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2003.12.30

みどり2号の事故原因調査

JAXAの地球観測衛星「みどり2号」が10月25日に太陽電池パネルの発生電力が突然低下して、機能停止に陥った件。

旧NASDA、旧ISAS、旧NALの宇宙三機関が統合して「新生JAXA」が発足してから4週間、というタイミングでこの事故が発生した。先代のみどりは6年前の1997年6月30日に太陽電池パネルが破断して運用停止に陥っている。

みどり2号の機能停止の原因については、ちょうどそのころ発生した大規模な太陽フレアとの関連も取りざたされたりしたが、その後、宇宙開発委員会の調査部会で事故原因の調査と対策の検討が進んでいる。

JAXAが10月27日に発表したプレスリリースを見ると、事故発生当時、太陽電池パネルからの発生電力が3分間の間に段階的に低下していく、という非常に特徴的な症状を示していて、私も素人ながら11月4日の日記で原因を推測してみたりした。結論からいえば、この時の私のさまざまな推測はどうやら完全に的外れだ。

12月15日に宇宙開発委員会第7回調査部会が開催された。JAXAが提出した調査資料がみどり2号のプレスリリースのページで公開されている。


  • 環境観測技術衛星(ADEOS-II)「みどりII」の運用異常に関する機械的挙動の検討状況について(PDF 196KB

  • 地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)「みどり」軌道上事故を反映した環境観測技術衛星(ADEOS-II)「みどりII」太陽電池パドル(PDL)の設計変更と検証試験について (PDF 233KB)

  • 地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)「みどり」軌道上事故の環境観測技術衛星(ADEOS-II)「みどりII」への反映について(PDF 610KB

  • 添付資料(図表集)(PDF 2.2MB)

また12月24日には第51回宇宙開発委員会が開かれ、この時の資料も掲載された。

  • 「みどりII」の太陽電池パドルに関する開発時の試験・検査について(PDF 2.82MB

  • 「みどりII」運用異常に関する機械的挙動の検討状況について(その2)(PDF 57KB) 

  • 報告 添付資料(図表集)(PDF 598KB

まだ様々な調査が進んでいる段階なので、私のような素人があれこれ口をはさむすじあいはない。が、調査部会は現在、太陽電池パネルの様々な機械的故障を念頭において調査を進めているように見受けられる。

私が驚いたのは15日の資料(PDF)の「図2ー1 事象Aと事象Bの推定姿勢角の差」と「図2ー13 太陽電池パネル温度(ブランケット温度)の1,2回帰(4,8日)前との比較」。地球の影から太陽のあたる場所に出てきて、太陽電池パネルの温度がマイナス80度からプラス30度付近まで急上昇するタイミング(事象A)で一度、衛星が赤道面を通過して温度がほぼ最高のプラス50度近くまで上昇したタイミング(事象B)でもう一度、衛星の姿勢が微妙にぶれている。電力低下事故はこの事象Bのタイミングで起きた。

この時点の報告書にははっきりと原因を特定するような表現はないものの、「図2ー16 部分破断とした場合のあり得る場所」を見ると、太陽電池パネルのブランケットが破れたシナリオと、ブランケットと隣のブランケットをつなぐヒンジの部分が破断したシナリオの二つが有力候補として検討されているように見える。
性懲りもなく私の邪推だが、この調査の状況からすると、太陽電池パネルの一部分が3分間かけて、プチプチプチ、と破断していくことによって、衛星に微妙な回転モーメントが発生したのではないか。だとすると、これは太陽電池パネルの構造的問題だ。パネルの部分的破断のシナリオから回転モーメントが計算できてデータとの照合ができるだろう。今後の調査の進展に注目したいところ。

24日の資料(PDF)でも、製造試験中の様々なトラブルがレビューされているが、28ページに1999年11月の太陽電池パネルの熱真空試験後にヒンジ部分に亀裂が発生した事象が報告されており、同様に1999年12月(30ページ)にはパドル組み立て作業中にブランケットの一枚に亀裂が発生している。この他にも大小様々な地上での障害がまとめられている。

11月4日の日記でも書いたように、みどり2号の太陽電池パネルは25mプールの2コース分ほどもある巨大なものだ。近くで見るとその巨大さに圧倒される。しかし先代のみどりは地球を一周する約90分ごとマイナス80度からプラス50度までの過酷な熱膨張と収縮のサイクルに耐えることができず、打上げから10ヶ月ほどで太陽電池パネルが破壊されている。みどり2号も奇しくも10ヶ月後に太陽電池パネルのトラブルに見舞われた。原因はまだ特定されていないものの、調査部会は構造上のトラブルを追求しているように見受けられる。

特定のメーカーが非難される話もちょっと耳にするけれど、それだけで済む問題なのだろうか。公開された資料の一部を読んでみて感じる個人的な感想は、この巨大な太陽電池パネルは、まだR&D段階だ。実用の一歩手前、というところか。そのような段階の衛星に海外の研究機関の観測装置などを引き受けられる状態だったのだろうか?

ジャーナリスト松浦晋也氏によると、みどりやみどり2号が現在のようなプロジェクトになった背景には、アメリカのスーパー301条が強く関係しているらしい。

太陽電池パネルは本来、人工衛星にとって最も基本的な部品のはず。いわば枯れた技術、であるべき。宇宙開発委員会は、利用者・受益者の観点に立って、プロジェクトの企画段階にまで立ち戻って、プロジェクトの進め方や政治的要因や時代背景にまで踏み込んだ、しっかりとした調査をしてほしい。需要の無いところに技術は育たない。責任者のはっきりしない「おみこし型経営」だけはこれからのJAXAではあってはならないと願う。

一時期、みどり2号関連のwebページの更新が少なくてちょっと心配したけれど、以前より詳しく資料が掲載されるようになってひと安心。

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