の権利証を送ってきてくれる。日本の代理店はこちら

「じつは私、月の土地、持ってます」なんていう著名人もちらほら見かけるようになった。などという私も、この前の誕生日に妻から月と火星の土地をプレゼントされた。「月と火星にサッカー場ぐらいの広さの自分の土地がある」なんて、ちょっと夢のある話。

法律的にはどうなんだろうか。ルナエンバシー社の解説を見ると、

月の土地を販売しているのは、アメリカ人のデニス・ホープ氏。
(現アメリカルナエンバシー社CEO)
同氏は、「月は誰のものか?」という疑問を持ち、法律を徹底的に調べました。すると、世界に宇宙に関する法律は1967年に発効した、いわゆる宇宙条約 しかないことがわかりました。この宇宙条約では、国家が所有することを禁止しているが、個人が所有してはならないというは言及されていなかったのです。
とのこと。

では、個人が月や火星の土地を売買してもいいものだろうか。これにはやはり賛否両論あって、「夢のある話だからいいじゃないか」という人とか、「人の夢をネタに金儲けするなんて」という人とか、宇宙条約が個人の活動を規定していなかったことに気付いて国連が慌てて作った月協定の精神を遵守せよ、という人とか、「月協定はいまだ10ヶ国でしか批准されていない」という人とか、じつにさまざま。ハインラインのSF短編小説「月を売った男」とその続編「鎮魂歌」を彷佛とさせる話。個人的には「鎮魂歌」の雰囲気は大好きだ。

国立天文台の渡部潤一助教授も雑誌ニュートン12月号の記事でこの問題を取り上げている。JAXAのwebにも月についてのFAQ: 月を探査するときに、守らなければいけない国際条約という解説のページがある。

私個人はどう思っているかというと、公の場では立場上、渡部助教授と同じ見解をとらざるを得ない。でも、一介の天文ファンとして、子供の頃、四国の片田舎で人工の光がほとんどない真っ暗な夜空を見上げていた頃の原体験を思い起こすにつけ、「こうやって人にささやかな夢を与え続ける商売があってもいいんじゃないか」と思う。

でも、夢を売って集めたお金を、どんなふうに使っているんだろう? そもそもこの企画を日本で進めているのはどんな人たちなんだろう?

*****

昨日、受験仲間とのリユニオンで久しぶりに東京まで出ていく機会があったので、ふと思い立って、ルナエンバシージャパンを訪れてみることにした。

negishi.jpg東京の下町のビルの片隅に、その会社はあった。周囲には、いろいろな生活雑貨などの中小の卸問屋やクリーニング屋さん、床屋さんなどが並ぶ。東京と言っても、ここにはふつうの人々のふつうの暮らしがある。lunarembassy.jpgちいちゃな赤ちょうちんには、そのあたりの店のおやじさん達が集まって、夜な夜なご近所のうわさ話を肴に、酒を酌み交わしているのだろう。

ふと、夜空を見上げると、星空が、あまりにも遠い。ヒューストンの宇宙ステーションモックアップや、アムステルダムの宇宙ステーションシミュレーターで感じたつかみどころのない浮遊感と比べると、ここには人間の暮らしがある。選抜受験以来、宇宙飛行士を応援する暮らしを続けてきて、いつのまにか宇宙に行くことが当たり前のように思っていたけれど、宇宙って、こんなにも遠いところだったんだ。


ginza.jpg地下鉄に乗って、リユニオンの会場へ向かう途中、銀座でおりてみた。下町の暮らしとはあまりにかけ離れた喧噪がそこにある。銀座を行き交う人々の夢ってなんだろう?

都会には都会なりに夢を紡ぐ人びとがいる。皆、足早に自分の夢を追いかけ、信号待ちのわずかな合間に街頭テレビを見上げる。ここでもまた、宇宙はあまりにも遠い。

ルナエンバシー社から送られてくるメルマガに、あのX-Prizeに関連した企画の話が載っていた。なるほどね。みんなの夢を紡いで集めたお金は、こんなところにも使われているのか。カリフォルニアのどこまでも青い空の下、私の夢のかけらも羽ばたいてほしい、と、願う。

twilight.jpg考えてみれば、我々、宇宙飛行士選抜受験仲間、というのも、夢追い人なのだ。受験から7年経って、あの頃のことはもう懐かしい思い出でしかないけれど、受験がきっかけとなって、それぞれ第二、第三の人生に踏み出した仲間も数多くいる。安定した大企業を辞めてアメリカに留学し現地で就職しリストラされて、苦労して妻子を養いながら再就職、今はNASAとの共同研究で新型機の開発をしている、という波瀾万丈の人生を送っているつわものもいれば、受験後、一念発起して退職し、司法試験に合格してしまった仲間もいる。人生とは決して一本のレールでは無い。

月と火星の土地は、今後、どうなっていくのだろうか。

ルナエンバシー社には、これからじつにいろいろなことが起きると思うけれど、できることならいつまでも我々に夢を紡ぎつづけてくれる存在であってほしい。

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